【耳管開放症を自力で改善】爪もみや首スカーフがおすすめ。逆に鼻をすすると悪化!|カラダネ

カラダネ(わかさ出版)
医師や専門家とあなたをつなぐ、
健康・食・くらしのセルフケアが見つかる情報サイト

【耳管開放症を自力で改善】爪もみや首スカーフがおすすめ。逆に鼻をすすると悪化!

解説 カラダネ編集部

つらい耳管開放症で悩んでいる人に朗報です。耳管開放症の人におすすめのセルフケアがあるのです。反対に、耳管開放症の人がやらないほうがいい日常生活も含めて、3人の専門医に話を聞きました。

もちろん、耳管開放症の可能性がある人は、この病気にくわしい耳鼻咽喉科の専門医に診てもらうことが大切です。医師の治療方針に従い、正しい治療を受けることを忘れないでください。

この記事は、健康情報誌『わかさ』2014年3月号にQ&A形式で解説いただいたものをウェブ用に再編集したものです。

耳管開放症のセルフケア方法まとめ

首にスカーフを少しきつめに巻く

首にスカーフを少しきつめに巻くのは、耳管開放症の症状を和らげるためにおすすめな方法であると、仙塩利府病院耳科手術センター長(東北大学名誉教授)の小林俊光先生は話します。

「耳管開放症は、寝たり、頭を下げたりした姿勢になると、症状が和らぎます。これは、耳管(耳と鼻をつなぐ管)の周囲にある静脈叢(じょうみゃくそう。静脈の集合体)に血液が留まり、耳管が狭くなるためです。首にスカーフを少しきつめに巻くことには、ちょうどこれと同じように耳管周囲の血管をうっ血させて耳管を閉じやすくする作用があるのです。

とはいえ、一日じゅう首を締めつけるのは苦しいので、症状が出たときの応急処置として覚えておくといいでしょう。男性は、ネクタイを一時的に少しきつめに締めてください。

耳管開放症の患者さんは、自分の声が響くので、会話にストレスを感じる人がおおぜいます。こうした応急処置を覚えておくだけでも、症状はもちろん、ストレスの軽減にも役立つはずです。

ただし、呼吸を妨げるほど強く首を締めつけたり、頸動脈(けいどうみゃく)を強く圧迫したりするのは危険なので行わないでください」

爪もみをする

爪もみも、耳管開放症を改善するセルフケアになるといいます。元金沢市立病院耳鼻咽喉科科長の石川滋先生は、以下のように話します。

「耳管開放症は体重の急激な減少や、ストレス・疲労の蓄積などが原因で発症する場合があります。これらに加えて、有力な原因の一つとして考えられるのが、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)の乱れです。

自律神経には、交感神経(心身の働きを活発にする神経)と副交感神経(心身の働きをリラックスさせる神経)がありますが、交感神経が優位なら耳管(耳と鼻をつなぐ管)は開き、逆に副交感神経が優位なら閉じやすくなることが報告されています。

そこで、副交感神経を刺激する方法として私が耳管開放症の患者さんに指導しているのが、『爪もみ』です。これは、爪の根もとにある自律神経を刺激して副交感神経の働きを活発にする理学療法です。実際、当院で、低音が聞こえにくいという耳管開放症の症状が、爪もみを行う前後でどのように変化するのかを、114人の患者さんを対象に調べたところ、約8割の人に作用があったのです。

爪もみの具体的なやり方は、爪の根もとを、両側から親指と人さし指で挟んで押すだけ。左右の中指・人さし指・小指・親指を順にもんでください。薬指は交感神経を活発にする働きがあるのでもまないでください。少し強めの力加減で、各指を20秒ずつ、なるべくリラックスした状態で、1日2〜3回を目安にもむといいでしょう。

すぐに症状が改善する場合も多いので、調子の悪いときに行ってください」

s_スクリーンショット 2018-07-26 16.09.09.png

耳管開放症の不快な症状に悩んでいる人は、ぜひ上記の2つの方法を試してみてください。

耳管開放症のOK動作・NG動作

耳管開放症の人は、運動をしても大丈夫ですか?

セルフケアとは反対に、耳管開放症を悪化させないために避けたほうがいい動作はあるのでしょうか。日常生活の気になる行動について、慶友銀座クリニック院長の大場俊彦先生に、耳管開放症を悪化させる可能性があるのか聞いてみました。

「大汗をかいて脱水状態に陥るような運動や、エネルギーを大量に消費する激しい運動でなければ基本的に問題ありません。
体内の水分が減ると自声強聴や呼吸音聴取、耳閉感などの症状が現れやすくなります。脱水状態に陥ると耳管の粘膜組織から水分が減って萎縮(いしゅく)し、耳管の閉まりが悪くなるのです。

また、エネルギーの消費量が多い運動をくり返し行うと、体重の減少に伴って耳管の周囲にある脂肪組織が減ったり硬くなったりします。体重の減少は耳管が開きやすくなる主原因なので、耳管開放症の人は激しい運動をさけましょう。

ただし、軽めのジョギングやウォーキング、それに長時間の歩行や立ち仕事で症状が現れる場合もあります。立ち姿勢になれば耳管が開きやすいので、どのような運動や動作でも症状が現れる恐れはあるのです。

とはいえ、適度な運動は耳管周囲の血流循環や新陳代謝を促す作用があるので、症状の程度に応じて無理のない範囲で運動習慣を続けてください。

また運動選手の場合、当院では事前に十分な水分をとり、体重をできるだけ減らさないように注意しながら運動を続けてもらうようにしています」(大場先生)

水分は多くとったほうがいいですか?

