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寝たきり予防は50歳前後からの【骨粗鬆症対策】が不可欠(老年医療の専門家が解説)

解説 東京都健康長寿医療センター 高齢者健康増進事業支援室研究部長
大渕修一

骨折(特に大腿骨頸部骨折。太もものつけ根の骨折)は、寝たきり・要介護の主要な原因となっています。骨折を防いで、元気な老後を過ごすためには、骨がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を予防することが大切です。

この記事では、骨粗鬆症の予防や対策について、東京都健康長寿医療センター・高齢者健康増進事業支援室研究部長の大渕修一先生にお話を聞きました。



寝たきりや要介護を防ぐには「老年症候群」対策が不可欠

2015年に厚生労働省が発表した「介護保険事業状況報告の概要」によれば、65歳以上で要介護認定を受けている人の割合は18%、実に高齢者の6人に1人がなんらかの介護や支援を必要としている状態です。

要介護認定を受ける人は年々増えており、その背景を探ると「老年症候群」への対策の遅れがあげられます。

老年症候群とは、加齢とともに足腰が弱くなる、食が細くなって体力が落ちる、意欲が減退していくなど、日常生活に不具合を及ぼす老化現象の総称ですが、最近になって要介護の予防に老年症候群への対策が不可欠という認識が広まってきました。

要介護になった原因は、脳卒中が全体の2割程度。それ以外の主な原因には認知症(15.3%)、衰弱(13.7%)、関節疾患(10.9%)、骨折・転倒(10.2%)があり、これらが要介護原因の半数を占めています。

そして、そもそもの発端は、物覚えが悪くなった、心身が弱ってきた、足腰が痛い、転びやすくなったなど、病気とはいえないまでも日常生活に支障が出ている老年症候群から始まっているのです。

老年症候群とは(文責・カラダネ編集部)
年齢を重ねた高齢者に見られる、医師の診察や介護、看護を必要とする症状などの総称。生理的老化や病的老化が混在しているとされます。最近、加齢によって肉体的にも精神的にも体が虚弱することを「フレイル」という言葉で表現される場面が増えていますが、これも老年症候群の一種です。

寝たきり防止に50代からは男女問わず骨粗鬆症対策を

要介護の中でも深刻なのが寝たきりの状態ですが、寝たきりを引き起こす要因として問題視されているのが骨折・転倒です。

内閣府の「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」では、自宅で転倒した65歳以上の高齢者のうち、約1割が骨折を伴っていたと報告しています。

特に大腿骨(だいたいこつ。太ももの骨)のつけ根を骨折する大腿骨頸部骨折は起き上がりや歩行が困難になり、そのまま寝たきりに陥るリスクを高めます。近年は年間に15万〜20万人が大腿骨頸部骨折を起こし、そのうち2〜3割は数年以内に寝たきりになっていると推測されているのです。

したがって、50歳を過ぎたら、もっといえば30代40代の方でも、将来の寝たきりや要介護を回避するために、早めに老年症候群の対策を講じるべきでしょう。

大腿骨頸部骨折をはじめとする骨折の予防では、現在、潜在患者数も含めて全国で1300万人超と推測されている骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の対策が求められます。
骨粗鬆症とは骨量が減って骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。一般に、骨量が若年成人の平均値の70%以下になると骨粗鬆症と診断されます。

骨量は40代から徐々に減りはじめますが、とりわけ女性の場合は閉経後から女性ホルモンの低下によって骨量も急激に減少するため、骨粗鬆症患者の8割は女性が占めています。
骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状が少ないので、大半の人はその進行に気づきません。50歳前後から女性だけでなく男性も、骨粗鬆症対策を始める必要があるでしょう。

骨粗鬆症対策にはカルシウムとビタミンDをとることが大切

骨は新陳代謝(古いものと新しいものの入れ替わり)によって約3年で全身の骨が入れ替わり、骨をバケツにたとえれば、入れる水が少ないことと、出ていく水が多いことで骨粗鬆症が起こります。

入れる水とは骨の材料になるカルシウムなどの栄養を指し、加齢とともにカルシウムの吸収率が低下するため、高齢になるほどカルシウムの摂取量を意識的に増やす必要があるのです。
一方、リンや食塩、炭酸の多い食品を過剰にとると、カルシウムが骨から溶け出しやすくなるので、インスタント食品や炭酸飲料のとりすぎには注意が必要です。

また、カルシウムを骨に定着させるビタミンDは、小魚や青魚、シイタケ、卵などに比較的多く含まれています。
さらに、ビタミンDは太陽光に当たると私たちの体内でも作られます。高齢になって家に閉じこもりがちになると、ビタミンDの産生が少なくなるので、日中は散歩や買い物などで外出する機会を自発的に作り、数十分から1時間は太陽光を浴びるようにしましょう。

さらに、骨粗鬆症を防ぐ運動や食事については、別の記事で紹介します。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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