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【専門家解説】エノキで内臓脂肪が燃える?おなかヤセしたい人におすすめ

解説 横浜薬科大学総合健康メディカルセンター長・医学博士
渡邉泰雄先生

日本人にとって身近な存在のエノキ。実は、体の中にある脂肪燃焼スイッチをオンにするダイエットフードといわれているのです。

その理由やおすすめの食べ方について、横浜薬科大学総合健康メディカルセンター長で医学博士の渡邉泰雄先生にお話を聞きました。

エノキを食べるだけで必ずやせるというわけではありません。適度な運動やバランスのとれた食事とあわせて、エノキも活用してください。

エノキを食べると脂肪を燃焼するスイッチがオンになる

エノキはダイエットにおすすめの食品

キノコは低カロリーであることや、すぐに満腹感が得られて摂取エネルギーを抑えられることから、減量に役立つ食品として知られています。

中でも最近、心臓病や脳卒中・糖尿病の危険度を高める内臓脂肪を減らすと人気を集めているキノコが、エノキ(正式にはエノキタケという)です。

エノキに含まれるダイエット成分

エノキのどのような成分が内臓脂肪を減らすことに役立つのでしょうか。

これまで知られている成分としては、食物繊維や、多糖体(複数の糖が集まった成分)の一種であるキノコキトサンがあります。食物繊維には、食事でとった余分な脂肪をからめ取って排泄する働きがあるし、キノコキトサンは脂肪を分解して吸収しやすくする酵素(体内の反応を助ける活性物質)の働きを抑えることがわかっています。とりわけ、エノキタケはキノコ類の中で、キノコキトサンの量が多いのです。

加えて近年、私たちが行った研究によって、新たな事実がわかりました。エノキタケに特有の「エノキタケリノール酸」という成分は、脂肪を直接、強力に燃焼させる作用を持っているのです。

運動したときと同じように脂肪を燃焼するスイッチが押される

私たちが体をよく動かすと、体内ではアドレナリンというホルモンが分泌されます。体内の脂肪細胞の表面には「β-アドレナリン」という受容体(カギに対するカギ穴のようなもの)があり、分泌されたアドレナリンがβ-アドレナリンを刺激すると、脂肪が燃えるしくみとなっています。β-アドレナリンは、ある意味、脂肪燃焼を促すスイッチということもできるでしょう。

しかし、運動不足でアドレナリンの分泌量が減ったり、脂っこい物や甘い物をとりすぎたりすると、脂肪が十分に燃やされません。その結果、特に腹部にある臓器の周囲に内臓脂肪がたまりやすく、おなか太りを招くのです。

エノキタケリノール酸は、このβ-アドレナリンを間接的に刺激することが判明しました。つまり、エノキを積極的にとれば、運動したときと同じように、脂肪を燃やすスイッチが押されることになるわけです。すると、内臓脂肪はたまりにくくなります。

エノキタケノール酸は内臓脂肪を集中して燃やす

私は、以前から山田静雄教授(静岡県立大学)らとともに、エノキと脂肪燃焼の関係を調べる研究を行ってきました。初めて、エノキタケリノール酸に内臓脂肪を減らす働きがあると論文で発表したのは、2009(平成21)年のことです。しかし、当時はエノキタケリノール酸が体内で脂肪の燃焼を促すしくみについて、十分に解明できませんでした。

そこで、私たちは常盤広明教授(立教大学)らに構造の解明を依頼しました、その結果、エノキタケリノール酸がβ-アドレナリンに働きかけて、脂肪を燃やしていることが証明されたのです。

エノキタケリノール酸は体内の脂肪の中でも、内臓脂肪を集中して燃やすことがわかっています。実際、エノキタケをよく食べている人は、まずおなかからやせはじめる人が多いようです。

しかも、エノキタケは日本人にもなじみ深い食品で、さまざまな料理に加えることができるのも魅力。熱を加えたり凍らせたりしても、エノキタケリノール酸の働きは変わりません。鍋物やスープは一般的な食べ方ですが、ほかにも炒め物、サラダ、炊き込みご飯など変化をつけて調理すれば、飽きずに食べられるはずです。

ふだんの食事にエノキを加えるだけでOK

おなか太りを早く改善させたいために、食事量を極端に減らす人がいますが、これはよくありません。栄養のバランスがくずれてしまい、かえって健康を損なう危険が大きいからです。

その点、エノキは各種のアミノ酸や脂質がバランスよく含まれ、カリウムやカルシウム、リンなどのミネラル(無機栄養素)も豊富なので、比較的、栄養のバランスが整っています。食事量を減らすのではなく、ふだんの食事にエノキを加えるだけで十分なのです。

エノキは低カロリーで脂肪もごく少なく、多少食べすぎても、おなか太りを招く心配はありません。また、リバウンドも起こりにくい食品です。

さらに、エノキの脂肪を燃やす働きを高める食べ方があります。それは、エノキを天日で干した「干しエノキ」にして食べるというものです。この干しエノキを細かく切ると、エノキタケリノール酸を効率よくとれます。くわしくは、別の記事で紹介します。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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