耳鼻科では、耳管開放症の患者さんに十分な水分補給を心がけるように生活指導がされます。大場先生は以下のように話します。

「激しい運動や夏場の暑さでたくさん汗をかくと体が脱水状態に陥ります。すると、耳管の粘膜組織から水分が減って萎縮(いしゅく)したり、耳管の血流量が減ったりして耳管が開き、症状が現れやすくなるからです。

そこで、耳管開放症の人はこまめな水分補給が必要になりますが、通常時(仕事中や自宅にいるときなど)と運動時で摂取する水分の種類を飲み分けるのが効果的です。

通常時は、水が一番です。お茶には利尿作用があるし、ジュースやスポーツ飲料はカロリーが高すぎるので常飲には向いていません。逆に、運動時は大量に汗をかいて塩分が多く失われることから、スポーツ飲料が最適です。

なお、患者さんの中には、体が冷えたり、疲れがたまったりしたときに自声強聴や耳閉感が出ると訴える人もいます。この場合は水分補給とともに体を冷やさない、十分な睡眠を取って疲れをためないといったことにも注意しましょう」

プールに入ったり入浴をしても大丈夫ですか?

「耳管開放症の人がプールでの水泳や入浴を控える必要はありません。

もちろん、深海までダイビングをしたり、高い飛び込み台からプールに飛び込んだりする場合は、急激な気圧の変化や頭部への衝撃で耳管にもなんらかの悪影響を与える恐れはありますが、通常の水泳や入浴なら問題ないでしょう。

当院を訪れる中高年の患者さんの中には、メタボリックシンドローム(代謝症候群)や肥満の対策として水泳を始める人も多いようです。メタボリックシンドロームは高血圧や高血糖など万病を招くもとになるので、症状が軽度であれば、そのまま水泳を続けてもらっています。

しかし、癒着(ゆちゃく)性中耳炎や滲出(しんしゅつ)性中耳炎、真珠腫(しゅ)性中耳炎などを合併している場合は注意が必要です。これらは専門の耳鼻科医でないと診断できず、水泳も許可が必要になるので、必ず専門医に相談しましょう。

入浴も特に問題ありませんが、発汗によって症状が悪化する場合もあるので、長風呂やサウナはさけたほうが無難です。症状がひどいときは入浴時間を短めにして、事前に十分な水分を補給してください」(大場先生)

飛行機に乗っても大丈夫ですか?

「飛行機に搭乗すると離陸時や着陸時、特に着陸時に機内の気圧が変化するため、耳が健康な人でもしばらくの間は耳がつまったような耳閉感に悩まされます。
飛行機の高度が下がると機内の気圧が上昇し、それによって鼓膜が外側から押されて内側にへこみます。その結果、音が響きにくくなり、耳閉感が起こるというしくみです。

しかし、耳管開放症が慢性化している場合は、耳管が開きっぱなしになっているので機内の気圧の変化にさらされにくく、症状が急に悪化することはないと考えられます。そのため、飛行機の搭乗で神経質になる必要はありません。

ただし、癒着性中耳炎や滲出性中耳炎を合併している場合は、耳管が気圧の調整をうまくできなくなるので耳閉感が強くなることもあります。そのときは、耳抜きをしやすくするために、前もってアメやガムを用意しておくといいでしょう。

また、自声強聴や耳閉感などが続くならおじぎの姿勢を取って頭の位置を低くすれば、一時的に症状が和らぎます。

注意が必要なのは鼻がつまっているときで、耳管のコントロールがうまくできず、急性中耳炎を引き起こすケースもあります。飛行機に搭乗する以前に耳鼻科で内服薬や点鼻薬を処方してもらって鼻づまりを解消すれば、急性中耳炎の危険が大幅に減らせます」(大場先生)

鼻をすすって耳管開放症の症状を改善しても大丈夫ですか?

「鼻をすすって耳管開放症の症状を一時的に改善するのは、絶対にやってはいけません。

鼻すすり型の耳管開放症は、鼻をすすることで中耳から空気が抜けて耳管も閉じるため、一時的に自声強聴や耳閉感などの症状が抑えられて聞こえもよくなります。このように、症状を軽減する目的で鼻すすりを長期間続けていると、鼻すすり後の鼓膜は内側に陥没して軽度の伝音難聴を起こします。しかし、患者さんはこれが正常の聞こえだと勘違いしやすく、嚥下(えんげ)などで鼓膜が一時的にもとに戻って聴力も回復すると、逆に聞こえが異常に高まったように感じるのです。

そこで、もとの伝音難聴の状態に戻すために、鼻すすりをして耳管を閉じさせる習慣がついてしまうのです。この習慣がくり返されると、鼓膜が中耳の内側に癒着する癒着性中耳炎や、中耳に水がたまる滲出性中耳炎を起こしやすくなります。さらに、鼓膜の一部に真珠のような腫瘍(真珠腫)ができる真珠腫性中耳炎を招くこともあり、真珠腫が大きくなると顔の神経を圧迫して顔面神経マヒを起こす恐れもあります。

このように耳管開放症の人は無意識に鼻をすするクセがつきやすいのですが、長期間くり返していると先ほど述べたような中耳炎を併発し、耳管開放症が重症化するので、鼻すすりは絶対にやめてください」(大場先生)

いかがでしたか。鼻すすりをくり返すことで、顔面神経マヒまで起こす可能性があるとは知らない方が大半ではないでしょうか。
耳管開放症に悩んでいる人は、専門医の治療方針に従いつつ、上記のセルフケア、NG動作をぜひ参考にしてください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

関連記事

この記事が気に入ったらいいね!しよう