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キーン、ピーなど【高音の耳鳴り】は耳鼻科医推奨の「耳ひっぱり」で改善し、聴力もアップ!

解説 カラダネ編集部

耳鳴りは音の聞こえ方によって原因と対策が変わります。聞こえ方から考えられる原因と対策については、この記事の一番下にある関連記事にありますので、ご覧ください。

この記事では、特に「キーン」「ピー」といった高音の耳鳴りで悩む人向けの対策を耳鼻咽喉科の専門医に聞きました。高音だけではなく、ジージーザーザーといった雑音耳鳴りの悩み改善にも役立ちますので、ぜひご覧ください。

耳鳴りに悩んでいる人は、必ず耳鼻咽喉科の専門医の治療を受けてください。そのうえで、セルフケアの一環として試してみてください。

耳鳴りの原因に難聴がある?

一口に耳鳴りといっても、聞こえ方も原因もさまざまです。とはいえ、ある特徴があると最近わかってきました。
埼玉医科大学客員教授の坂田英明先生は次のように話します。

「ある特徴とは、聴力検査をするとほとんどのケースで難聴が見つかること。
耳鳴りに難聴が伴う割合は、本人が聴力低下を自覚できていない『隠れ難聴』も含めると約9割にも上ります。これは、多くの耳鼻咽喉科専門医が指摘しており、原因不明の耳鳴りの発症に難聴が深く関係している場合が多いといわれています。

難聴というと、中高年から起こるものという認識が強いと思いますが、多くの人が自覚はしていないものの、実は聴力の低下自体は20代のころから始まっているのです。
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そもそも私たち人間の耳は、最も高音で2万ヘルツの音を認識できます。しかし、ここまでの高音を聞き取れる聴力は小中学生でピークに達し、それ以降は内耳の蝸牛の内側で音の振動を電気信号に変える有毛細胞が老化するため、高音域の信号から徐々に脳にうまく伝えられなくなるのです。
つまり、難聴が耳鳴りの原因になっている可能性があるのです」

【コラム】みなさん、モスキート音をご存じですか?
モスキート音とは、蚊(モスキート)の羽音に似た1万7000ヘルツ前後の不快な高音のこと。モスキート音は20代前半以下の人にしか聞こえず、それ以降は高音域の聴力の衰えによって聞き取れなくなります。
この特徴を利用して、いくつかの自治体では、若者が深夜の公園にたむろするのを防ぐ目的で、モスキート音を出す装置を設置するという対策が行われたこともあります。
結果は、その公園では若者が怖いもの見たさに逆に集まってしまったともいわれました。

難聴がなぜ耳鳴りを引き起こすのか

では、なぜ耳鳴りの人には難聴が隠れているのでしょうか。坂田先生は話を続けます。
「実は最近の研究で、原因不明とされる耳鳴りの原因として、難聴による脳神経の異常興奮ということが注目されています。
私たちは音を耳で認識しているのではなく、脳で認識しています。耳はあくまで空気の振動を電気信号として脳の聴覚野と呼ばれる部位に伝えているだけなのです。

私たちの脳には、ある音域の電気信号が十分に送られてこないことを感知すると、その音域をよりよく聞こうする働きがあります。そして、脳がそのように働くと脳神経は活性化して、いわば過度に興奮した状態になってその音域の電気信号をより強く増幅しはじめるのです

脳神経の異常興奮が起こると、脳はこうしたかすかな耳鳴りを敏感に察知します。このとき、高音域が聞こえづらい難聴であれば、かすかな耳鳴りのうち高音域の電気信号をより増幅し、高音の異常な耳鳴りとして自覚されます」

キーンやピーなど高音耳鳴りは高音が聞こえないために起こる?

つまり、「キーン」「ピー」といった高音の耳鳴りの人は、高音の音が聞こえないために脳の異常興奮が起こっている可能性があるのです。

高音は年齢を重ねた中高年は聞こえにくくなるという特徴があります。もちろん、低音域が聞こえづらくなれば「ゴー」などの低音の耳鳴りが起こりやすくなるというわけです。
やっかいな耳鳴りを改善に導くためには、同時に難聴への対策も必要であるといえるでしょう。

耳鳴りの自力対策「耳ひっぱり」のやり方

これまでの説明で、低下した聴力を再び回復できれば、脳の誤作動を起こさず耳鳴りも改善させられる可能性があることがわかります。
そこでおすすめしたいのが、国際医療福祉大学病院の耳鼻咽喉科教授、中川雅文先生が考案した「耳ひっぱり」です。中川先生は次のように話します。

「このやり方は私自身が考案し実際に多くの患者さんにすすめて成果を上げている非常にお手軽な聴力アップ法です。ここではわかりやすく『耳ひっぱり』として説明しましょう。
まずは、下の写真でやり方を解説しますので実践してみてください。
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①耳と反対側の手で、耳の上端をつまみ、約30秒間キュッキュッとリズミカルに何度も引き上げる。ほどよい力加減で耳を持ち上げるように引っぱる。
②つまむ位置を耳の横に変え、今度は後方に引っぱることを30秒間くり返す。①〜②が終わったら、もう片方の耳も同じように引っぱる。

