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【実績ある難聴の手術】人工内耳が向く人・向かない人、費用、補聴器との比較、欠点も全解説

解説赤坂虎の門クリニック耳鼻咽喉科
熊川孝三

「耳が遠い」「聞こえが悪い」……そうした難聴の治療法の一つに、人工内耳という医療機器があるのをご存じでしょうか?
重度の難聴の方向けの医療機器で、装用することで「音が聞こえる生活」を取り戻せる可能性があるのです。

ここでは、人工内耳とはいったいどんな医療機器か、どのように装用するのか、費用はいくらかといったことについて、人工内耳の治療を長年続けてこられた赤坂虎の門クリニックの熊川孝三先生に話を聞きました。

難聴の人は、放置しないで必ず耳鼻咽喉科の専門医の治療を受けてください。さまざまな治療からみなさんにとってのベストな方法を、医師といっしょに選ぶようにしましょう。

人工内耳は難聴の有力な治療法として定着しはじめている

耳の中には、音の振動を電気信号に変換して脳に伝える「内耳(ないじ)」があります。
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内耳が障害され、「加齢性難聴(老人性難聴)」などの「感音難聴」を発症した場合には、治療法としてまずは補聴器の装用がすすめられます。

とはいえ、両耳の難聴のレベルが以下のような高度や重度に進行したら、補聴器を装用しても周囲の音や、相手の声はあまり聞こえなくなります。その場合は、人工内耳を検討することになります。

・高度難聴(70〜90dB未満。耳もとではっきりと話してもらえれば聞き取れる)
重度難聴(90dB以上。電話の呼び出し音が聞こえない)

人工内耳は、医療機器です。
体内装置(インプラント)を手術で内耳に埋め込んで、耳の周囲に体外装置(サウンドプロセッサ)をつけて、マイクロホンで拾った音を電気信号に変換して送信する人工聴覚臓器です。
以下の図は、人工内耳の構成の例です。
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現在、わが国では人工内耳手術が年間約1000件以上実施されています。すでに、難聴の有力な治療法として定着しはじめているといっても過言ではありません。

人工内耳手術は全国の大きな病院が中心

人工内耳は、難聴治療の有力な選択肢であるとはいえ、補聴器のことは知っていても、人工内耳のことを知っている人はそれほど多くないかと思います。人工内耳は装用のためには手術を要しますし、実施する医療機関は大学病院の耳鼻咽喉科をはじめとした、比較的大きな病院が中心ですので無理もありません。

また、街の小さな耳鼻咽喉科にかかっている方は、もしかしたら人工内耳の選択肢が患者さんに示されない場合もあるかもしれません。
以下に、人工内耳についてみなさんが疑問に思うであろうことを解説しますので、ぜひご理解をいただきたいと思います。

人工内耳はどんな手術をするの?かかる時間は?入院期間は?

人工内耳は、どんな患者さんにすすめられる?

前述したように、第一に人工内耳がすすめられるのは、平均聴力レベル(裸耳)が90dB以上(dBはデシベル。音の大きさの単位)の重度難聴の患者さん。つまり、補聴器を使っても聞こえがよくならない人です。
第二にすすめられるのは、平均聴力レベルが70dB以上90dB未満で、補聴器を装用しても最高語音明瞭度(語音明瞭度は言葉の聞き取りやすさの指標。60%未満で日常会話が困難)が50%以下の高度難聴の患者さん。これは、補聴器をかけても相手の話し声がはっきりと聞こえない人です。
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どちらも、対象は内耳が悪い感音難聴の患者さんに限られ、外耳から中耳の異常で起こる伝音難聴の人は適応になりません。

手術はどのように行われる?

人工内耳手術は、全身麻酔で行われます。耳介の後ろ側からインプラントを埋め込んで、電極を内耳の蝸牛内に挿入します。あとは、切開した傷口を縫合すれば手術は完了です。手術にかかる時間は2〜3時間が目安になります。

入院期間は?

患者さんによって変わりますが、おおよそ1〜2週間程度の入院が目安です。基本的には手術の翌朝から食事ができ、頭部の傷口がふさがれば退院できます。最近は、自然に溶ける糸(吸収性縫合糸)で縫合することが多く、抜糸をしなくてもいいケースが増えてきました。

入院期間はそれほど長くありませんが、平均的には2ヵ月前くらいから医師と言語聴覚士がチームを組んで準備を始めます。具体的には、患者さんへの人工内耳の説明、頭部のCTとMRI(磁気共鳴断層撮影装置)検査、体内に埋め込むインプラントの機種の選択などを行います。

手術後は、傷口が癒える2〜3週間後からサウンドプロセッサのスイッチを入れ、言語聴覚士によるマッピング(音の聞こえ方の調整)や、人工内耳の音に慣れるためのリハビリテーション(機能回復訓練)が行われます。

人工内耳の手術後、どうなる?

手術後、いつから音が聞こえるようになる?

サウンドプロセッサのスイッチを入れると、音は聞こえるようになります。聞こえ方も患者さんによって変わりますが、2〜3週間おきにマッピングやリハビリテーションをくり返すことで、少しずつ人工内耳の音に馴染んでいきます。

人工内耳に慣れて耳の聞こえがよくなったあとも、半年おきにマッピングの確認、再調整がすすめられます。

人工内耳を装用することで平均的には会話の約80%を聞き取れるようになり、慣れてくれば電話で通話することも可能です。言葉の理解としては、不自由のないレベルまで聴力が回復すると考えていいいでしょう。

リスク(後遺症など)はある?

