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難聴の予防・改善に役立てたい【セルフケア8選】と難聴の【病院・治療法】の選び方

解説川越耳科学クリニック院長
坂田英明

難聴は自分で気づきながらも、放置されやすい病気といわれます。

なぜなら、耳が遠くても、目の障害(老眼をはじめとした視力低下・視野狭窄あるいは失明)などに比べたら「日常生活にはたいして困らない」と考える人が多いため。
また、年を取ることで起こる加齢性難聴(老人性難聴)には、「耳の聞こえの悪さ=老化現象」の側面があります。たとえ難聴であると自覚しても、「老化だからしかたない」といってあきらめる人が多いのです。

しかし、それは危険かもしれません。難聴の怖さについて、そして難聴の人はどうすべきかについて、専門医の坂田英明先生に話を聞きました。

難聴は認知症やうつ病のリスクを高める可能性も

まず初めに、難聴を放置してはいけません。なぜなら、治療が遅れると難聴は悪化の一途をたどり、単に「耳が遠い」「音が聞こえない」だけではすまなくなる可能性があるからです。

外界から入る音の刺激が乏しくなると、常に音の情報を処理している脳への刺激が減って、認知力が低下したり、うつ的な気分に陥ったりします。特に、加齢性難聴の人は、認知症やうつ病のリスクが大きくなる可能性があります。

難聴になると寿命が短くなる可能性も国内外の研究で指摘されています。
例えば、群馬県高崎市の倉淵地区で行われたコホート調査(住民の体質や環境、生活習慣を調べ、その後、病気の発症の関連性を調べる研究調査)によると、難聴のある男性は、難聴や視力障害のない人に比べて死亡率が3.10倍も高いと明らかになりました。

また、アイスランドの住民4926人を調べた研究では、視覚障害と難聴が両方ある人は、死亡率が1.43倍高くなるという結果が出ています。視力障害だけの人の死亡率は、健康な人と大差がなかったので、難聴が死亡率を高める要因になったと推察されます。
さらに、難聴だけある人の場合、心臓病や血管病の死亡率が1.70倍も高くなるという結果が出ています。

ほかにも、難聴になると交通事故や転倒によるケガを招く可能性もあります。くり返しますが、元気で長生きしたいなら、難聴の人が何も対策せずに「聞こえにくい状態」「耳が遠い状態」を放置するのは、リスクがあまりにも大きすぎます(記事はお知らせの下に続きます)

難聴のセルフケア7選〜水分補給法、生活法、睡眠法など〜

難聴の患者さんの中で、特に多いのは加齢性難聴の人です。
加齢性難聴は、病院での治療に加えて自分でできる予防策や改善策(セルフケア)も重要です。ここでは7つのセルフケアについて解説しますが、以下、文中には聞こえのしくみにかかわる「内耳(ないじ)」といった単語が出てきます。
内耳の位置など下の図で確認し、耳の構造を理解しながらお読みください。
s_耳の構造.jpg

●聞こえのしくみ
空気中を伝わってきた音は耳介に集められ、外耳道を通じて鼓膜を振動させます。次に、その振動が中耳にある耳小骨から内耳へと伝わり、内耳の蝸牛(かぎゅう。カタツムリの形)の中を満たしているリンパ液を揺らします。リンパ液とともに蝸牛の中の有毛細胞が電気信号を発し、脳へと伝わって音として認識されます。

難聴セルフケア❶緑茶やコーヒーの飲み過ぎは控えよう

緑茶や紅茶、コーヒーにはカフェインが含まれます。カフェインは、内耳の異常興奮を引き起こす可能性があり、耳の健康のために私は推奨しません。飲み物はノンカフェインのものを選んでください。

難聴セルフケア❷毛染めはヘナや海藻成分のものを使う

毛染め(白髪染めなど)で問題なのは、有機溶剤が入っているものです。アニリン色素の誘導体が、頭皮から脳に染み込むと耳の働きをコントロールしている前庭小脳に悪影響を及ぼし、難聴の原因になる可能性があります。
有機溶剤ではなく、ヘナ(ハーブとしても使われる植物で染毛め剤の原料として人気)や海藻などの天然素材で作られた毛染め剤を使うのなら大丈夫です。

