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アザラシ油に多い魚油【DPA】とは?DHAやEPAとの違いも解説(作用やとり方など)

解説早稲田大学研究院教授
矢澤一良

魚油のDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)については、血管や血液の健康に役立つことが古くから知られ、魚好きの日本人に積極的に活用されてきました。
最近、魚油の世界にアザラシやマンボウに多いDPA(ドコサペンタエン酸)という新型が現れ、注目を集めています。
この記事では、DHAやEPAに加え、DPAに期待できる働きなどについて、早稲田大学研究院教授の矢澤一良先生にお話を聞きました。

生活習慣病を予防するには、魚介類を積極的に食べることに加え、バランスのいい食事や適度な運動、十分な睡眠など、基本的な生活習慣を整えることが大切です。

DHAとEPAは赤血球の膜を柔軟にする

DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、特に青背の魚(サバ、サンマ、イワシ、アジなど)に多く含まれています。そして、血液中の赤血球(全身に酸素を運搬する赤色を帯びた細胞)の流動性を高めるという、特筆すべき働きがあります。

血液が細い血管を通過するさい、赤血球はつぶれたりひしゃげたりして形を変える必要があります。そのため、赤血球を覆う膜には、ある程度の柔軟性がないと、血液は血管の中をスムーズに流れていきません。

DHAやEPAには、赤血球の膜の柔軟性を高め、細い血管でもらくに通過させる働きがあります。DHAやEPAを含む魚油をとれば、赤血球の流動性が高まって血流が促され、結果として動脈硬化が改善され、心臓病や脳卒中が起こる危険も少なくなるというわけです。

杏林大学の柳澤厚生元教授は、冠状動脈(心臓の筋肉に酸素や栄養を補給する血管)に硬化が起こっている患者さん17人に、魚油の豊富な青背の魚と、野菜を中心とした食事をとるとともに、40分以上のウオーキングを週に3回行ってもらいました。その結果、動脈硬化を起こして狭くなっていた冠状動脈の内腔(内側の空間)が、平均0.2ミリ広がっていたそうです。

EPAは中性脂肪やコレステロールも減らす

ところで、DHAは脳に出入りできる数少ない物質の一つでもあり、脳を若返らせる働きや、視力を高める働きがあります。DHAが脳内に入ると、脳の情報伝達が活発になり、脳の血流もアップします。その結果、脳の働きが高まって、認知症が改善したり、精神が安定したりすることがわかってきました。


一方のEPAには、血管を柔軟にして血流改善を強力に促し、血栓ができるのを防ぐ働きもあります。さらに血液中の中性脂肪やコレステロールを減らし、サラサラと流れやすい血液に変える働きもあるのです。以上のようなことから、EPAをとると血流がよくなって、動脈硬化の予防に大いに役立つというわけです。

DHAやEPAをしのぐ新型の脂肪酸がアザラシ油から発見された

さらに、最近ではDHAやEPAの働きをしのぐ新型の脂肪酸が発見され、注目の的になっています。それは、アザラシ油などに含まれるDPA(ドコサペンタエン酸)です。DPAは、DHAやEPAと同じく、新型のn-3系の不飽和脂肪酸です。

アザラシ油が注目されだしたのは、北極圏に暮らす先住民族であるイヌイットの食生活を調査したことがきっかけでした。イヌイットの人たちは、アザラシをはじめ、オットセイ、サケなど、近海で捕れる動物や魚を主食にして、野菜や果物はほとんど食べません。彼らの脂肪摂取比は、総摂取カロリーの35〜40%にも上るといわれています。

これではふつう、血液中にコレステロールや中性脂肪が増え、動脈硬化や血栓の形成が進んで生活習慣病になるはずですが、イヌイットの人たちの血液を調べても、脂質の数値が正常だったのです。しかも、動脈硬化や血栓もほとんど見当たらず、心臓病や脳卒中による死亡も極めて少なく抑えられていたのです。

その理由として、魚油のEPAや DHAのほかに、アザラシなどに多量に含まれるDPAの働きが影響している可能性が浮上したのです。DPAの研究が盛んに行われた結果、以下のような健康作用が明らかになりました。

①血管の内皮細胞の遊走能(血管の内皮細胞が血管壁にできた傷を修復し、悪玉の脂質が付着するのを防ぐ働きのこと。この働きが強ければ強いほど、動脈硬化を防ぐ働きが大きいといえる)を高める働きが、EPAのおよそ10倍強い。

②血管壁を柔軟にする働きがEPAの10〜20倍強い。

③血管壁に付着している余分な脂質を取り除き、動脈硬化の進行を防ぐ働きがEPAの10〜20倍強い。

④体内にあるEPAの働きを強化する。

ほかにも、DPAについては多くの試験が行われています。例えば、カナダのロバート・G・アックマン博士らが、動脈硬化が進んだ患者さんや、コレステロール値が高い患者さんに、アザラシ油(DPA)を投与して経過を調べたところ、患者さんのコレステロール値が平均20%低下。しかも、減ったのはLDL(悪玉)コレステロールで、HDL(善玉)コレステロールは大幅に増えていたそうです。

アザラシ油の摂り方や代用

非常に健康作用が高いアザラシ油、ぜひ積極的に摂取していきたいですよね。しかし、アザラシ油は手に入れることが困難です。私たちが日常的に食べているサケやイワシ、サバ、サンマ、クロマグロといった魚にも、DPAは含まれていますが、その含有量はごくわずかで、全脂肪中の1〜3%に過ぎません。最近では、DPAを含有したサプリメントが数種類市販されているので、そういったものを利用するのも1つの手段です。

また、オメガ3脂肪酸(DPA、DHA、EPA)は、えごま油やアマニ油などにも多く含まれているため、これらを1日小さじ1杯分摂取することによっても匹敵する作用を得ることができるといわれています。オメガ3脂肪酸の油は、光と熱に弱く酸化しやすいという特徴があるため、揚げ物や炒め物などの加熱調理には使用することは避け、冷暗所で保存するようにしてください。また、油は高カロリーのため、1日による分量は小さじ1杯までにしてください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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