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緑内障予防の食べ物はカシス! 視神経強化や網膜の血流アップに役立つ可能性がある

解説 札幌医科大学教授
大黒 浩

小さな黒い果実「カシス」には、緑内障の進行予防に役立つ可能性があるとわかってきました。もしかしたら、カシスではなく黒スグリといったほうがわかる方もいるかもしれませんね。
カシスと黒スグリは名称が違うだけです。

こうした食品類が緑内障の予防に役立つのは、うれしいですよね。カシスについての試験を行った札幌医科大学の大黒浩教授に話を聞きました。



緑内障の人におすすめの栄養がたっぷり入った食品、それがカシス

緑内障の進行を防ぐために、眼科の治療に加えて私が大切だと考えているのは目にいい栄養を習慣的に補うことです。

特に、私がさまざまな食品成分について調べたところ、緑内障の人にぜひおすすめしたい食品があります。それは「カシス」です。
カシスは、ブルーベリーやストロベリー(イチゴ)などのベリー類(多肉質の小果類の総称)の仲間です。

もともとは、北欧やニュージーランドなどの寒冷地が主な産地で、日本では青森県が特産地です。欧米では、昔からジュースやジャム、菓子の材料として使われてきたほか、15世紀のヨーロッパでは民間薬として用いられたという記録もあります。

カシスには、どのような栄養が含まれているのでしょうか。
直径1センチ程度の黒っぽいカシスの実には、アントシアニンというポリフェノール(植物に含まれる色素成分)が豊富に含まれています。

アントシアニンには、目の網膜(カメラのフィルムに相当する部分)や視神経、毛様体(目のピント調節を行う水晶体の厚みを調整する器官)の血流を促す働きが確認されています。
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しかも、カシスに含まれるアントシアニンの量は、同じベリー類で目にいい果実として有名なブルーベリーのなんと3倍以上に達します。

また、アントシアニンは数種類あり、そのうちカシスには4種類が含まれています。
4種のうち2種はカシス特有のもので、ブルーベリーには含まれていないというのです。

緑内障の人の目の血流量が2割アップ!視神経も改善する可能性が

私はカシスに可能性を感じて、カシスのアントシアニンを補えば目の血流が増え、網膜や視神経の機能が正常に保たれ、ひいては緑内障の進行を防げるかもしれないと考えました。
というのも、今までは眼圧が高くなって、網膜や視神経が障害を受けるために緑内障が発症・進行すると考えられてきました。

ところが、最近では眼圧が正常範囲(10~21ミリ)なのに、視野の欠け(狭窄)が現れる「正常眼圧緑内障」の患者さんが増えています。
そのため、眼圧が高くなる以外の緑内障の原因として網膜や視神経の血流障害が注目されるようになってきたのです。

私は緑内障に対するカシスの働きを試験で調べてみることにしました。
協力してくださったのは、正常眼圧緑内障の患者さん30人(51~80歳)。カシスから抽出したアントシアニンを1日1回50ミリグラム飲んでもらったのです。

すると、6カ月後には網膜と視神経乳頭(網膜から脳につながっている神経の束)の血流量が平均して約2割増えていました。
この結果から、カシスをとると目の血流が促されて視神経の働きが改善する可能性があるとわかります。

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カシスで緑内障の眼圧が明らかに低下。点眼薬との併用がおすすめ

カシスの可能性について期待を持った私は、もう少し長い期間をかけて調べることにしました。
2度めの試験は、時間にして1度めの試験の4倍に当たる2年間をかけて、眼圧(眼球内の圧力)と視野の欠け(視野狭窄)の変化について調べました。
試験に協力してくれたのは、治療のために点眼薬を1種類使っている正常眼圧緑内障の患者さん21人です。

「点眼薬を1種類だけ」と限定したのは、複数の点眼薬を使っていると眼圧が下がりやすいためカシスのアントシアニンの作用を正しく判定できないからです。

試験では、21人をカシスから抽出したアントシアニン50ミリグラムを毎日とってもらうグループ(12人。以下、カシスグループ)と、プラセボ(偽食品)を毎日とってもらうグループ(9人。以下、プラセボグループ)に分けて調べました。

試験開始当初は、両グループとも眼圧の差はほとんどありませんでした。それが半年後からプラセボグループの眼圧は上がり、カシスグループの眼圧は下がったのです。
その差は平均約1.2ミリで、個別に見た場合は最大で4ミリ以上の開きがありました。

そのうえ、プラセボグループは点眼薬を使っていたにもかかわらず眼圧が少しずつ高くなっていきました。逆にカシスグループの眼圧は、試験開始当初よりも低くなっています。
つまり、点眼薬とカシスのアントシアニンの併用で眼圧を低く保てることが確認されたわけです。

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緑内障の視野の欠けの進行も防げた

次に視野の欠けについて調べた結果です。

緑内障の視野の欠けの進行度は「MD値」で示されます。
正常な視野は0デシベル、初期の狭窄はマイナス2〜マイナス10デシベル、中期の狭窄はマイナス10~マイナス20デシベル、末期の狭窄はマイナス20デシベル以下、そしてマイナス30デシベルで失明となります。

つまり、視野狭窄が進むほどマイナスの方向に数値が大きくなるわけです。
正常眼圧緑内障の人の場合、MD値で示すと平均して1年間でマイナス0.5デシベルほど視野の欠けが進行しているといわれます。

そのため、2年後には両グループに少なくともマイナス1デシベル程度の違いが出ると私は考えていました。

ところが、結果は私の予想をいい意味で裏切りました。

視野の欠けの進行度をみると、カシスグループのMD値は0~マイナス0.5デシベルで推移していますが、プラセボグループではマイナス1.5デシベルよりも視野の欠けが進んでいました。

つまり、カシスグループは明らかに視野の欠けの進行が抑えられたのです。
さらに、目の血流量の推移を見るとカシスグループはプラセボグループに比べて視神経乳頭部などの血流が増加していました。
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この研究成果を2010年に開かれた日本臨床眼科学会で発表したところ、カシスで緑内障の進行を抑える働きが初めて学会で報告されたとして、大きな反響を呼んだのです。

もちろん、緑内障の治療では点眼薬で眼圧を下げることが基本です。そのうえで、毎日の健康習慣としてカシスのアントシアニンを補うとよいといえます。
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カシスのアントシアニンは、ジュースやジャム、リキュールなどの果実酒でもとれますが、手軽なサプリメント(栄養補助食品)も多数市販されているのでこうした食品をうまく利用するといいでしょう。
もちろん、緑内障の人は眼科での治療を受けつつ、食事の中でカシスを利用してください。食べる量がたくさんならいいという話でもなく、適度に活用することがとても大切です。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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