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【専門医解説】副鼻腔炎って何?蓄膿症との違いは?好酸球性とは?原因・治し方がわかる鼻診断チャートつき

解説 きたにし耳鼻咽喉科院長
北西 剛

鼻水や鼻づまりで悩んでいる方、実はおおぜいいます。
口からしか呼吸できず、とても息苦しくてつらい思いをされている方が多いのではないでしょうか。

具体的にいうと、
●黄色い鼻水が止まらない
●鼻がつまって呼吸ができない
●ネバっとした鼻水でいやな匂いがする
●顔や目の奥が痛い
●頭痛がひどい

以上のような症状に悩まされている方は、もしかしたら鼻の奥に鼻水や膿(うみ)がたまった副鼻腔炎(ふくびくうえん)かもしれません。
年齢を重ねた方には、蓄膿症(ちくのう症)といった方がわかるのではないでしょうか。

カラダネ編集部でも「昔は薬局の壁に『こむら返り』『リウマチ』などと並んで、必ず『ちくのう症』と張り紙があった!!」と話題になりました。

鼻に症状がある人は、まずは耳鼻咽喉科の専門医で治療を受けてください。この記事では、副鼻腔炎とはどのような病気か、原因や対策とともに、重症の鼻水や鼻づまりを招くほかの病気についても、耳鼻咽喉科専門医の北西剛先生にお聞きしました。



副鼻腔とはいったいどこにあるのか?鼻腔とはどう違うのか?

鼻づまりや鼻水、クシャミは、誰にでも起こりうるありふれた症状です。
これらはカゼの症状として現れることが多いのですが、実はその裏に意外な病気が潜んでいることもあります。それは、ひと昔前まで「蓄膿症」と呼ばれていた「副鼻腔炎」です。

鼻の中は、主に鼻腔(鼻の穴の中)と副鼻腔から構成されています。

副鼻腔の場所と副鼻腔炎

paranasal-sinus.jpg副鼻腔は、一般的には上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)の全4種類で、左右で合計8つあります(もう少しくわしく分けると、8つ以上になります)。
いずれも鼻腔を取り囲むように位置しており、自然口という小さな穴で鼻腔とつながっています。

副鼻腔炎とは、文字どおり副鼻腔に炎症が起こり腫れた状態のこと。これは、細菌やウイルスに感染したり、花粉やダニなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が侵入してアレルギー反応が起こったりするのが原因です。炎症が起こると、鼻水や膿がうまく外に出せずにたまったり、発熱や頭痛、歯痛が現れたりします。

蓄膿症は、なぜ副鼻腔炎と呼ばれるのか?慢性と急性の違いは?

ところで、副鼻腔炎は以前は蓄膿症と呼ばれていました。これは、文字どおり、膿がたまる病気ということ。なぜ一般的な呼び名が変わったのかというと、薬での治療が進歩して軽症の方が増えたのが大きな理由です。

CT(コンピューター断層撮影)などの画像検査の普及により、副鼻腔に炎症が認められても膿がたまらないことがあるとわかってきたからです。そのため、今では膿がたまっていない場合も含めて、副鼻腔に炎症がある人は副鼻腔炎と呼ぶようになりました。

副鼻腔炎といっても、急性と慢性に分かれます。このうち急性副鼻腔炎は主に鼻カゼが原因で起こります。急性のうちなら、膿を吸引したり、症状に応じた薬を使うことなどで、多くの場合は改善に向かうのでさほど問題になることはありません。

注意しなければならないのは、慢性副鼻腔炎です。通常は、症状が3カ月以上続く場合に慢性副鼻腔炎とされます。

副鼻腔炎が慢性化するのは、
●副鼻腔と鼻腔をつなぐ自然口がふさがってしまうこと
●鼻水を排出する繊毛(細胞表面の細毛状の小器官)の働きが衰えること
などが原因と考えられます。

その結果、副鼻腔の中に病原体が増えて膿がたまり、その膿を排出できずに炎症がさらにひどくなる悪循環に陥るのです。
しかも、慢性副鼻腔炎になると、嗅覚障害や味覚障害が起こり、においや味がわからなくなることがあるので、患者さんの悩みはより深刻になります。