難聴セルフケア❸タバコをやめる

タバコの煙に含まれるニコチンは血管を収縮させるため、内耳が血行不良に陥りがちになると考えられます。そのため、耳のためにはよくありません。

難聴セルフケア❹ペンキや接着剤のにおいはかがない

塗料(ペンキなど)や接着剤、シンナーなどのにおいをかいで中毒症状になると耳に悪影響が及ぶ可能性があります。仕事で使う必要がある場合、換気をしっかりと行い、専用マスクを着用してください。

難聴セルフケア❺カラオケを控える。ヘッドホンにも注意

耳が騒音に長時間さらされると、音響外傷といって内耳が傷害を受けることがあります。難聴の予防や改善のためには、カラオケ店やライブハウス、パチンコ店、ゲームセンターなど大音量が流れる場所には必要以上に行かないでください。また、イヤホンやヘッドホンで音楽を聴くのはおすすめできません。
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難聴セルフケア❻ストレスを減らす。睡眠が重要

ストレスが増えると自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)の一つである交感神経(体を活動的にする神経)の働きが過剰になり、内耳に悪影響が及びます。
睡眠を十分にとってストレスを減らし、副交感神経(体を休ませる神経)を優位にすることが大切です。深夜0時前に就寝する、決まった時間に起きて朝日を浴びるなど、生活のリズムを整えてください。

難聴セルフケア❼頭痛や口内炎の対策をしよう

頭痛・耳痛・口内炎が何度も起こる人はヘルペスウイルスに感染している可能性があり、それが難聴に関与している場合が考えられます。

特に、帯状疱疹(たいじょうほうしん)や水疱瘡(みずぼうそう)にかかったことのある人は体内にウイルスが残っている恐れもあります。それらが免疫力(病気から体を守る力)の低下で再活性化し、難聴の原因になる場合があります。
心当たりのある人は、規則正しい生活を心がけ、免疫力を下げない工夫が大切です。

難聴のセルフケアでもう一つ(8つめ)実践していただきたいことがあります。重要なことなので、記事の最後に解説します。

難聴の人の病院の選び方。選ぶポイント4つ

ここからは、難聴の人の病院選びや治療法について解説します。まずはじめに、難聴の人は放置せずに必ず病院で治療を受けることが最も重要です。

次に病院選びですが、耳の聞こえにくさを自覚したら、みなさんは近くの耳鼻咽喉科を受診すると思います。もちろん間違いではないのですが、病医院を選ぶ基準で知っておきたいポイントがあります

というのも、耳鼻咽喉科の診療範囲は耳や鼻、のどと幅広く、必ずしもその医師が難聴治療に精通しているとは限りません。精通していない病院(医師)の場合、適切な診断や治療が遅れてしまうことになりかねないからです。
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そこで、次の点を病医院選びのポイントにしてみてください。
●語音明瞭度(ごおんめいりょうど)検査を行っているか?
語音明瞭度(言葉の聞き取りやすさの指標。60%未満で日常会話が困難)は、難聴の度合いを調べたり、補聴器を調整したりするうえで重要な指標です。難聴の治療を行うに当たって、聴力検査のほかに語音明瞭度検査を行うことが必要になります。

●人工内耳をはじめ、治療の選択肢を幅広く知っているか
例えば、高度難聴・重度難聴に進行すると、補聴器だけでは耳の聞こえをカバーできなくなり、人工内耳手術が検討されます。とはいえ、もしも人工内耳についての理解が少ない病院では、選択肢になりえないかもしれません。もちろん、この点は人工内耳だけでなく薬についても同じですが、あらゆる治療法の選択肢を知っている病医院を選ぶことは重要です。

