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夜につらい【むずむず脚症候群】の重大原因は鉄や葉酸の不足?症状や対処法も解説

解説 元東京医科歯科大学名誉教授
井上昌次郎

足を虫がはい回るような感覚に襲われる「むずむず脚症候群」。特に夏に発症したり悪化することが多く、眠れなくなるほどの不快感に悩む人も多いのだとか。

そんなむずむず脚症候群の症状や対策について、2015年に健康情報誌『夢21』に掲載された東京医科歯科大学名誉教授(当時)の井上昌次郎先生の解説をウェブ用に再編集しました。

むずむず脚症候群は鉄不足や糖尿病の人に多い?

あなたは、夜、布団に入ったとき、足を虫がはいまわるような不快感に襲われ、眠れなくなったことはありませんか。もしかしたら、その足の不快感の正体は「むずむず脚症候群」という病気かもしれません。

最近の調査で、日本人の2〜5%がむずむず脚症候群にかかり、患者数は推計で130〜200万人にのぼることが明らかになりました。女性は男性の約1.5倍発症しやすく、妊婦に多いことも知られています。40代以降に増加し、最も多いのは60〜70代という調査結果もあります。

鉄分の欠乏による貧血の人や、糖尿病の初期段階にある人は、むずむず脚症候群を発症しやすいとされています。さらに、腎臓病で人工透析(機械で血液をして老廃物を排出する治療法)を受けている人では、約20%にむずむず脚症候群が見られます。

症状は足を虫がはい回るようなむずがゆさ。ピリピリ・ジンジン

夏の夜に悪化する人も。血管が拡張するため?

むずむず脚症候群は、夕方から夜にかけて、じっと座っているときや横になっているとき、足のひざから下の部分に蟻走感(ぎそうかん。肌を蟻が走るような不快感)が現れたり、強まったりするのが一番の特徴。

また、梅雨時から夏場にかけて、症状が悪化する人も少なくありません。これは、気温の上昇によって血管が拡張するためと考えられます。 

症状について患者さんは、「ふくらはぎを小虫がはい回るようなむずがゆさ」「電気が流れているようなピリピリ感」「ジンジンとしたしびれ感」「針でつつくようなチクチク感」などと表現します。また、「かきむしりたくなる」「足がほてる」と訴える患者さんもいます。

こうした症状から、夏は虫さされ・あせも・じんましんなどと、冬は、神経痛や皮膚の乾燥などと間違われることもあります。

しかし、むずむず脚症候群の場合、皮膚の表面ではなく奥のほうに症状を感じます。さらに、症状が起こると「足を動かしたい」という強い欲求にかられるのも、むずむず脚症候群の特徴です(症状は下の図も参照)

むずむず脚症候群が始まると、夜、床に就いてもなかなか寝つけなかったり、何度も目が覚めたりします。睡眠中も、寝返りを頻繁にくり返したり、物を飛ばすように足先やひざが跳ね上がったり、数秒間のけいれんが断続的に起こったりします。そのため、睡眠時間をたっぷり取っても寝不足な感じが抜けず、昼間も疲労感や足のだるさが残ってしまうのです。

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鉄が不足するとドーパミンが減る?

むずむず脚症候群の原因は、まだはっきりとは解明されていません。今のところ、脳内のドーパミンという神経伝達物質(脳内で行われる情報の受け渡しを助ける物質)がかかわっているという説があります。

ドーパミンには、運動や感覚をつかさどる神経の興奮を抑える働きがあります。ドーパミンは鉄を媒介として生成されるため、鉄が欠乏するとドーパミンの合成ができなくなって、脳内でドーパミン不足が起こります。その結果、運動や感覚をつかさどる神経が異常に興奮し、むずむず脚症候群が発症すると考えられているのです。

むずむず脚症候群は、同じ家系の人に多発することから、遺伝も疑われています。また、パーキンソン病(重い運動障害を伴う神経疾患)、妊娠、葉酸(ビタミンB群の一種)の不足、抗うつ薬の副作用なども、むずむず脚症候群の原因になると考えられています。

現在では治療薬も開発されているので、症状がひどい場合は病院を受診するのが賢明です。その場合、睡眠専門医、あるいは神経内科医を受診してください。

対処法として食事で鉄やビタミンB群をとろう

自分でできる対処法としては、食事では、鉄分を多く含むレバー・赤身の肉・ホウレンソウ・ブロッコリーなどを積極的にとり、ビタミンB群や、血流を促すビタミンEも補給するといいでしょう。逆に、カフェイン・アルコールのとりすぎや喫煙は、症状を悪化させるので、控えるようにしましょう。

ウォーキングのような軽い運動もおすすめです。ただし、激しすぎる運動は、かえって症状を悪化させるので、注意してください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
井上先生のご家族の方にご許可をいただき掲載しました。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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