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バセドウ病や橋本病の予防・改善に役立つ栄養はセレン。甲状腺の機能が正常化?

解説信州大学名誉教授
辻井弘忠

バセドウ病や橋本病など甲状腺の病気の予防や改善に役立つとして、最近、注目を集めているミネラル(無機栄養素)があります。それは、セレンです。

今回の記事では、セレンの働きについて信州大学名誉教授の辻井弘忠先生に話をお聞きしました。

甲状腺の病気を抱えている人は、必ず専門病院で治療を受けることを忘れないでください。

甲状腺ホルモンの分泌を正常に導く

セレンが発見されたのは1817年のことでしたが、セレンが動物や人間にとって欠かせないミネラルであることがわかったのは、1957年に米国で行われた研究によってでした。その後、国内外で行われた多くの研究により、セレンが不足すると、ガンや心臓病などが起こりやすくなることが報告されました。甲状腺の病気も、セレン不足で起こる病気の一つです。

人間の体内の組織の中で最も多くのセレンを含んでいるのは、甲状腺です。セレンは、甲状腺の細胞や組織の中に、グルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素(体内の化学反応を助ける物質)の形で存在しています。

セレンを摂取することは、甲状腺ホルモンの活性化に役立ちます。甲状腺ホルモンの一つであるT4はもともとホルモンとしての活性が弱く、代謝(体内で起こる化学反応)されてT3に変換されることで活性化します。この甲状腺ホルモンがT4からT3に変換されるさいに、セレンが使われるのです。

さらに、セレンには、甲状腺ホルモンのT3が過剰に作用するのを抑え、甲状腺ホルモンの分泌量を調整して正常に導くという優れた働きもあります。そのため、甲状腺ホルモンが不足する橋本病ばかりか、過剰になるバセドウ病の場合もセレンの摂取は有効になるのです。

橋本病の原因抗体が約4割減少した

甲状腺とセレンの関係については、研究によって明らかになっています。

カナダ産のセレンの豊富な小麦を食べていた人が、ヨーロッパ産のセレンが少ない穀物に切り替えた研究では、セレンにより作られる酵素の活性低下に伴い、甲状腺ホルモンの分泌量も低下したことが報告されています。

また、甲状腺ガンの患者さん43人の血液と健康な人の血液を比較した研究では、甲状腺ガンの人のセレン濃度は、健常者と比べて明らかに低く、濃度が低いほど甲状腺ガンが増えていました。

さらに、橋本病の患者さんにセレノメチオニン(セレンを含むアミノ酸)を1日当たり200マイクログラムとってもらった結果、1年後に橋本病の原因となる抗体(抗TPO抗体)38.1%減少したという報告もあります。

セレンを多く含む食品

厚生労働省が策定した日本人の食事摂取基準2015年版では、30代以上のセレンの1日当たりの必要量は、女性で25マイクログラム(1マイクログラムは100万分の1グラム)、男性で30マイクログラムとされています。

セレンは、カツオや豚レバー、鶏卵、ヒジキ、生ガキ、玄米などに多く含まれますが、現代の日本人はセレンを十分にとっているとはいえない状況です。

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セレンはもともと土壌にあります。この土壌中のセレンを植物が吸収し、それを動物や人間が食べ、体にとり入れます。幸いなことに、日本の土壌中のセレンは多くも少なくもないため、病気になるほどのセレン欠乏を招く心配はありません。ところが、最近は海外の農産物がたくさん輸入されており、土壌のセレンが少ない地から輸入された野菜などはセレンが少ない可能性があります。

また、最近の日本人は魚をあまり食べなくなっているため、セレンの摂取量が少なくなっていると思われます。

こうしたことから、私はこれらの病気の予防のために、セレンの1日の摂取量は最低でも100マイクログラム、できれば200マイクログラムを目標にするべきと考えています(400マイクログラム以上とると過剰症が起こる場合がある)。食品だけから200マイクログラムとるのが難しいのであれば、サプリメント(栄養補助食品)を利用するのも、一つの方法です。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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