●言語聴覚士はいるか
言語聴覚士は、言語障害や聴覚障害を持つ患者さんを支援する国家資格のスペシャリストです。訓練、指導のほか、補聴器や人工内耳の調整も行います。

●補聴器相談医はいるか
補聴器相談医は、患者さんが自分に適した補聴器を選べるようにアドバイスする専門医です。日本耳鼻咽喉科学会の認定医で、難聴の治療と深いかかわりがあります。ほかに、騒音性難聴担当医といって、産業医などの依頼で騒音性難聴を診断・管理する日本耳鼻咽喉科学会の認定医もいます。
こうした担当医がいる耳鼻咽喉科も、難聴の治療に強みがあると判断していいでしょう。

受診を希望する耳鼻咽喉科に電話し、上記の4つを質問してみてください。全条件を満たしている必要はありません。せめて語音明瞭度検査を行っており、補聴器や人工内耳への知識が深い病医院を、ひとつの耳鼻咽喉科選びの基準として考えてもよいかもしれません。

難聴コラム①市中の補聴器店について
難聴の人の中には、初めから耳鼻咽喉科へ行かずに、市中の補聴器専門店(眼鏡屋さんに併設されている場合もある)へ行く人もいますが、それはおすすめできません。専門医の検査を受け、聴力や語音明瞭度がどれくらいのレベルなのか、難聴の原因は何なのかを確かめなければ、治療はできないからです。
補聴器専門店の多くは良心的ですが、中には必要以上の高額商品を契約させられたり、購入後にトラブルになったりする場合もあるので(実際にそうした苦情が国民生活センターにあるようです)、とにかく信頼できるお店を選んでください。


突発性難聴のように、ある日突然、耳が聞こえなくなった場合は緊急性が高いので、比較的規模が大きい総合病院を受診するよう心がけましょう。

病院での難聴の治療法。3つの柱がある

病院で行われる難聴の治療について解説します。
まず最初に知っていただきたいのは、難聴には種類があり、原因もさまざま。よって、治療にもいくつかのパターンがあります。

難聴コラム②難聴の種類とは?
耳のどこに障害があるかによって難聴は主に4種に分かれます。
① 伝音難聴…外耳から中耳にかけて障害がある
② 感音難聴…内耳から脳にかけて障害がある(加齢性難聴を含む)
③ 混合性難聴…伝音難聴と感音難聴の混合
④ 機能性難聴(心因性)など
くわしくは一番下の関連記事をご覧ください。


一般的にいうと、難聴の治療法には以下の3つの柱があります。
①薬による治療
②手術(鼓室形成術や人工内耳など)
③補聴器の装用
それぞれについて順番に解説します。

難聴治療で用いる薬とは?

難聴の治療で薬を用いる場合、ステロイド薬(商品名はプレドニン錠など)、ビタミンB12製剤(商品名はメチコバール錠など)、血流改善薬(商品名はアデコスホーワ腸溶剤、カルナクリン錠など)などが用いられます。

また、中耳炎や外リンパ瘻、メニエール病など難聴の原因になっている病気があれば、その病気に対する薬物療法、手術療法も並行して行われます。

通常、薬というと飲み薬をイメージする人が多いと思いますが、注射もあります。私は、突発性難聴の人に、鼓膜から中耳腔にステロイド薬を注射する「中耳腔(ちゅうじくう)注入療法」を行っており、効果を上げています。

難聴手術の目的は主に2つ。感音難聴で重症なら人工内耳を

手術については、難聴の原因となっている原疾患(もともとある病気のこと)の治療が目的の場合と、人工内耳の埋め込みを目的とする場合の2種に大別されます。

真珠腫性中耳炎と耳硬化症に有効な手術

原疾患の手術で聴力の回復が期待できるのは、伝音難聴です。具体的には、鼓膜の内側を再建する「鼓室形成術(こしつけいせいじゅつ)」、内耳に音の振動を伝える耳小骨の一部(アブミ骨)を人工骨に置き換える「アブミ骨手術」などが行われます。

鼓室形成術は真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)による難聴、アブミ骨手術は耳硬化症(じこうかしょう)による難聴の改善に有効です。

