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泌尿器科医が解説【閉経後の尿漏れ】大豆食が予防の一助になるかも
関口由紀
50代以上の女性は、尿漏れで悩む傾向があります。
これには女性ホルモンの減少が関係しているとされ、閉経後に発生しやすい症状の一つでもあります。
尿漏れを抱える人は、「恥ずかしくて人に相談しづらい」「尿漏れしてしまうのではないか」と思って、外出が億劫になってしまうなど、憂鬱な気持ちになってしまうことも少なくありません。
この記事では、尿漏れと関わりのあるホルモン「エストロゲン」について解説します。また、エストロゲンに似た働きがあるといわれる、おすすめ食材「大豆」についても解説しますので、毎日の食事でとり入れてみてください。
女性ホルモンが減ると骨盤底筋群が衰える?
女性は、50代前後に閉経を迎えるころから尿漏れで悩む人が急増します。
閉経とは、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌量が激減すること。女性ホルモンが急に減ると、イライラ感や疲労感、ほてり、頭痛、めまいといった更年期障害のさまざまな不快症状が発生します。閉経後に現れる尿漏れも、更年期障害が原因で現れる典型的な症状の一つです。
女性ホルモンは、その名のとおり女性らしい体型を保つために必要なものです。つややかな髪、弾力や張りのある肌、しっかりとした骨を保つために女性ホルモンは欠かせません。
ひと口に女性ホルモンといっても、いくつか種類があります。中でも尿もれとかかわりが深いのは、エストロゲン(卵胞ホルモン)です。このエストロゲンは本来、卵子の生育を助ける役割を主に担っています。それに加え、全身の新陳代謝(古いものと新しいものの入れ替わり)を盛んにしたり、たんぱく質の一種であるコラーゲンの合成を助けたり、精神を安定させたりする働きがあるのです。
尿漏れとのかかわりについていうと、エストロゲンが減ることは骨盤周辺の筋肉の張りや弾力を低下させる原因になります。その結果、尿道を締めたりゆるめたりする骨盤底筋群が衰え、無意識のうちに尿漏れが起こるのです。
また、エストロゲンの分泌量が減少すると、尿道や腟の血流量も減り、膀胱粘膜や腟粘膜の新陳代謝が衰えて乾燥します。そのため、粘膜組織が萎縮・硬化して尿漏れを招きます。
そのほか、エストロゲンが急減すると気分がウツっぽくなって不安が強くなります。膀胱や尿道の機能は精神面から影響を受けるので、これも閉経後の女性に尿漏れが増える原因といえるでしょう。
大豆イソフラボンは女性ホルモンと化学構造が似ている
閉経後のエストロゲン不足を補うためにおすすめなのが、大豆食品を積極的に食べること。
大豆に多く含まれているイソフラボン(植物の色素化合物の一種)は、エストロゲンに化学構造が似ており、女性ホルモンの代役として働きます。毎日の食事で大豆が原料の豆腐、みそ、納豆、豆乳などを積極的にとれば、エストロゲン不足が補われて尿もれの改善に役立つでしょう。
1日に豆腐なら一丁、納豆なら2パックを食べよう
ちなみに、閉経した女性は、1日当たり70~75ミリグラムのイソフラボンを摂取することがすすめられます。この量は、豆腐なら絹ごし300グラム(1丁分)、納豆なら100グラム(2パック分)で補えます。この量を一度の食事で食べるのは大変です。毎食、大豆食品をこまめにとるといいでしょう。
もちろん、尿漏れが大豆を食べるだけで必ずよくなるわけではありません。あくまでも予防の一助として考えてください。
尿漏れがある人は、必ず専門医に診てもらうことが重要です。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/©カラダネ © Fotolia
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