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首が痛む【頸椎症】は治せる!医師考案「うなじ伸ばし」で神経の圧迫を緩めよう

解説 竹谷内医院院長・整形外科医 カイロプラクター
竹谷内康修

「首が痛い」「肩がこる」「腕や手がしびれる」といった症状がある人は、頸椎症(けいついしょう)の可能性があります。
頸椎症は、頸椎(首の骨)の変形によって引き起される病気です。
この記事では整形外科専門医の竹谷内(たけやち)先生に、頸椎症の人におすすめの自力対策について解説していただきました。

頸椎症で悩んでいる人は、必ず整形外科で治療を受けてください。首は非常にデリケートな部位のため、医師の診断が欠かせません。その上で、改善策の一つにこの記事の治し方を試してみてください。

改善のために大切なことは脊柱管を広げること

「首・肩の痛み」や「手のしびれ」といった頸椎症の症状を改善させるうえで大切なことは、首の脊柱管(せきちゅうかん。脊髄が通っている背骨の空洞)や椎間孔(ついかんこう。脊柱管から神経が外に出るための穴)を広げることです。
首の脊柱管や椎間孔は、椎間板(椎骨の間に挟まっている軟骨)がつぶれたり、頸椎に骨棘(こっきょく。トゲ状の出っ張りのこと)ができたりして狭まります。

こうした頸椎の変形によって、脊髄や神経根が圧迫されて頸椎症の症状が引き起こされます。もともと、頸椎はとても変形しやすい部位の一つ。その理由は、頸椎の形状や構造にあります。

首を後ろに倒して痛む人は、脊髄や神経根の圧迫が原因?

病医院で頸椎症と診断された人はおわかりいただけると思いますが、あごを上げて頭を後ろへ倒す動作をすると、首・肩の痛みや手のしびれなどの症状が悪化します。このように、上を向いたときに症状が強まるのが、頸椎症の大きな特徴です。

人間の頸椎は本来、軽く前に突き出るようにそっています(前弯という)。つまり、頸椎の前側に対して、後ろ側のほうが狭まった状態になっています。

この状態から、頭を後ろへ倒す動作をすると、もともと前弯している頸椎に、さらに弯曲するように力がかかるため、首の脊柱管や椎間孔がより狭まります。
頸椎症の人の場合は、すでに狭まっている首の脊柱管や椎間孔がさらに狭まることで、脊髄や神経根が強く圧迫されるため、症状が悪化するわけです。

下を向くと頸椎症の症状が治まる?

これとは逆に、頭を前へ倒す動作をすると、頸椎にはどのような変化が起こるのでしょうか。

成人の場合、頭の重さは4〜5キロにもなります。この重い頭を前へ倒すと、うなじ(首の後ろ側)がグッと引き伸ばされます。同時に、もともと前弯している頸椎には、まっすぐになるように力が働き、脊柱管や椎間孔が広がります。
すると、脊髄や神経根への圧迫も改善され、痛みやしびれから解放されるのです。頸椎症の人が下を向くと痛みやしびれが和らぐのは、このためです。

また、圧迫されている神経などの周辺は血流が悪くなっていますが、頭を前に倒すことで圧迫がパッと解放されれば、血液がたくさん流れ込みます。血流がアップすることで、衰えていた神経の働きが活性化します。その結果、痛みやしびれといった頸椎症の症状が緩和・改善すると考えられます。

つまり、頭を前へ倒す動作をくり返して行い、脊柱管や椎間孔を広げるようにすれば、脊髄や神経根への圧迫が徐々に取り除かれる可能性があります。

頸椎症を改善しよう。脊柱管などを広げる「うなじ伸ばし」

脊柱管や椎間孔を広げるといっても、適切なやり方でないと成果は期待できません。反対に症状を悪化させてしまうことにもなりかねないので、注意が必要です。
頭を前に倒すと神経の圧迫が改善するという話をしましたが、ただ単に下を向くというわけではありません。下を向いただけでは、脊柱管や椎間孔がうまく広がらず、頸椎症の症状を緩和・改善する目的が果たせないのです。

では、頸椎症の人が脊柱管や椎間孔を広げるには、どうすればいいのでしょうか。
私の医院で頸椎症の患者さんに指導しているのは、イスを使って行う「うなじ伸ばし」という方法で、頭の重さを利用して行う点がポイントです(下記参照)。

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ふだんは頸椎を圧迫する重りになっている頭を、頸椎を引っ張るために利用するのです。頸椎の後ろ側がしっかりと広がるように、頭頂部を真下に向けて、さらに手で補助的に力を加えます。
こうすることで、前弯している頸椎がまっすぐになり、神経の圧迫がらくに取り除けるのです。

頸椎症の人は「うなじ伸ばし」の前にまずは病院へ

頸椎症を治すには、このように頸椎の前弯をゆるめて神経の圧迫を取ることが重要で、病医院では医療機器を使って脊柱管や椎間孔を広げる治療を行うこともあります。うなじ伸ばしは、そうした治療を自宅でもできないかと考えて考案しました。
とはいえ、病院でまずは治療を受けることは重要です。そのうえで、うなじ伸ばしを試してください。

頸椎症をよくする【うなじ伸ばし】のやり方

うなじ伸ばしのくわしいやり方については、下記を参照してください。
❶ 座面の高さが腰より低いイスを用意し、イスから少しだけ離れた位置に立つ。上半身を前方に倒し、ひじを直角に曲げて、ひじから先の部分を椅子の座面に置く。

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❷ ①の状態から背中を丸め、軽くアゴを引いて頭を下げる。足元か膝のあたりを見るようにする。
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❸ 痛みやしびれがあるほうの腕を垂れ下げ、反対側の手を後頭部に当てて、首が床と垂直に伸びるように手で頭を押さえる(写真は左腕や左手に痛みやしびれがある場合)。この状態を30秒間保ち、ゆっくりと頭を起こす。これを1回とし、3回を1セットとして、1日3セット行う。

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頸椎症のほか頸椎ヘルニアの人にもおすすめ

うなじ伸ばしを行えば、頸椎症による痛みやしびれが、早ければその場で改善します。また、続けていれば首の可動域(動かせる範囲)が徐々に広がっていくので、日常生活での不便さが改善され、QOL(生活の質)も向上します。

うなじ伸ばしは、頸椎症の中でも、特に神経根症(正式には頸椎症性神経根症という)の人や、頸椎ヘルニア(正式には頸椎椎間板ヘルニア)の人におすすめの手法です。ただし、うなじ伸ばしを行って、痛みやしびれが悪化した場合は、ただちに中止するようにしましょう。

また、高血圧や脳梗塞などの病気がある人は、主治医と相談後にうなじ伸ばしを始めてください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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