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【骨粗鬆症の予防・改善運動】骨に刺激を与える「かかと落とし」を専門家推奨。骨密度が増える!?

解説 東京都健康長寿医療センター 高齢者健康増進事業支援室研究部長
大渕修一

骨密度を高めて骨粗鬆症を予防するには、骨に適度な刺激を与える運動がおすすめです。

東京都健康長寿医療センター 高齢者健康増進事業支援室研究部長の大渕修一先生に、骨粗鬆症が進行している人でもできる安全なセルフケアを教えていただきました。

もちろん、骨粗鬆症の予防には、日々の食事や運動への配慮が必要不可欠です。そのことを理解したうえで、記事で紹介するセルフケアにも取り組んでみてください。

骨粗鬆症対策には運動を、特にかかと落としを勧める理由

食事でとった骨強化栄養を、運動で定着させる

骨をバケツにたとえた場合、骨粗鬆(こつそしょうしょう。骨がもろく折れやすくなる病気)を防ぐ2大要素の1つは、入れる水を増やすこと、すなわち動物性食品を積極的にとり、たんぱく質やカルシウムなどを骨に蓄えることです。

もう一つの要素は、バケツからもれて出ていく水を少なくすることであり、それには運動で骨に刺激を与えて骨密度を高める必要があります。

運動には、ストレッチのようにじっくりと骨に負荷をかけるやり方と、ジャンプして着地するように、一気に骨に負荷をかけるやり方がありますが、骨にカルシウムを定着させて骨密度を高めるには、一気に骨に負荷をかける衝撃運動がおすすめです。

骨を作る骨芽細胞は、衝撃を受けると活性化

骨粗鬆症の進行している人が階段やイスなどから飛び降りて着地するのは、骨折の危険を伴うのでおすすめできません。そういった無茶をしなくても、もっと安全で簡単に骨密度を高める方法があるので紹介しましょう。

それは、立ち姿勢でかかとを上げて、トンと床に打ちつける「かかと落とし」という運動です。やり方は下の図を参照してください。

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骨を作る骨芽(こつが)細胞は、衝撃を受けると活性化して骨を成長させ、骨密度を高めるのに役立ちます。これについては、イギリスのラフバラ大学の研究報告があるので紹介しましょう。

骨に衝撃を与えたら、骨量が平均7%増加した研究結果も

ラフバラ大学の研究チームは、65〜80歳の男性34人に、片足だけで軽く跳びはねる運動を1日2分、1年間にわたって行ってもらいました。なお、試験の期間中は、参加者に食事や運動量を試験前と変えないように指導しています。

そして、1年後に参加者の足の骨密度を調べたところ、骨量が平均で7%増加していたのです。もし、これに動物性食品を積極的にとる食生活や、太陽光を適度に浴びてビタミンDの産生を高める生活習慣も加われば、骨量はより高まっていたでしょう。

かかと落としは骨粗鬆症が進んだ人でも安全に行える

骨粗鬆症がかなり進行していたり、足腰の筋力が低下していたりする場合は、軽く跳びはねる運動でさえバランスをくずして転倒骨折する恐れがあります。その点、かかと落としは、イスの背もたれを両手でつかみ、その状態でつま先だちになってから、かかとをストンと落とすだけの安全な方法です。

骨を作る骨芽(こつが)細胞は、衝撃を受けると活性化して骨を成長させ、骨密度を高める働きが期待できます。かかと落としの動作だけでも両足の骨に体重分の負荷がかかるため、骨芽細胞は活性化し、骨密度の増強に役立ちます。

さらに骨粗鬆症対策に役立つ運動のやり方

1段昇降のやり方

かかと落としを続けることで骨密度が増え、より作用が高い運動に挑戦したくなったり、骨粗鬆症を発症していなかったりする人は、階段で1段だけ上り、後ろ向きで1段下りてかかとをトンとつく「一段昇降」を試してみてください。一段昇降では、体重の約1.5倍の負荷が足の骨にかかります(下の図参照)。

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ミニジャンプのやり方

1段昇降を1ヵ月くらい続けると骨が強くなってくるので、さらに10センチくらいの高さから下りてトンと着地する「ミニジャンプ」でより骨密度を高めましょう(下の図参照)。

ミニジャンプは、体重の約2倍の負荷が両足の骨にかかります。かかと落としや一段昇降を経ずに、いきなりミニジャンプから始めると、骨密度が減っている場合は疲労骨折を起こす恐れもあるので注意してください。

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①かかと落とし→②一段昇降→③ミニジャンプの順で、それぞれを少なくとも1ヵ月単位で行い、徐々に衝撃の度合いを高めていくのが安全性を保つうえでも大切です。

また、骨粗鬆症の進行度は人によって違うので、かかと落としを始めるときは、まず担当医に相談し、了解を得てから行ってください。
そのほか、糖尿病や腎臓病、ガン、リウマチ、脊柱管狭窄症など、なんらかの治療を受けている場合も必ず医師に相談する必要があります。

食事の見直し、日中の適度な散歩、そしてかかと落としなどの骨トレーニングを組み合わせて骨粗鬆症の予防と改善に取り組めば、きっと寝たきり知らずの元気な老後が待っているはずです。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© カラダネ © Fotolia

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