人工内耳手術だけでなく、どのような手術もリスクはあります。人工内耳手術でリスクがあるとすれば、術後に一時的にめまい、耳鳴り、味覚障害、顔面マヒなどをまれに起こす人がいる点でしょう。

日常生活で不便なことはある?

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人工内耳のインプラントは丈夫にできているので、日常生活で制約を受けることはそれほど多くはありません。跳んだり、走ったりしてかまいませんし、手術した部位をぶつけなければスポーツをすることも可能です(サッカー・ラグビー・柔道・ヘルメットなしの野球はさける)。
最近はサウンドプロセッサを水から守るアクセサリも登場しており、装着することで雨に濡れたり、シャワーを浴びたりしても大丈夫です。

難聴コラム①(文責・カラダネ編集部)
人工内耳を検討するさい、気がかりなのは体内装置(インプラント)の信頼性でしょう。インプラントには、いくつかの種類がありますが、結論からいうと、どのメーカーのインプラントも故障はわずかです(とはいえ、違いはあります)。
また、古くからあるメーカーの場合、人工内耳の取り扱い期間が長いという点から、安心感を感じるという人も多いでしょう。一度装用すると、一生涯をともにする人工内耳ですからサポート面はとても大切です。

参考までに、2018年5〜6月にかけて、カラダネ編集部では人工内耳を装用している患者さん7人に話を聞きましたが、手術からなんと20年以上も問題なく使えている人が4人いらっしゃいました(他の3人は手術後20年以内でした)。

みなさんは日本で最初の人工内耳の手術で使用されたメーカーのインプラントでしたが、信頼性も含めた諸条件を考慮し、医師や言語聴覚士と人工内耳について検討してください。


装用後の懸念点はMRI検査を受ける場合についてです。現在、最も多く普及しているタイプのインプラントでは、1.5テスラのMRI検査ならそのまま受けられます。
しかし、3.0テスラのMRI検査を受ける場合は、外科手術でインプラントの磁石を外す必要があります。MRI検査の対応についてはインプラントの機種ごとに違うので、手術前に必ず確認してください。

人工内耳手術の費用は?保険適用は?障害者手帳は?

費用は?

人工内耳手術の総費用は約400万円(片耳)です。とはいえ、健康保険が適用され、高額療養費制度や心身障害者(児)医療費助成の申請ができるので、患者さんの実質的な自己負担は数万〜10数万円ですみます。
また、お住いの市区町村でも助成のある場合があります。役所でおたずねください。

手術後のリハビリテーションも健康保険の対象になります。ただし、サウンドプロセッサの予備バッテリーなどの消耗品は、全額自己負担で購入することになります。

障害者手帳の等級は変わる?

人工内耳を装用しても障害者手帳の等級は変わりません。というのも、人工内耳による聴力の改善は機器によるものであり、本来の内耳の働きが回復したわけではないからです。

補聴器との比較。人工内耳は万能ではない

補聴器との比較

補聴器は、音を大きくして音の振動を中耳に伝える医療機器です。それに対して人工内耳は、音を分析して重要な情報のみを電気信号に変換して、内耳に直接伝えます。
補聴器と人工内耳は、機械的な構造や患者さんへの適応基準が違うため、どちらがいいとは一概にいえません。

とはいえ、手術・リハビリテーションが不要な手軽さ、安全性の高さから、多くの難聴治療で補聴器が第一にすすめられます。補聴器の効果があるのは、外耳や中耳に原因がある伝音難聴や、軽度・中等度の感音難聴です。補聴器が有効なうちは使いつづけたほうがいいでしょう。
国の補装具費支給制度を利用すれば、1割の自己負担(数千円〜数万円)で補聴器を購入できます。経済的負担が軽いことも、補聴器の利点といえるでしょう。

人工内耳に満足できない人もいる?

人工内耳で聴力が改善できるというのは、本当に素晴らしいことです。とはいえ、人工内耳ですべての方が満足できるわけではありません。
具体的には、「以前に聞こえていた音とは違うので違和感がある」「人がたくさんいる場所だと相手の声を聞き取れない」といったことを感じる人がいます。

聞こえのよし悪しは、マッピングやリハビリテーションである程度は改善できますが、人工内耳を装用したからといって健聴者と全く同じように聞こえるわけではありません。人工内耳は万能の医療機器ではありませんので、その点はご理解ください。

難聴コラム②(文責・カラダネ編集部)
人工内耳を希望する人は、手術を受ける前に患者会へ参加してアドバイスを受ける方法もあります。人工内耳の患者会には、医療機器メーカーが主催する組織のほか、「一般社団法人 人工内耳友の会 ACITA(あした)」などがあります。


最後に、人工内耳はどんどん進化しており、聞こえが極端に悪い難聴の人でも、大切な家族と会話ができたり、雄大な自然の音を楽しめたりするといった点においては、装用のメリットが非常に大きい医療機器です。
実際、これまでに人工内耳手術を行った患者さんも、すでに大きな満足感を得て生活を楽しんでおられる人がおおぜいいます。人工内耳が適応になる人は、ぜひ一度、主治医の人と相談し検討してみることをおすすめします。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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