カラダネ(わかさ出版)
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ぬか床と暮らそう|手作りぬか漬けは「おいしい」「体にいい」「かわいい」
ぬか床と暮らす
「ぬか漬けを作っている」という話を聞くと、「体によさそう! 自分でもやってみたい」って思う人がいらっしゃると思います。
だけど、すぐにぬか床を腐らせてしまうのでは……という不安が先立ち、踏みきれないままの人が多いのではないでしょうか。
でも、それは取り越し苦労かもしれません。みなさんが思っているよりも簡単にぬか床はできるし、材料費もそれほどかかりません。
一度、ぬか床ができてしまえば、野菜をぬか床に押し込んで、かき混ぜればいいだけ。
かき混ぜさえ怠らなければ、すぐに〝けっこうおいしい〟ぬか漬けができるようになります。そのちょっとのお手入れを続けていくうちにぬか床が熟成し、〝すごくおいしい〟ぬか漬けが毎日食べられるようになるのです。
ぬか床のある暮らしは豊かです。ぬか漬けが1品加わると食卓の風景はちょっとにぎやかになりますし、さまざまな栄養が補えるので健康にもいい。ぬか床に愛着もわいてきて、お世話をするのが楽しくなってきます。
今の生活に何か足りない、と感じているなら、ぬか床と暮らしてみてはいかがですか。
解説:医師・料理研究家 河埜玲子
ぬかは「生きた食品」 そして「育てる食品」
最近、「ぬか漬けを始めました!」という人があちこちで増えています。
ぬか漬けを作る「ぬか床」製品があちこちで売り切れになったり、料理教室のぬか漬け講座が若い女性や男性も集めて大盛況だったり、芸能人がテレビやネットでぬか漬けの作り方を公開したりと、ぬか漬けへの関心が広まっています。今は無印良品などでも「ぬか床」が売っている時代。
しかし、昭和の時代なら、どこの家庭にもぬか床がありました。お母さんが食事のたびにぬか床からきゅうりやなすを取り出し、食べやすく刻んでから食卓に並べていた光景を懐かしく思い出す人もいるのでしょう。
平成になり、生活スタイルが変化してくると、ぬか床を手入れする時間がない、食事は洋食が中心、ぬか床を保管しておく場所がない、ぬかのにおいが苦手、などの理由から自家製のぬか漬けを食べる家庭は減っていきました。
では、ぬか漬けが、なぜ再び注目されているのでしょうか。
理由を考えてみると、ぬかが「生きた食品であること」「育てる食品であること」に、感度の高い人たちが興味を持ち始めたからだと思います
微生物の種類と数は 日によって千差万別
ぬかは、生きた食品です。
野菜を漬けるぬか床には、乳酸菌をはじめ、酪酸菌、酵母など、私たちの健康を守ってくれる微生物がひしめき合うようにすみ着いています。
ぬか床に指を入れて、ほんのひとすくい(1g程度)すると、その中には乳酸菌だけで十億も含まれているのです。
もともと野菜にも乳酸菌などの微生物は含まれていますが、ぬか床に漬けてさらに繁殖したぬか漬けを食べると、腸に届いて腸内の善玉菌を活性化したり、各種ビタミンを合成したりしてくれます。
「ぬか漬けを食べるようになってからお通じが改善した」「肌の調子がいい」「疲れにくくなった」という声をよく聞くのは、こうした体にいい微生物をたくさん補えることが可能性の一つとして考えられます。
自宅でぬか漬けを食べていた人なら経験があると思いますが、同じ野菜を漬けても季節ごとに、あるいは昨日と今日でも味が少しずつ違ってきます。
これは、ぬか床に含まれている微生物の種類や数が日によって変わり、漬け物の発酵の度合いも違ってくるからです。
ちなみに、よく聞く「発酵」とは、微生物が食品に付着し、私たちの体にいい影響を与える物質を新たに生み出すこと。逆に、私たちの体によくない物質が生み出されることを「腐敗」といいます。
ぬか床にすみ着く微生物の状態で味も成分も変わってくることから、ぬか漬けはまさに「生きた食品」だといえるのです
手をかけた分だけ味が よくなり栄養も増える
「ぬか床は手入れがめんどうだから……」という理由で躊躇されがちです。
たしかに何週間も放置しっぱなしはダメですが、毎日かき混ぜなくても大丈夫なので、最初から気負う必要はありません。難しく考えなくていいのです。とはいえ、ぬか床は手をかければかけただけ、おいしいぬか漬けができるのは事実です。これは子どもや動物を育てる感覚に近いといえるでしょう。
ある芸能人がテレビで「ぬか床はペット」といっていたように、手をかけた分だけ愛情が深まっていき、ぬか漬けの味がよくなるだけでなく、栄養素も増えていきます。注いだ愛情と手間の分だけ、ぬか床はよく育ち、私たちに期待以上の味と栄養を送り届けてくれます。
よくできたぬか床を一つ持つことは、家族に素敵な一員を迎え入れることと似ているかもしれませんね。
次は、ぬか床に含まれる栄養素について解説します。
「実際にぬか床を作る」までぜひお楽しみにして下さい。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/©カラダネ/©Adobestock
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