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認知症は遺伝するの?もし、遺伝するなら対策を教えて【認知症Q&A④】

解説 慶應義塾大学病院講師・日本認知症学会専門医
伊東大介

両親のどちらかが認知症だと、「私もいずれ認知症になるのか」と不安を抱える人も多いのではないでしょうか。
実際のところ、認知症は遺伝するのかどうか、認知症専門医の伊東先生に話を聞いて診ました。

認知症の疑いがある人は、必ず専門医の治療を受けることが重要です。その点は忘れないでください。

65歳未満で発症する「若年性アルツハイマー病」の場合は特に遺伝が関係

親が認知症になると、「自分もいつか認知症になるのではないか」と不安になる人が多いものです。
確かに、遺伝は認知症の発症リスクの一つです。特に遺伝の要素が強いのが、65歳未満で発症する若年性アルツハイマー病です。ある特定の3つの遺伝子(プレセニリン1および2、アミロイド前駆体たんぱく質)に変異が生じていると、極めて高い確率でアルツハイマー病を発症することがわかっています。

こうした遺伝子の異変が明確に関係している若年性アルツハイマー病は、認知症全体から見ればごく一部です。とはいえ、親が60代未満でアルツハイマー病を発症している人で、物忘れが気になるようであれば、一度、メモリークリニックや物忘れ外来など専門医を受診するといいでしょう。

65歳以上はアポE4型遺伝子が関係する?

このほか、65歳以上のアルツハイマー病の発症には、アポリポたんぱくE4型という遺伝子が関係していることがわかっています。この遺伝子を持っている人は脳にアミロイドがたまりやすく、アポリポたんぱくE4型を持っていない人よりアルツハイマー病になる危険が3〜9倍にも上昇すると報告されています。

とはいえ、アポリポたんぱくE4型の持ち主全員が将来アルツハイマー病になるわけではありません。認知症の発症は体質や遺伝だけでなく、生活や環境も大きく作用するので、早期に症状が出る人もいれば、一生発症せずに過ごせる人もいます。

認知症予防には、高血圧や高血糖の治療をする方が賢明

最近では、アポリポたんぱくE4型の有無を調べて認知症の危険度を推定する遺伝子検査がありますが、私としてはあまりおすすめしていません。こうした検査は費用が高額なうえに、仮にアポリポたんぱくE4型遺伝子が見つかっても、認知症の予防・治療の方法が確立されていないので有効な予防法に直結するわけではないからです。

それよりも、認知症を防ぐなら、高血圧・高血糖・脂質異常症などを治療し、脳の動脈硬化の予防に努めたほうが賢明といえます。

脳血管の老化は、アミロイドβの蓄積を促し、認知機能の低下に直結すると考えられます。そのため、遺伝を過度に気にするよりもバランスのいい食生活や運動習慣などを心がけ、生活習慣病を予防するほうが、認知症対策には有効なのです。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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