副鼻腔炎の人のCT画像

sinusitis-ct.jpg慢性副鼻腔炎の患者さんのCT画像になります。黒い部分が空気の通る部分。本来は黒く映るべき上顎洞(黄色の点線部分)や赤い矢印の部分が、膿や鼻ポリープ(鼻タケ)のせいで灰色に映っているのがわかります。

鼻タケができて早い段階で味覚障害を伴う「好酸球性副鼻腔炎」

近年、副鼻腔炎にかかる人は増えています。難病情報センターの統計によると、患者は約100万~200万人いるといわれ、このうち約20万人が慢性副鼻腔炎と推定されています。

もっとも、重症の慢性副鼻腔炎の人は昔に比べて減っていますが、その代わり再発をくり返す難治性の副鼻腔炎が増えています。特に急増しているのが、厚生労働省から難病に指定されている「好酸球性副鼻腔炎」です。

好酸球とは血液中にある白血球の一種で、本来はアレルギー反応を抑える働きを担っています。ところが、好酸球が過剰に活性化すると、副鼻腔に炎症が起こることがあるのです。

好酸球性副鼻腔炎は、左右の副鼻腔、特に篩骨洞に起こること。鼻タケ(鼻ポリープ)が多発して鼻づまりがひどくなり、早い段階で嗅覚障害に陥るといった特徴を持っています。

鼻タケとは

nasal-polyps.jpg鼻タケは、鼻腔や副鼻腔の粘膜が病的に腫れ上がることで発生します。場合によりステロイド薬の投与によって鼻タケを縮小させることは可能ですが、内視鏡手術で治療する場合もあります。

好酸球性副鼻腔炎の難点は、手術で鼻タケを除去しても再発をくり返すケースが多いことでしょう。そのため、長期にわたって根気強く治療を続けなければなりません。

中には、好酸球性副鼻腔炎であることに気づかず、通常の副鼻腔炎や花粉症と勘違いしている場合もあります。重症化すれば耳や目に合併症が起こりかねないので、早めに対処することが肝心です。

平均的な鼻水の分泌量はなんと毎日1〜1.5リットル!のどへと流れる後鼻漏で悩む人が多い

ここで、副鼻腔炎をはじめとする鼻の病気で悩む人が多い「後鼻漏(こうびろう)」について解説しておきましょう。

後鼻漏とは

post-nasal-drip.jpg通常、鼻水は毎日1〜1.5リットルも分泌されており、喉を潤すために鼻からのどへと、多くの鼻水、分泌物が流れていきます。これを後鼻漏といいます。

後鼻漏といっても鼻水がサラサラなら問題にはなりません。問題なのは鼻水の粘度が強くてネバネバしている場合。

ネバネバだと不快感や違和感が強く、場合によっては咳が続いて安眠できなくなります。後鼻漏は副鼻腔炎だけで起こる症状ではなく、花粉症、アレルギー性鼻炎、さらに上咽頭炎などでも起こります。

また、60代以上になると後鼻漏に悩む人が増えます。後鼻漏を改善させるには、鼻腔の粘膜の加湿と加温を心がけてください。生理食塩水で鼻腔内を洗う鼻うがいや、足湯で体を温めるのもおすすめです。

鼻水の状態やにおいの有無などで鼻の病気の正体を見つける診断チャート

これまで述べてきたように、鼻の病気は実にさまざま。たかが鼻水や鼻づまりなどと考えて、軽く見るのは禁物です。
ぜひ、そうした症状に悩んでいる人は、耳鼻咽喉科など専門医に早めに診てもらってください。病気を正確に見極めて、治療を始めることが重要です。

この下にみなさんの鼻の症状が、どのような病気の可能性があるかわかる鼻診断チャートを用意しました。ぜひ、ご自分の症状がどれに該当するか判断の参考にしてみてください。

副鼻腔炎(慢性・急性)

sinusitis-chart.jpg

好酸球性副鼻腔炎

eosinophilic-sinusitis-chart.jpg

アレルギー性鼻炎

allergic-rhinitis-chart.jpg

慢性上咽頭炎

chronic-on-pharyngitis-chart.jpg

服鼻腔真菌症

s_服鼻腔真菌症チャート.jpg

鼻中隔弯曲症

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この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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