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眼科医解説【白内障の基礎知識】まぶしい、かすむなど症状も白内障タイプも原因や治療法も全網羅

解説 中目黒眼科院長
杉本由佳

年齢を重ねると多かれ少なかれ、誰の体にも不調があらわれます。特に多い不調は、国民病と呼ばれる腰痛や高血圧など。とはいえ、実際は腰痛も高血圧も、日本人全員がかかるわけではありません。

日本国民のほぼ全員がかかってしまう病気、それはこの記事で解説する「白内障」以外はほぼないかもしれません。

年齢を重ねると、まぶしい、目がかすむ、物が二重に見えるなど、見え方の異常で悩む方が多いといわれますが、その原因のほとんどは白内障の可能性があります。
見え方に異常がある人、まずは眼科専門医の診断と治療を受けましょう。そのうえで自分でできるセルフケアも実践し、目にいい生活を送りましょう。

眼科専門医の杉本由佳先生に話を聞きました。



白内障の発症率は80代で100%? 世界の失明原因の第一位が白内障

白内障は、目の中の透明なレンズ「水晶体」が白く濁る病気です。
個人差はあるものの年齢を重ねれば誰もがかかる目の老化病で、早い人では40代から始まり、60代では約7割、70代では約8割、80代ではほぼ100%(諸説あります)が罹患するといわれています。
Cataract-chart.jpg
白内障にかかっている人の割合(年齢別グラフ)

白内障は老眼や乱視、近視のようにメガネで矯正できず放置すれば失明にもつながります。

Cataract/world.jpg日本では医療技術が整っていてすぐに手術できるため、白内障はそれほど怖い病気という認識がないようです。ところが、世界的に見れば白内障は失明原因の第一位であり、2010年の世界保健機関(WHO)の発表によると、白内障は全世界の失明原因のなんと51%を占めているそうです。

白内障は目でレンズの役割をする【水晶体】が白く濁る病気

白内障とはそもそもどのような病気なのか、少しくわしく説明しましょう。
冒頭で述べたように、白内障は目の水晶体が白濁する病気です。この水晶体は直径が11ミリ前後の凸レンズで、水晶体嚢(すいしょうたいのう)という透明の薄い膜で包まれています。

水晶体は、目をカメラに例えるとレンズに当たる部分。水晶体は、そのまわりの毛様体という筋肉の収縮と弛緩によって厚みが変化します。
近くを見るときには水晶体は厚くなり、遠くを見るときには薄くなってピントを調節します。そして、カメラでいうとフィルムに当たる目の網膜できれいな光の像を結びます。

白内障になると、本来は透明できれいなレンズの水晶体が濁ってくるため、下の図のように眼球に入る光が水晶体で散乱します。すると光がフィルムに当たる網膜へ正常に届かず、きれいな像を結べなくなるのです。
Diagram of cataract.jpg
白内障になった目の図。光が散乱している

白内障は水晶体の濁り方によって3タイプに分かれる

ちなみに白内障は、水晶体の濁り方によってタイプが分かれます。多くは水晶体の周辺部(皮質部)から白濁が始まり徐々に中心部に向けて広がっていくタイプで、これは皮質白内障(ひしつはくないしょう)といいます。
さらに、水晶体の中心部から濁るのは核白内障(かくはくないしょう)、水晶体の後ろ側から濁るのは後嚢下白内障(こうのうかはくないしょう)と呼ばれます。
中高年に最も多い白内障は、最初に述べた皮質白内障です。

白内障の症状は?視界がかすむ、まぶしいなど。老眼は実は白内障の初期

白内障の症状について解説します。筆頭は、なんといっても水晶体の白濁による「目のかすみ」ではないでしょうか。
白内障の初期は、人の顔がぼんやりかすんで眼鏡などで矯正しても物が見えにくくなります。

次に「視界がかすむ」「光がまぶしく感じる」といった症状が現れます。さらに進行すると、目の前にかざした手の指の数さえも判別できなくなります。
そして視力がどんどん低下し、「明るい」「暗い」しかわからない状態になる人もいます。
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どうも見え方がおかしい……白内障かも!?

ほかにも、「色の識別が困難になる(視界に黄色味がかかる人が多い)」「物が二重三重に見える」といった症状が現れるのも大きな特徴です。

最近では老眼の人は、すでに白内障が始まっているといわれます。老眼が白内障の初期症状というわけです。
老眼になると「暗い部屋で字が見えない」「乱視になった」「夜の交通標識が見えにくい」といった症状で悩む人がいますが、それは白内障の初期症状なのです。
Appearance of cataract.jpg

白内障で水晶体が白く濁る原因は「加齢」や「紫外線」。特に紫外線が強い国に多発

さて、水晶体はなぜ濁るのでしょうか。重大原因はなんといっても「加齢」です。最近の研究では、水晶体内のたんぱく質は年齢を重ねるごとに変質していくとわかってきました。

具体的にいうと水晶体を構成するたんぱく質は、年とともに新陳代謝(新しいものと古いものの入れ替わり)が衰えて酸化や変性(性質が変わること)します。すると、水晶体は分子の配列異常が進んで白く濁ってしまうのです。

s_Cataract-and UV.jpgさらに、水晶体が白濁する原因は日常生活の中にもあります。筆頭は、なんといっても日光の中に含まれる紫外線でしょう。
紫外線を浴びると水晶体が傷ついて、たんぱく質が変性します。それが白濁を進行させて白内障を引き起こすのです。実際、紫外線が強い赤道下の国では白内障の発症率の高いとわかっています。

糖尿病の人、スポーツで目に強い衝撃を受けた人にも白内障が多発?

白内障は、実は糖尿病の人に発症しやすいという特徴があります。
糖尿病の人の水晶体は、特殊な糖がたまって白濁しやすく、白内障の発症が早まる可能性があるのです。ほかにもアトピー性皮膚炎の人や、リウマチ・ぜんそくなどの治療でステロイド薬を長く使っている人も、比較的若い年齢で白内障を発症する傾向があるため要注意です。

さらに、スポーツなどで眼球に強い衝撃を受けた経験がある人も若くして白内障を発症する可能性があります。これは、眼球に強い衝撃を受けると水晶体を固定しているチン小帯という組織が弱ってしまうためと考えられています。

白内障の手術は、切開部分も小さく高性能の眼内レンズを入れる術式が主流

最後に白内障の治療について解説しましょう。病院で検査を受けて白内障と診断されると、治療法としては主に2つ。一つは点眼薬や内服薬。もう一つは手術です。

Cataract-eye drops.jpg点眼薬や内服薬は、白内障を改善させるというよりは、進行を遅らせる治療と考えてください。もちろん、誰にも効果があるわけではありませんので、眼科医の判断のもとで使うことになります。

最近の白内障治療は、手術がかなり一般的になりつつあります。これは、白内障の眼内レンズが非常に高性能のものがあることと、目の切開部分が小さくて体への負担も軽い新しい術式が確立されつつある点が大きいといえるでしょう。

白内障手術は、1時間以内に終わって日帰りできる場合が多く、健康保険も適用されることから症状が重い人は早めの手術がすすめられています。

白内障が進むと見え方の異常だけではなく、多くの悪影響が体に現れます。転倒しやすくなったり、交通事故を起こしたり、ウツや認知症といった病気を招いたりする場合もあります。
ぜひ、専門医に診てもらい早めに対処するようにしましょう。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。


写真/© Fotolia ©カラダネ

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