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慢性腎臓病の透析生活を安心して暮らす裏ワザ|通院負担減の透析法やリハビリ法など

解説東京慈恵会医科大学教授
川村哲也

慢性腎臓病(CKD)のステージG5に該当する「末期腎不全」まで進行すると人工透析が検討されます。

人工透析とは、老廃物の排泄や水分・塩分の調節などの腎臓の働きを腎臓以外に代行させる治療法で、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。

今回は、透析生活を安心して暮らすための最新透析法や透析時のリハビリ法などについて、東京慈恵会医科大学教授の川村哲也先生に話をお聞きしました。

血液透析と腹膜透析とは

血液透析と腹膜透析について、図を用いて簡単に説明します。

血液透析

hemodialysis.jpg血液透析は、まずわかりやすく説明すると、体外に導き出した血液を、ろ過機能を持つ「ダイアライザ」という装置できれいにして(老廃物やナトリウム、カリウムなどを取り除く)、体内に戻すという治療法です。

では、くわしく説明しましょう。
血液を体外に出し入れするには、血液の出入り口を作らなければなりません。それを専門的に「バスキュラーアクセス」と呼びます。
バスキュラーアクセスを機能させるために、手術で腕の動脈と静脈をつなぐシャント(別のルート)を作る必要があります。それから、シャントの静脈側に針を刺して血液を体外に循環させて「ダイアライザ」へとつなげます。

ダイアライザには血液を導き入れる極細の透析膜の管が約1万本入っており、周囲には透析液が流れています。
透析膜には小さな穴があり、血液と透析液の濃度の差によって、分子量の小さな老廃物やナトリウム、カリウム、リン、水分が透析液側に染み出ていくのです。

1回の透析時間は4~5時間。それを週3回、医療機関に通院して行います。

日本の血液透析技術は世界一といわれており、きちんと治療を受けていれば尿毒症に陥らずに社会生活が営め、生存率も高いことが示されています。

一方で、通院に伴う時間的な制約が大きく、厳しい水分・食事制限が必要になるというデメリットもあります。
また、血圧異常・貧血・不整脈・高カリウム血症などの合併症が起こる危険も伴います。

腹膜透析

peritoneal-dialysis.jpg腹膜透析は、腹壁や内臓の表面を覆う「腹膜」を使って血液中の老廃物や塩分、余分な水分を除去する透析法です。

腹腔内に透析液を数時間入れておき、浸透圧を利用して血液中の老廃物や余分な水分を腹腔内の透析液側に移行させます。
その後、透析液を排出し、新しい透析液を入れます。これを1日4回程度くり返します。

透析液の交換は自宅でも行えるため、通院の負担は少なくてすみます。ただし、透析液の注入・排出を行うカテーテルを腹部に留置する手術が事前に必要になります。

腹膜透析は、血液透析に比べてある程度の尿量が保てるため、水分・食事制限が軽いというメリットがあります。
一方で、腹膜炎やカテーテル出口の感染などの合併症が起こる危険もあります。

自宅で透析ができる「在宅血液透析」

最近では、血液透析の時間的な制約を解消するものとして、医療機関から機材を借りて家庭で血液透析を行う「在宅血液透析」が登場しています。

在宅血液透析では、通院回数が減るほか、生活に合わせて透析時間・回数・タイミングを調整できます。水分・食事制限も大幅に緩められ、身体的・精神的負担が軽減されます。

ただし、在宅血液透析は無条件に導入できるものではなく、次のようないくつかの条件をクリアしなければいけません。

●患者さんに重い合併症がない
●透析中の状態が安定している
●本人の強い希望がある
●介助者が確保でき、導入に同意している
●患者さんと介助者ともに技術習得のための教育訓練が受けられる
●教育訓練の内容を習得する能力がある
●自己穿刺(自分で針を刺すこと)ができる
●透析を実施する部屋や材料の保管場所が自宅に確保できる

在宅血液透析の導入に当たっての流れを図を用いて説明します。

在宅血液透析の導入の流れ

home-hemodialysis.jpg患者さんと介助者が実施病医院へ来院し、面接や診察の結果をもとに適性が判断されます。
透析装置の設置や材料の保管などが可能か確認するため、看護師や透析技師が患者さんの自宅を訪問します。
患者さんと介助者が医療機関で、透析機器の操作法、穿刺(せんし)のやり方などの教育と研修を4〜8週間受けます。
最後に医師が総合的に導入の可否を判断し、可であれば透析装置や器具の無料貸与と設置が行われ、在宅血液透析が始まります。

なお、在宅血液透析は健康保険が適用されますが、機材の設置工事や電気代、水道代は自己負担となります。

在宅血液透析を実施している病医院はそれほど多くはなく、導入患者数も数百人程度と人工透析患者全体から見るとごく少数です。今後の広がりが期待される透析法ですが、導入を考える人は、まずは主治医に相談するといいでしょう。

人工透析を長期間続けることのデメリット

人工透析は、末期腎不全の治療の大きな柱として広く実施されていますが、一方で人工透析を長期間続けることによる悪影響も懸念されています。

長期間の人工透析では、腎臓で作られる造血ホルモンのエリスロポエチンが不足して、貧血が進行しやすくなります。
また、体内のたんぱく質が分解されやすくなって筋肉量が減少したり、腎臓で行われるビタミンDの活性化が滞って骨の衰えが起こったりします。

s_アトピー.jpgさらに、尿毒症に伴う低栄養や全身のかゆみ、こむら返りなどに悩まされることもあるほか、命にかかわる心不全の危険が大きくなる問題も指摘されています。

専門医がすすめる透析中に行う腎臓リハビリ

人工透析に伴う悪影響の軽減・改善を目的として、現在、ある取り組みが広まりつつあります。それは、血液透析を受けながらベッド上で軽い運動を行う「腎臓リハビリテーション(以下、腎臓リハビリ)」です。

以前は透析患者は安静が一番とされ、医師が運動をすすめることなど考えられませんでした。
それが、近年の研究で治療や体調の維持には安静は逆効果と示され、適度な運動の習慣が推奨されだしています。

しかし、仕事や家事に加えて透析治療で長時間拘束される患者さんの状況では、運動の習慣を持つのは難しいという問題がありました。
そこで注目されているのが、透析中に軽い運動を行うという方法です。これなら患者さんが運動を続けやすく、時間の節約にもつながります。実際、非透析日に医師らの監視下で運動を行うより、透析中に運動を行うほうが、継続率が高いという研究報告もあります。

腎臓リハビリテーション

kidney-rehabilitation.jpg透析中の腎臓リハビリでは、ベッドやソファの上で血液透析を受けながら、ペダル踏み運動器を用いた自転車こぎやストレッチ、ゴムバンドを用いた筋トレ、手・腕を動かす運動などを30分~1時間行います。
なお、米国スポーツ医学会では、透析低血圧の発症を防ぐため、運動は透析の前半に行うことがすすめられています。

こうした運動を行うと、たんぱく質の合成が促されて筋肉量の増加につながることが期待できるほか、リンなどの老廃物の透析除去効率が高まることもわかっています。

実際、海外の研究では、透析中に運動を行うことで、1回の透析時間を4時間から5時間にしたのと同程度の老廃物の除去効果が得られたと報告されています。
こうした効果が得られるのは、運動によって筋肉の血流が増加し、筋肉に多く蓄えられる尿毒素が洗い出されるためと考えられます。

また、合併症のかゆみや貧血の改善も期待できます。当然ながら、病状によっては透析中の運動が適さない人もいます。透析中の腎臓リハビリを試してみたい人は、まずは主治医に相談してみてください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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