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【専門家解説】寝たきり予防に「たんぱく質」を。骨粗鬆症や脳卒中、認知症の予防に役立つ!?

解説東京都健康長寿医療センター 高齢者健康増進事業支援室研究部長
大渕修一

日本人のたんぱく質の摂取量は年々減少しているといいます。
しかし、そのたんぱく質が寝たきりを引き起こす老年症候群(日常生活に不具合を及ぼす老化現象の総称)を予防する可能性があると東京都健康長寿医療センター・高齢者健康増進事業支援室研究部長の大渕修一先生は話します。くわしいお話を聞きました。

もちろん、健康を維持するためには、たんぱく質をとるだけではなく、バランスのいい食事を意識したり、適度な運動をすることが大切です。

たんぱく質不足が老年症候群を悪化させる可能性がある

国民生活基礎調査によれば、2000年に90万人だった寝たきり人口は、2010年には170万人に増え、2025年には230万人を超えると推測されています。
そうした中、寝たきりになるリスクを高める要因として、近年問題視されているのが高齢者の低栄養状態です。実は、日本人のカロリー摂取量は、食の欧米化が進んだといわれる1970年代以降でも年々減っています。

1990年以降になるとダイエット志向に加えて、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満、以下メタボと呼ぶ)対策や粗食(菜食中心の食事)ブームなどの高まりもあり、一段と日本人の低栄養化が進みました。
特にたんぱく質の摂取量は過去20年間で10%以上も減り、これが老年症候群を悪化させて、寝たきりへと結びつける一因の可能性があります。

私たちの体は、骨の5割、筋肉の9割がたんぱく質でできており、30代以降は筋肉量や骨量が年に1%近く減っていきます。
そのため、50歳以上の人は若かったころよりも肉や乳製品、卵などの動物性食品を十分にとる意識を持つ必要があり、不足した状態が続くと体はたんぱく質不足に陥り、老年症候群に拍車がかかってしまうのです。

同様に、肉や乳製品はカルシウムを効率よくとれる食品でもあり、骨粗鬆症(こつそしょうしょう。骨がもろく折れやすくなる病気)対策としても動物性食品を減らしてはいけないのです。

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たんぱく質の摂取量の増加で脳卒中の死亡率が減少した

食の欧米化は日本人の寿命を大幅に延ばしただけでなく、血管を若く保つのに必要なたんぱく質やコレステロールの摂取量が増えたことで、1965年を境に脳卒中の死亡率が激減しました。

年齢調整死亡率では1965年以降、心臓病の死亡率も減少し、がんは横ばい傾向ですが、50代以降は総コレステロール値やアルブミン値(血液中のたんぱく質量を示す指標)の高いほうが、がんによる死亡率が低いこともわかっています。

また、日本はメタボ大国という論評もありますが、肥満率は世界の主要国の中でも著しく低い3.5%です(アメリカ36%、イギリス28%、フランス13%、イタリア10%)。つまり、日本はメタボ大国ではなく、メタボをコントロールできている最優秀国だといえるでしょう。にもかかわらず、高齢者などに粗食信仰を促すのは、ただでさえ食が細くなっているところに動物性食品を減らしてしまい、低栄養の人を増やすことがされます。

なお、国内外で行われた信頼に足る調査を見ても、粗食と健康長寿の因果関係を証明するデータは、私の知るかぎり示されていません。

たんぱく質の積極的な摂取が認知症を防ぐ!?

2年間にも及ぶ調査でわかった動物性食品の働き

私たちの研究所出身である人間総合科学大学教授・熊谷修先生は、東京都内に住む65歳以上の約600人を対象にした食生活の調査を行っています。

2年間にわたる調査では、魚介類に偏らず動物性食品(肉・乳製品・卵)と油脂類をよく食べるグループは、植物性食品をよく食べるいわゆる粗食のグループに比べて知的能動性(探索・創作・余暇活動など知的な活動を行うための能力)が高く保たれていることがわかりました。
この研究結果は、動物性食品の積極的な摂取が、認知症の予防にも作用することを示唆しています。

そして、認知症や脳卒中、心臓病、骨粗鬆症など、寝たきりを引き起こす大半の要因は、動物性食品の摂取不足が深くかかわっているとも考えられるのです。
熊谷修先生は、高齢者が一日に必要なたんぱく質食品の目安として、次のような食事内容をあげています。

●肉薄切り肉3枚(約60〜70グラム)
●魚1切れ(約80グラム)
●卵1個(約50グラム)
●牛乳約200ミリリットル以上
●豆腐3分の1丁(約100グラム)

低栄養状態を防ぐ!食生活の指針15ヵ条

さらに、「食生活の指針15ヵ条」をまとめて、ある村の高齢者1000人に実践してもらったところ、低栄養の指標となるアルブミン値・血色素(ヘモグロビン)量も改善傾向を示しました。食生活の指針15ヵ条は、以下の通りです。

①3食バランスよくとり、欠食は絶対にさける
②油脂類の摂取が不足しないように注意する
③動物性たんぱく質を十分に摂取する
④肉と魚の摂取は1:1程度の割合にする
⑤肉はさまざまな種類を偏りなく食べる
⑥牛乳は毎日200ミリリットル以上飲むようにする
⑦野菜は緑黄色野菜や根菜など豊富な種類を毎日食べる(火を通して十分に摂取する)
⑧食欲がないときはおかずを先に食べ、ご飯を残す
⑨食材の調理法や保存法を習得する
⑩酢、香辛料、香味野菜を十分に取り入れる
⑪調味料を上手に使い、おいしく食べる
⑫和風、中華、洋風とさまざまな料理を取り入れる
⑬会食の機会を豊富につくる
⑭かむ力を維持するために義歯は定期的に点検する
⑮健康情報を積極的に取り入れる

みなさんが食事をとるさいにも、食生活の指針15ヵ条を見直して、できるところから実践することをおすすめします。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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