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【麹(こうじ)とは】麹菌(カビ)と穀物で作る発酵食。発酵過程で栄養素が増える

解説 白澤抗加齢医学研究所所長
白澤卓二

10年ほど前に塩麹(こうじ)ブームが起きたのを機に、醤油麹や甘酒、そして一時期話題となった「こうじ水」など、麹の健康作用に注目が集まっています。

そもそも、麹とは何か、なぜ健康によいのか、みなさん知っていますか?

そこで、健康番組でもおなじみの白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生に麹についての基礎知識を解説いただきました。
今の日本人があるのも、この麹のおかげかもしれませんよ。

麹の歴史。2000年以上前から食品を「おいしく保存する」ために活用

麹は日本の食文化の基礎

私たち日本人は、長い歴史を通して世界でも類を見ない、独自の食文化を築き上げてきました。
和食の土台になるのが、醤油、味噌、酢、みりんといった調味料であり、カツオ節などから取った魚介系のだしです。また、日本酒や焼酎も和食の引き立て役として、日本の食文化の一角を担ってきました。

和食には、ある一つの共通点があります。それは、これらが「麹」の力によって作られた発酵食品であること。和食の味つけの基本といわれる「調味料のさしすせそ」(さ=砂糖・みりん・酒、し=塩、す=酢、せ=醤油、そ=味噌)のほとんどは、麹の働きなしには作れません。つまり、麹は和食の基礎ともいえるのです。

高温多湿の日本の気候では麹が欠かせない

日本では、縄文時代から2000年以上にわたって麹の発酵食品が広まっていった理由は、気候が高温多湿で麹のもととなる麹菌の繁殖に適していたからです。

さらに、冷蔵庫も防腐剤もなかった時代、高温多湿の日本の気候下では食品の保存に「発酵」が欠かせませんでした。麹で発酵させて有害な腐敗菌の繁殖を抑え、食品をおいしく保存することは、日本人の食の知恵だといえるでしょう。

麹と麹菌、何がどう違うのか

麹(米麹や麦麹など)は、麹菌から作られる

麹とは、米・麦・大豆などの穀物に麹菌を繁殖させたものの総称です。麹と麹菌を混同している場合が見られますが、それは間違いです。

麹には、米麹、麦麹、大豆麹(豆麹)などさまざまな種類があります。これは麹菌を繁殖させる穀物の違いです。
具体的に日本酒や焼酎、酢、みりんは米麹から作られ、醤油は麦麹や大豆麹、味噌は米麹・麦麹・大豆麹を原料としています。

これらの麹の中で最も手に入りやすいのは、乾燥させた板状や粒状(バラ)の米麹でしょう。米麹は、米粒をうっすらと白いものが覆っていますが、これが麹菌です。麹菌はカビ(糸状菌)の一種で、麹カビとも呼ばれています。

麹コラム【麹菌とは】
koujikin.jpg米・麦・大豆などの穀物にこうじ菌という微生物を繁殖させたもの。でんぷんやたんぱく質を分解して、うまみ成分や香り成分を作り出す。こうじ菌はカビの(糸状菌)の一種で、こうじカビとも呼ばれる。蒸したものを米に白いこうじ菌が繁殖したものを米こうじといい、麦なら麦こうじ、大豆なら豆こうじという。

ところで、カビというと一般にはあまりいいイメージを持たれていませんが、実は人間に有益なカビもあり麹菌はその代表格といえるでしょう。そしてもう一つ、麹菌が優れているのは、発酵させる過程で栄養素を増やす点です。

麹菌は、発酵の過程で栄養素を増やす

疲労回復や肥満予防に役立つビタミンB群を作る

麹菌は、発酵の過程で人間の体内では作ることができないビタミンB1・B2・B6、葉酸、パントテン酸、ビオチンなどのビタミンB群を作り出します。

ビタミンB群には、糖質や脂質などをエネルギーに換えて細胞に送り届けたり、老廃物として体外に排出させたりする作用があります。そのため、疲労の回復を早めて夏バテを防いだり、肥満を予防したりするのに役立ちます。

また、でんぷんが分解されてできるオリゴ糖には、腸で乳酸菌を増やす働きがあります。

特殊なたんぱく質やアミノ酸も作り出す

さらに、レジスタントプロテインという消化されないたんぱく質も、麹菌によって作られます。レジスタントプロテインは、腸内で脂肪の排泄を促す食物繊維と同様の働きをするため、悪玉(LDL)コレステロールを減らす作用も期待できるのです。

ほかにも、麹菌が作り出すアミノ酸やペプチド(アミノ酸が数個つながったもの)の健康作用も各種試験で報告され、最近は米麹を使った甘酒が栄養補給飲料としてスーパーやコンビニなどで市販されるようになりました。

このように、日本人の食生活と健康を2000年以上にわたって支えつづけてきたこうじは、現在でも健康増進に有用な成分が次々と見つかっており、まさに〝古くて新しい健康長寿食〟といえるでしょう。

記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません

写真/©カラダネ

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