【専門医解説】モヤモヤ血管(新生血管)とは?ひざ痛など慢性痛の原因?治し方は?|カラダネ

カラダネ(わかさ出版)
医師や専門家とあなたをつなぐ、
健康・食・くらしのセルフケアが見つかる情報サイト

【専門医解説】モヤモヤ血管(新生血管)とは?ひざ痛など慢性痛の原因?治し方は?

解説 奥野クリニック院長
奥野祐次

身体の長引く痛みに悩む人は多くいます。ひざ痛や肩こり、腰痛、ひじ痛など痛む部位は人それぞれ。
そうした痛みについて、新しいことがわかってきました。

痛みの原因というと、従来は「軟骨のすり減り」や「筋肉不足」などが指摘されてきましたが、最近わかった痛みの原因は[血管]にあるというのです。

痛みに悩まされているみなさん、痛みを引き起こす「モヤモヤ血管」が、体内にできている可能性があります。モヤモヤ血管は新たに作られる血管なので、「新生血管」とも呼ばれます。モヤモヤ血管とはいったいどんな血管なのでしょうか。オクノクリニック院長の奥野祐次先生に話を聞きました。


なお、モヤモヤ血管についてどこよりもくわしく解説されている奥野祐次先生の最新刊書籍
『長引く痛みを治したいなら「モヤモヤ血管」を押しなさい』
が全国の書店、Amazon、楽天ブックスなどで絶賛発売中です(クリックすると販売ページにジャンプします)

●Amazon
●楽天ブックス



従来の常識では「長引く痛みの原因」を説明できない

ひざ痛をはじめとする痛みは、病院できちんと治療をしても治らないことが多々あります。

目安として症状が3カ月以上続いている「長引く痛み」に悩んでいる人、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

私が勤務する病院にも、長引く痛みを訴える患者さんがたくさん来院します。
患者さんに話を聞くと、例えばひざ痛の場合は医師から「画像検査の結果、ひざ関節が変形し軟骨がすり減っているのが原因といわれた」といった答えが返ってきます。

s_Fotolia_112022231_Subscription_Monthly_M.jpgもちろん、軟骨のすり減りがひざ痛の重大な原因にはなります。
しかし、私の臨床経験では明らかに関節が変形して軟骨がすり減っているのに痛みを感じない人がいるのも事実です。
逆に、ひざ痛で軟骨のすり減りが原因といわれた人も、画像検査ではひざ関節の変形がひどくなくて軟骨が残っていることもあります。

これは従来は常識とされていた原因、例えば一般的なひざ痛であれば「軟骨のすり減り」が、必ずしも痛みを引き起こすとは限らないことを示しています。

つまり、従来の常識だけでは説明できないのです。

では、別の原因はいったいどこにあるのでしょうか。
私は、治療しても治らない長引く痛みの原因は新生(新しく生まれること)したモヤモヤ血管(新生血管)にあると考えています。

もっというと、ひざ痛などの関節痛で痛みが長引いている人の大半は、モヤモヤ血管が原因であると推測しています。

モヤモヤ血管とはなにか。痛みをどう引き起こすのか

モヤモヤ血管について、くわしく説明しましょう
まず、モヤモヤ血管という名称についてですが、医学的な正しい名称ではありません。

この血管は、見た目がまるで細い糸が絡まったようにグチャグチャ、モヤモヤした形状をしているため、一般の方でもわかりやすいように「モヤモヤ血管」と呼んでいるのです。

私たち人間の血管には、生命を維持するために欠かせない正常な血管(生理的血管)と、病気を悪化させる異常な血管(病的血管)の2種類があります。モヤモヤ血管は、後者の病的血管の一種。

生理的血管は、心臓から体の末端まで網の目のように整然と配置されています。
この血管のネットワークがあるおかげで、全身の細胞に栄養や酸素が届けられるわけです。

一方のモヤモヤ血管は、とても細くてグチャグチャしていて不規則です。そのため、正常な血管と違って、栄養や酸素を運ぶことができません。
s_モヤモヤ血管2.jpg
では、モヤモヤ血管がどのように長引く痛みを引き起こすのでしょうか。

まず第一にモヤモヤ血管ができると、そのまわりに痛みの発信源となる神経繊維が増えるためと考えています。
通常は血管と神経は対になっており、血管が新生すると神経線維も血管のすぐそばに寄り添う形でいっしょに増えていきます(専門的には、血管と神経のワイアリングという)。

モヤモヤ血管ができた場合も、当然ながらそのまわりに神経線維が増えます。このモヤモヤ血管とともに増えてしまった神経線維から、脳へ痛みを伝える信号が出ているのではないかと考えられるのです。

