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【甲状腺とは何か】甲状腺の腫れやしこり、甲状腺の病気について専門の伊藤病院院長が解説

解説 伊藤病院院長
伊藤公一

甲状腺の病気というと、一般的にはあまり知られていません。
しかし、日本における推計患者数は500万〜700万人といわれ、高血圧や糖尿病に匹敵する国民病の一つともいえる病気なのです。

そんな甲状腺の病気について伊藤病院院長の伊藤公一先生に話をお聞きしました。
甲状腺の異常がある人は、必ず専門の医師に診てもらうことが何より肝心です。

甲状腺の位置、甲状腺の働き、甲状腺ホルモンとは

甲状腺は、首の前側の「のどぼとけ(甲状軟骨)」の下に位置する臓器です。蝶が羽を広げたような形をしており、すぐ後ろにある気管を取り囲むようにはりついています。

甲状腺イラスト-1.jpg

重さはわずか12グラム。軟らかくて小さいので、正常であれば皮膚の上からさわってもその輪郭などはほとんどわかりません。ところが、なんらかの異常があると、腫れたり硬くなったりして「しこり」を感じるようになります。
そのため、首が太くなったり、違和感を覚えたりして診察を受けたら、甲状腺の病気が見つかったという場合も少なくありません。

甲状腺は内分泌器官の中では最も大きく、生涯にわたり甲状腺ホルモンを分泌するという役割を担っています。

甲状腺ホルモンとは?

甲状腺ホルモンは、元気の源ともいえるホルモンで、体の代謝を活発にします。具体的には、
・脳や神経系の発育を促して思考を活発にする
・消化管からの糖の吸収を促す
・心臓の収縮力を高め心拍数を上昇させる
・肝臓に働きかけて血中コレステロール値や中性脂肪値を下げる
・骨や筋肉の発育を促し強化する
など、体のさまざまな器官・組織・細胞の機能を活性化させる働きがあるのです。

甲状腺ホルモン働き-1.jpg

また、甲状腺ホルモンは新陳代謝を高めて体を成長・成熟させる働きがあるので、子供の成長促進にもなくてはならないものです。

橋本病もバセドウ病も自己免疫疾患の一つ

甲状腺ホルモンは、以上のように重要な役割を担っていますが、分泌量のバランスが重要で、多すぎても少なすぎても体に害を及ぼします。そこで、いつも適度な量になるように調節しているのが、脳の下垂体と視床下部です。

下垂体からは、甲状腺ホルモンの合成・分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、視床下部からは、下垂体にTSHの分泌を促すTSH放出ホルモン(TRH)が分泌されます。つまり、甲状腺の働きは下垂体がコントロールし、その下垂体は視床下部からの指令を受けて働いているのです。

ところが、甲状腺に自己免疫の異常が起こると、甲状腺ホルモンが必要以上に作られたり、足りなくなったりすることがあります。

自己免疫の異常(自己免疫疾患)とは、簡単にいうと、免疫の働きに異常が起こり、自分の体の一部を異物とみなして組織や細胞を攻撃すること。代表的な病気には、慢性関節リウマチやクローン病などがありますが、橋本病やバセドウ病も自己免疫疾患の一つです。

甲状腺の専門医に診てもらおう

自己免疫疾患というと、「やっかいで治りにくい」というイメージを持つ人が多いようで、ときどき、甲状腺の病気は不治の病と誤解して悩む患者さんもいます。

しかし、実際には、そのようなことはありません。現在では、しかるべき専門医のもとで適切な治療を受ければ改善が望めるうえ、薬を減らしたりやめたりできるので、希望を持って病気と付き合うことが大切です。

なお、甲状腺の病気が疑われる場合は、甲状腺にくわしい専門医などに診てもらいましょう。全国的に見ても専門医は多くはありませんが、そのような場合は、かかりつけの医師に相談して、甲状腺の病気にくわしい医師を紹介してもらうのもいい方法です。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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