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高血圧を下げる食事⑥油選びも重要。サラダ油を控えて【亜麻仁油】をとろう

解説 実践女子大学名誉教授
田島 眞

高血圧の人は、減塩だけではなく食事での油選びも重要です。
なぜなら、油の種類によっては血管を傷めて高血圧を悪化させる場合があるため。いったい、どんな油をどのように選んでとればいいのか、食品学にくわしい田島眞先生にお聞きしました。

高血圧の人はオメガ3脂肪酸を。オメガ3ってなに?

最近、さまざまな油に対して「これはオメガ6系ね」や「この油はオメガ3脂肪酸」と分類されるのをご存じの人も多いでしょう。実は、油には炭素と炭素のつながり方によっていくつかの種類に分かれ、オメガ6やオメガ3はそうした種類の違いと考えてください。

高血圧の人はオメガ6脂肪酸ではなく、オメガ3脂肪酸を極力とるのをおすすめします。

とはいえ、みなさんはサラダ油をふだんよくとっている人も多いのではないでしょうか。「サラダ」という単語が使われることから、体にいい油と思っている人もいるかと思いますがそれは正しくありません。

サラダ油は、菜種・大豆・トウモロコシ・ヒマワリ・ベニバナなどを原材料とする精製度の高い植物油の総称で、「リノール酸」という脂肪酸を大量に含んでいます。
リノール酸は、多価不飽和脂肪酸のうちオメガ6のグループに属し、体内では生成できないため、食物から摂取する必要があります(下の図を参照)。
s_脂肪酸の図 (1).jpg
ところが、リノール酸をとりすぎると、全身のさまざまな組織で炎症が起こり、脳や血管、内臓にダメージを与えてしまうのです。

具体的にいうと、リノール酸は、体内でアラキドン酸という成分に変わり、さらにこのアラキドン酸から、炎症を促す炎症性メディエーターと呼ばれる物質が作られます。この物質が体内で増えすぎると、血栓(血の塊)が生じやすくなったり、動脈硬化が進行したりすることがわかっています。

つまり、高血圧の人はより血圧を上げてしまう可能性すらあるわけです。

オメガ3脂肪酸が多い亜麻仁油を小さじ1杯、サラダにかけよう

オメガ3脂肪酸は、亜麻仁油(アマニ油)やエゴマ油に多く含まれる脂肪酸です。α-リノレン酸という脂肪酸を豊富に含んでいます。
特に多いのは亜麻仁油(下のグラフを参照)。
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s_amaniyu 調べ.jpg
α-リノレン酸は、血中脂肪を減らすほか、血管を拡張したり血栓ができるのを防いだりする働きがあります。そのため、高血圧を下げる食事にはサラダ油を極力控え、亜麻仁油を補うのが大切です。
亜麻仁油は、小さじ1杯とれば1日当たりのオメガ3の必要量をまかなえます。

しかし、α-リノレン酸は熱に弱い性質があるので、炒め物などには使わず、調味料のようにみそ汁やスープ、納豆、サラダなどにかけてとるといいでしょう。

亜麻仁油の血圧に対する試験

亜麻仁油の血圧に対する作用については、2007年にギリシャで行われた試験があるので紹介しましょう。

この試験では、亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸と、ベニバナ油に含まれるオメガ6脂肪酸のリノール酸をとったときの血圧の変化が調べられました。

具体的には、亜麻仁油をとる群(59人)と、ベニバナ油をとる群(28人)に分け、それぞれの油を食事とともに毎日大さじ1杯(15ミリリツトル)ずつ12週間にわたって摂取してもらい、試験前後に最大血圧、最小血圧、平均血圧(動脈に平均してかかっている血圧のこと。細い血管の動脈硬化を知る指標となる)を測ったのです。

ちなみに、同試験の対象者は、総コレステロール値が200ミリグラム以上、HDL(善玉)コレステロール値が40ミリグラム未満の、メタボが疑われる人たちでした。
亜麻仁油をとった群とベニバナ油をとった群で、それぞれの数値の中央値(小さい順に並べたとき中央に位置する値)を比較しました。

最大血圧も最小血圧も平均血圧も低下

試験の結果は以下のとおりです。
s_亜麻仁 血圧 (1).jpg最大血圧についてはベニバナ油をとった群が122.5mmHgから127.5mmHgに上昇し、亜麻仁油をとった群は120mmHgから110mmHgに下がっていました。

次に、最小血圧は二群ともに低下しました。ベニバナ油をとった群は80mmHgから79mmHgに下がっていたのに対し、亜麻仁油をとった群は80mmHgから72mmHgに下がっていたのです。

平均血圧は、ベニバナ油をとった群では94.2mmHgから95mmHgに少し上がり、亜麻仁油をとった群では93.3mmHgから85mmHgへ顕著に下がりました。

以上のことから、ベニバナ油をとるよりも亜麻仁油をとるほうが降圧作用が得られやすいと確認されました。現在、海外では、亜麻仁油に多く含まれるα-リノレン酸の研究が盛んに行われており、高血圧のほか、心臓発作や不整脈、脳梗塞の危険を低減する作用についても調査が進められています。

もちろん、高血圧は病院での治療が基本です。そのうえで、毎日の食事の中で亜麻仁油を利用してみてください。ただし、とり過ぎも禁物ですから気をつけてください。

記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。


写真/©カラダネ

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