さらに、増えてしまった神経線維にはある特徴があります。それは「裸」の神経線維であるということです。
私たちの体にある神経線維は大きく2種類に分けられます。
一つは、ミエリンという脂肪成分に包まれている神経線維。もう一つはミエリンに包まれていない、いわば裸の神経です(専門的にはC線維という)。

例えていうなら、ゴム製の物質でカバーされている電気コードと電線がむき出しになっている電気コードを思い浮かべてください。この2種類の神経線維は、痛みの伝わり方に大きな違いがあります。

まわりを脂肪成分に包まれている神経線維は、瞬間的な短い信号を脳に送ります。
そのためこの神経線維が発する痛みの特徴としては、無理な姿勢をとったときや体の一部に必要以上の負荷がかかったときなどに、「ピキッ」「ズキン」という一瞬の痛みとして感じます。

一方の裸の神経線維の場合は、ジワジワと絶えず脳に信号を送るとされています。
そして、裸の神経線維から送られる痛みは一般的に「ジンジン」「ズキズキ」「チクチク」と表現される種類の痛みとして伝わります。

モヤモヤ血管が作られると、いっしょに作られた裸の神経線維から絶えず痛みの信号が送られ、これが長引く痛みとなって現れると私は考えているのです。

ところで、この裸の神経は何によって刺激されているのでしょうか。
私は、裸の神経を刺激しているのは血液の流れではないかと考えています。
というのも、私の診療経験でモヤモヤ血管の血液の流れを遮断したとたんに痛みがらくになった例があまりにも多いからです。

つまり、モヤモヤ血管が長引く痛みを招く原因の一つは、心臓の拍動によってモヤモヤ血管にかかる圧力が周囲の裸の神経を刺激するためと考えられるのではないでしょうか。
そのため、モヤモヤ血管の血流を遮断することで痛みが速やかに改善していくのです。

モヤモヤ血管は痛みの原因になる炎症を引き起こす

モヤモヤ血管がどのように長引く痛みを引き起こすのか。
その第二は、炎症を引き起こすためです。

一般的に、痛みの原因は体の各部位に炎症が起こるためとされています
炎症は、一般的にはすぐ治まると考えられていますが、中には1年以上長引いてしまう場合もあります。実は、炎症の発生にもモヤモヤ血管がかかわっているのです。

これは、モヤモヤ血管の独特な構造が関係しています。
私は、正常な血管とモヤモヤ血管に特殊なインクを流してみる実験を行いました。インクを流すことによって、血管の外にインクが漏れ出るかどうかを確認してみたのです。

すると、正常な血管はインクがほとんど漏れ出てきませんでした。
一方で、モヤモヤ血管の場合は、インクが血管の外にたくさん漏れ出ていることがわかりました。
s_Fotolia_129664494_Subscription_Monthly_M.jpg
これは、いわば河川の土手が決壊して、中を流れる土砂が氾濫してしまうような現象です。
その結果、周囲の家屋が浸水するのと同じように、モヤモヤ血管の場合も血管から血液や細胞外液という液体が血管外に漏れ出て、血管の周囲は水びたしになってしまいます。

実は、炎症を起こしている場所が腫れてしまうのはこうした浸水が原因なのです。

また、モヤモヤ血管は炎症細胞を呼び込むという性質も持っています。
くわしい説明は少し難しいので省きますが、炎症細胞がモヤモヤ血管を通って外に漏れ出ると痛みを招く原因になると考えられ、それが長引く痛みへとつながるのではないでしょうか。

長引く痛みを消すには、モヤモヤ血管を消せばいい

では、長引く痛みを消すにはどうすればいいのでしょうか。
ここまで読まれたみなさんなら、答えはもうおわかりのはずです。モヤモヤ血管の血液の流れを止めて炎症を抑えればいいのです。

これには病院で行う治療もありますし、みなさん自身でモヤモヤ血管を消すのに役立つやり方もあります。それについては下記の関連記事もご覧ください。
最後に、長引く痛みの原因のすべてがモヤモヤ血管というわけではありません。ひざ痛などの長引く痛みは整形外科の専門医に必ず診てもらうことが重要です。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

関連記事

出典:『長引く痛みを治したいなら「モヤモヤ血管」を押しなさい』

s_モヤモヤ血管_表1.jpgひざ痛、腰痛、肩こりなど、長引くつらい痛みを自分で治すための決定版ガイド。
「モヤモヤ血管=新生血管」を探して患部を15秒押すだけ。
部位別・症状別に、豊富なイラストとともにわかりやすく解説します。


この記事が気に入ったらいいね!しよう