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重症の股関節痛セルフ運動【股関節スイング】のやり方。股関節の可動域を広げよう

解説 竹谷内医院院長
竹谷内康修

歩いたり立ち上がったりするときに痛みが走る変形性股関節症。股関節痛といったほうが、みなさんにはわかりやすいでしょうか。

痛みが強いと日常生活にも支障があります。そこで、今ある股関節の痛みを改善させるセルフケアがないかを竹谷内医院院長で整形外科医の竹谷内康修先生に教えてもらいました。

竹谷内先生が考案したセルフケアを実践して、痛みが減った、歩きやすくなったと感激する股関節痛患者さんはおおぜいいます。ぜひ、試してみてください。

痛みがあっても安全にできる「股関節スイング」

股関節が痛む人は、股関節まわりの筋肉を柔軟にすることが大切です。しかし、痛みが強い人は、股関節まわりのストレッチを行おうとすると、痛みが悪化することも考えられます。

そこで股関節が激しく痛む人の場合は、まずは痛みを取ることが重要です。そうした人におすすめしたい運動が「股関節スイング」。

股関節スイングは、股関節の痛み取り効果が高く、しかも即効性がある全く新しい運動として私が考案した方法です。

変形性股関節症になると、股関節に負担がかかって股関節のすき間(寛骨臼と大腿骨頭のすき間)が狭まって、軟骨が激しくこすれ合ってすり減ってしまい、炎症が起こります。
また、運動不足で股関節を支える筋肉も硬直し、股関節のすき間がますます狭まります。

股関節の炎症を防ぐには、まずは股関節のすき間を広げて圧迫を取り除き、軟骨や骨がこすれ合わなくすることが肝心。そこで、私が考案した運動法が股関節スイングで、その名のとおり、痛みのある側の足をスイング(振ること)させる運動です。

股関節スイングは、もともと、ひとりでもできる牽引療法(首や腰などを引っ張って痛みを改善する保存療法)として考案しました。足を牽引することは自分ひとりではできませんが、股関節スイングなら道具もお金も使わずに股関節を引っぱることができます。家族の人に足を引っぱってもらう方法もありますが、引っぱる力の強さの判断は、熟練した人でないと難しいものです。

その点、股関節スイングなら、自力ででき、しかも力加減を気にする必要もありません。単純で誰でもできる簡単な運動で、股関節にも負担をかけないため、股関節が強く痛む人や体力に自信のないお年寄りでも、無理なく行うことができるのです。

股関節のすき間が広がり圧迫が取れる

股関節スイングで足を振ると、足の重さに加えて遠心力(この場合は足を下向きに引っ張る力)も働いて、股関節に強すぎず弱すぎない、ちょうどいい力がかかります。

その結果、股関節のすき間が無理なく広がり、圧迫が取り除かれて痛みが解消します。そして、軟骨や骨がこすれ合わなくなることで炎症も抑えられ、症状が改善していくのです。

また、股関節スイングを行うと、筋肉や関節包(関節を覆う膜)の硬直が解消して、関節への圧迫が和らぐ効果も期待できます。
股関節の周囲は、関節包で覆われています。関節包はわずかに伸び縮みしますが、股関節痛の人の場合、関節包が硬直していることが多いようです。

痛みで股関節を動かさなくなると、しだいに股関節周囲の筋肉が硬直し、それに伴って関節包も縮まります。そうすると、股関節のすき間が狭まって軟骨が激しくこすれ、すり減ってしまうのです。

股関節スイングは、こうした関節包や筋肉の硬直の解消に優れた効果を発揮します。足を振って股関節に無理のない負荷をかけることで、股関節を支える筋肉が刺激され、血流が促されて硬直が取れてくるのです。

筋肉が柔軟になるにつれて、関節包も伸びるようになります。こうした理由から、股関節スイングをやれば、股関節のすき間が広がるとともに、股関節の可動域も徐々に広がっていくというわけです。さらに、股関節スイングは、関節包で覆われた内部にも影響を及ぼします。
関節包の内部には、滑膜という組織があり、そこから絶えず関節液が分泌されています。股関節スイングで関節包の硬直を取り除けば、滑膜が活性化し、関節液の分泌量が増えると考えられます。関節液には関節の動きをスムーズにする働きがあるので、分泌が活発になることで股関節が動きやすくなるのです。

股関節スイングのやり方

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  1. 痛くない側の足を段差(高さ10cm程度)に乗せ、イスの背や壁に手を添えて支える。
  2. 痛い側の足を腰や股関節を曲げないように前に振り、次に後ろへ振る。上半身は体が常に一直線になるように、足にあわせて前に振るときは後ろに傾け、後ろに振るときは前に傾ける。

足は大きく振りすぎると、バランスを崩したり股関節が曲がって痛みが増したりする可能性があるので、注意してください。足を振る角度は、前へは20~30度、後ろへは10~20度程度がいいでしょう。

行う時間は1分程度が目安。もし1分間行うのがつらい場合は、30秒程度でもかまいません。1日に朝・昼・晩の3回行うことをおすすめしますが、痛みが出てきたときにもすぐに行ってください。即効性があるので、その場で痛みが軽くなることが期待できます。

股関節スイングを毎日続けていると、1週間〜1カ月で股関節痛の改善が実感できるでしょう。実際に、私が股関節スイングを指導した患者さんの中には、人工股関節を入れる手術を回避できた人もいます。
ぜひ、試してみてください。

記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/©カラダネ

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