認知症の疑いがある家族に、車の運転をやめさせるにはどうしたらいいか【認知症Q&A⑦】|カラダネ

カラダネ(わかさ出版)
医師や専門家とあなたをつなぐ、
健康・食・くらしのセルフケアが見つかる情報サイト

認知症の疑いがある家族に、車の運転をやめさせるにはどうしたらいいか【認知症Q&A⑦】

解説 慶應義塾大学病院講師・日本認知症学会専門医
伊東大介

高齢者の車の事故が増えています。
認知力や判断力が衰えた人の場合、車の運転は大変危険です。特に認知症の疑いがある人の場合はなおさら。

この記事では、認知症の疑いがある人に運転をやめさせるための説得方法について、認知症専門医の伊東大介先生に話を聞きました。

医師から説得してもらう方法もある

「ブレーキとアクセルを踏み間違えて子供の列に車が突っ込んだ」
「信号を無視して衝突事故を起こした」

最近、高齢者による痛ましい交通事故が数多く報道されています。車に乗る高齢の家族がいると、こうした交通事故が心配になる人も多いと思います。

物忘れが増えたり、以前に比べて体の動きが鈍くなって運転が苦手になってきたりした場合、家族が大きな事故を起こす前に運転をやめてもらうことが望ましいといえます。そのさい、本人が自発的に運転をやめてくれることが一番ですが、中には自分の能力を過信して、運転を続けてしまう人が少なくありません。

その場合、まず、プライドを傷つけないように「年齢のこともあるので、しばらく運転をお休みしませんか」と本人の体や身の安全を心配する形で優しく説得してみてください。
応じてもらえない場合は、病院の受診時に事情を説明して、医師から指導してもらうといいでしょう。

実際、私も「最近は認知症でなくても、高齢者による自動車事故が大きな問題になっています。このまま運転を続けて事故を起こしたら大変ですよ」と指導することがありますが、多くの患者さんはこれで納得してくれる場合も多いのです。

車の売却など強硬な手段が必要なときも

ただし、一度は納得しても、「大丈夫だろう」と思って運転を再開するケースもあります。家族から再度、「お医者さんから『運転をお休みしましょう』といわれたでしょう」と声をかけてみても運転をやめないなら、車のキーを隠したり、「修理に出す」といって車を売却したりするなど、強硬な手段が必要なケースもあります。

最初のうちは騒ぐこともありますが、そのうちに車の運転をしなくなるケースが多いようです。
認知症の人の気持ちに寄り添うことは大切ですが、車の運転については本人が希望しても断固とした対応をしてほしいと思います。

なお、最近は、運転免許証を自主返納する人が増えています。そのさい、希望すると運転免許証と同じサイズの「運転経歴証明書」を発行することができます。これは、運転免許証と同じように身分証明書として使えるので、利用するといいでしょう。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

関連記事

この記事が気に入ったらいいね!しよう