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【バセドウ病の人の運動】治療開始3ヵ月を目安に再開せよ(甲状腺専門の伊藤病院院長が解説)

解説 伊藤病院院長
伊藤公一

バセドウ病で甲状腺ホルモンが過剰な状態では、全身の代謝(体内で行われる化学反応)が活発になっているため、多くの酸素や栄養素を必要とします。
そのため、休んでいるときでも心臓をはじめ全身の活動が活発になって、運動をしているときと同じ状態になっているのです。

このようなときに激しい運動をすると、体への負担が大きくなりすぎるため注意が必要です。
この記事では、甲状腺の治療から運動再開までの目安について、甲状腺の病気専門の伊藤病院院長、伊藤公一先生に話をお聞きしました。

甲状腺の病気の人は、必ず専門医の治療方針に従って治療に努めてください。

激しい運動はさけ安静に努める

バセドウ病の患者によくいわれるのが「休んでいるときでも歩いている状態」「歩いているときでも走っている状態」「小走りしようものなら全力疾走と同じ状態」になってしまうということ。心臓はドキドキし、脈拍は安静時でも1分間に100~120にも達し、とても運動どころではありません。

また、甲状腺ホルモンが過剰な状態では、筋力が低下して足腰がだるくなります。ちょっとした坂や階段でも昇るのが大変になります。もちろん、走って昇ることなど不可能でしょう。

このようなときに無理に運動をすると、体への負担が大きくなりすぎます。特に、スキーや水泳、テニスなどの激しいスポーツはさけ、安静に努めるようにしましょう。

安静にして養生するというと、温泉での湯治を思い浮かべる人もいることでしょう。しかし、甲状腺機能が亢進しているときは、温泉は害になります。実は、バセドウ病の人にとって湯船に入る入浴は、運動と同じように体力を消費するのです。入浴の可否は、主治医に相談して決めてください。

ただし、バセドウ病の人は代謝が激しく、発汗も激しいものです。皮膚を清潔にしておくことは重要なので、シャワーを軽く浴びる程度は差し支えありません。

とはいえ、バセドウ病の人は寝て過ごせということではありません。日常の家事などは、無理のない範囲で続けてかまいません。会社勤めで外勤の人は、可能であれば一時的に内勤にしてもらったり、内勤の人は軽作業を中心にしたり残業を少なくしてもらったりすれば、体への負担が軽くなるでしょう。家事-1.jpgただし、制限すべき運動や仕事の範囲は人によって違うので、主治医と相談してください。

機能が戻ったら運動を再開しよう

このように、バセドウ病の人は激しい運動を控えることが重要ですが、筋力低下も起こしやすいので、全く運動をしないのも好ましくありません。服薬などの治療によって甲状腺機能が正常に戻ったら、徐々に運動を再開するようにしましょう。

抗甲状腺薬を飲めば、およそ1~2カ月で機能は正常になります。この時期になれば、日常生活には支障がありませんが、激しい運動はまだ無理です。

バセドウ病になると、筋肉も骨も衰えて、筋力や運動能力も落ちているので、軽い運動から慣らしていくようにします。ヨガ-1.jpgさらに1~2カ月たって、甲状腺の機能が正常な状態を維持できたら、本格的に運動を再開します。個人差はありますが、運動再開までの目安は3~4カ月と考えるといいでしょう。

中には、体力に自信がない、運動を再開するのをおっくうと感じる人がいるかもしれません。しかし、運動をしないままでいると、バセドウ病で衰えた筋肉や骨がいっそう衰えてしまい、骨折のリスクも大きくなります。あせらずじっくりと筋肉や骨の働きをもとに戻して、運動能力を取り戻しましょう。

橋本病で甲状腺機能が正常な場合は運動の制限はない

なお、橋本病でも甲状腺機能が正常な場合は、運動には特に制限はありません。

橋本病になると、体がだるく疲れやすくなることがありますが、むしろ積極的に運動することが望まれます。体に急な負担をかけないようにしながら、少しずつ運動量を増やしていってください。散歩やサイクリング、軽いストレッチなどの運動から始めるといいでしょう。

甲状腺機能が低下しているときは、激しい運動はさけたほうがいいです。甲状腺機能が正常になれば運動制限はありません。散歩-1.jpg

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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