行うときのポイント
●①30秒+②30秒として両耳をそれぞれ1分かけて引っぱることを1セットとする。これを朝晩1セットずつ行う。
●つまむ位置や引っぱる方向を少しずつ変えて、聞こえがよくなる引っぱり方を探してください。

いかがでしょうか。誰にでも簡単にできるのではないでしょうか。

耳ひっぱりが耳鳴りや難聴を改善に導く理由①アブミ骨筋をほぐす

中川先生は、耳ひっぱりを考案した経緯を次のように話してくださいました。
「耳ひっぱりは、耳の中耳にある「アブミ骨」の動きをつかさどる筋肉「アブミ骨筋」の硬直をほぐす目的で考案しました(下の図を参照)。 
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アブミ骨筋は、アブミ骨と内耳をつなぐ長さ3ミリ、直径1ミリほどの小さな筋肉で、アブミ骨に伝わる振動を調節し、大きい振動は抑え、逆に小さい振動は増幅させます。
ただし、アブミ骨筋は、ふだんから表情が乏しかったり、ストレス・極度の緊張・運動不足があったりすると、肩や首の筋肉と同様、硬直してしまうことがあります。アブミ骨筋が硬直すると、耳から脳への音の伝達が悪くなったり、よけいな音が聞こえたりして、難聴や耳鳴りの発症を招きます。
耳ひっぱりを行えば、アブミ骨筋のマッサージ作用が得られ、鼓膜の振動も内耳に伝わりやすくなります」

【コラム】耳から脳へと音が伝わるメカニズム
音の認識は、空気の振動が鼓膜に伝わることから始まります。伝わった振動は、鼓膜の内側につながるツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨という三つの耳小骨に順に伝わり、10倍ほどに増幅されます。増幅された振動は内耳のを満たすリンパ液を介して、振動を電気信号に変換する有毛細胞(ダンス細胞)に到達します。そうして、そこから聴神経を通じて脳へと届き、音として認識されるのです。

理由②耳のたるみや血流不足も改善

「耳ひっぱりには、聴力低下の一因となる、耳のたるみを正す作用も備わっています。耳のたるみは、年齢を重ねることで誰にでも現れる老化現象です。
つまり、肌がたるむのと同じように耳もたるんで、位置が下がってきます。
耳の位置が下がると、本来はまっすぐな外耳道(外界と鼓膜をつなぐ耳の穴)がゆがみ、幅も狭くなります。そうすると、外界からの空気の振動が鼓膜に伝わりづらくなり、聞こえの悪さを招くことになります。
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耳ひっぱりを行うと、垂れ下がった耳がもとの位置に持ち上がります。すると、ゆがんだ外耳道がまっすぐに戻って幅も広がり、耳の集音機能がその場で高まって難聴の改善に役立ちます。結果的に、耳鳴りの改善にも役立つというわけです」(中川先生)

さらに、耳ひっぱりには耳周辺の血流を促す作用もあると考えられます。
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「耳は非常に多くの酸素と栄養を要する器官で、常に豊富な血流量が保たれていないと正常な機能を果たせなくなります。聴覚筋ほぐしを行えば、耳周辺や耳の内部の血流を促す作用が得られると考えられます。滞っていた耳周辺の血流がスムーズに流れるようになれば、低下していた聴力が回復し、その点からも耳鳴りの改善の大きな助けとなります」(中川先生)

高音耳鳴りの人は耳を後方に引っぱろう

実際に中川先生は、耳ひっぱりを耳鳴りや難聴といった耳のトラブルに悩む患者さんにすすめています。耳ひっぱりは、起床時や入浴後、就寝前などを選んで行うのがおすすめとのこと。

「耳ひっぱりを行えば、その場で聞こえがよくなるのが実感できるはずです。実際、その前後で聴力を測定すると、3~6デシベル程度上がります。ここで示す例では、耳を上方に引っぱることで高い音への聞こえが六デシベルアップしました。6デシベルの聴力アップは、聞こえが約2倍アップしたことを示しています。

また、耳を後方に引っぱると、4キロヘルツ以上の高音域の音の聞こえがよくなることも確認できています。
つまり、キーンやピーといった高音耳鳴りで悩む方にぜひおすすめです。
実際に、高音耳鳴りで悩んでいた患者さんが耳ひっぱりを行うことで聞こえがよくなり、改善に向かった例もあります。

ちなみに、耳ひっぱりを行えば、耳介の柔軟性が増して雑音を拾いにくくなるという作用も得られると期待できます。耳は加齢で硬くなり、雑音を拾いがちになります。聴覚筋ほぐしで赤ちゃんのように柔らかな耳介にすることができれば、よりクリアな音が聞ける耳を保てるでしょう」(中川先生)

高音耳鳴りの方はもちろん、低音耳鳴りや聞こえが悪い難聴の人もぜひ試してみてください。
もちろん、耳鳴りや難聴のある人は必ず耳鼻咽喉科の専門医にみてもらうことは忘れないでください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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