難聴コラム③真珠腫性中耳炎とは?耳硬化症とは?
真珠腫性中耳炎とは、慢性中耳炎の一種。鼓膜(こまく)の一部がへこみ、そこに耳垢(みみあか)などがたまって真珠のような白い塊ができる病気のこと。
耳硬化症とは、耳小骨の一つであるアブミ骨底が固着する病気のこと。内耳に振動が伝わらなくなり、難聴を招きます。

感音難聴で重症の人は人工内耳を

感音難聴では、重症の人の場合は「人工内耳手術」が選択されます。人工内耳手術とは、体内装置(インプラント)を埋め込んで内耳に電極をつなぎます。そして、体外装置(サウンドプロセッサ)を装着し、そのサウンドプロセッサで拾った周囲の音を電気信号に変換して内耳に送信します。

手術で体内装置を埋め込んだら、サウンドプロセッサの調整と聞き取りのリハビリ(機能回復訓練)をすることで、聴力を取り戻します。

補聴器が有効な人とは?

難聴治療の3本めの柱である「補聴器の装用」は、伝音難聴や感音難聴といった種類に関係なく、一定の聴力が残っている人には有効な治療法です。
聞き取りの調整(フィッティングという)がうまく行った補聴器を装用できれば、聴力が一定レベルまで上昇します。

ただし、感音難聴で、高度難聴(70〜90dB未満。耳もとではっきりと話してもらえれば聞き取れる。dBは「デシベル」で音量の単位)や重度難聴(90dB以上。電話の呼び出し音が聞こえない)まで悪化したら、補聴器でも聴力は十分に改善しません。その場合は、人工内耳をはじめ別の治療を検討します。
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難聴コラム④世界規模で人工内耳を選ぶ人は増加傾向に
日本では、人工内耳手術を受ける人は増えており、年間約1000件実施されています。補聴器で聞こえる人は問題ないのですが、補聴器を装用している人の中でも、「何度もフィッティング(調整)しているがよく聞こえない」という人がいるのも事実。
そうした人は、補聴器のフィッティングの技術が低いためか、実際には補聴器では聞こえない聴力レベルかの、どちらかの可能性があります。病院を変えるなどして、正しく診断をしてもらってください。
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人工内耳の体内装置(イラスト)。小型化が進んでいる

人工内耳は、40年前に世界で初めて実用化に成功した医療機器で、今や難聴の新しい治療法として確立され、世界で装用者が増えています。
人工内耳の進化はめざましく、2018年現在の体内装置(インプラント)の世界最薄タイプは本体の厚さが3.9ミリまで小型化されています。そのため手術は患者さんの体への負担が軽い低侵襲であり、埋め込み部位は目立たずにすみます。
人工内耳手術は、インプラントを埋め込むだけなので、鼓室形成術などの手術に比べたら技術的に簡単です。老人性難聴が進行し、補聴器を使っても聞き取りがうまくいかない人は、人工内耳に精通した医師に相談してください。

難聴のセルフケアで最重要は「訊く姿勢」

最後に、難聴セルフケアでみなさんに実践していただきたい8つめがあります。
それは、「積極的に外出し、耳をよく使う」ということ。難聴になると人付き合いが苦手になって自宅に引きこもるケースが少なくないのですが、それでは聴力が低下する一方です。

そこで、外出して町中の雑踏に耳を澄ましてください。
受動的に「聞く(聞こえる)」という姿勢ではなく、同じ読み方をする漢字でも、自分から聞き耳を立てて「聴く(きく)」や、尋ねて「訊く(きく)」といった能動的な姿勢が重要です。
その姿勢こそが、耳の機能を維持するのにはとても重要です。

音は感動を与えてくれます。人生を豊かにしてくれます。大好きな家族の話し声、自然が奏でる雄大な音、芸術的な音楽……いつまでも音の感動を失わないために、訊く姿勢を持って耳の衰えを防ぐ、聞こえが悪い人は改善の努力をするなど、今すぐできることから試してみてください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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