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【脳梗塞・脳出血の新リハビリ法】磁気療法で数年来の麻痺が回復する人も

解説東北大学大学院教授
出江紳一

脳梗塞や脳出血による麻痺(マヒ)を回復させるリハビリ法に「磁気療法」があります。定着した後遺症にも効果があるといわれていますが、本当なのでしょうか。東北大学大学院教授の出江紳一先生にくわしいお話を聞きました。

脳梗塞や脳出血の心配がある人は、すぐに脳神経外科や神経内科で診てもらうことが大切です。また、麻痺のある人も適切なリハビリをして、記事も参考にしてみてください。

頭部に磁気を当てる「磁気療法」で慢性期の後遺症も回復する?

周囲の神経細胞が死滅した脳細胞の代わりとなり、麻痺を回復に導く

「磁気療法(正式には経頭蓋磁気刺激法<けいとうがいじきしげきほう>」は、頭部に磁気を当てるリハビリ(機能回復訓練)法です。これを行うと、死滅した脳の神経細胞を補う情報伝達経路が再構築され、麻痺の回復を促すと考えられます。
以前は、いったん死滅した脳の神経細胞は再生しないというのが医学の常識でした。しかし最近の研究によって、脳細胞の一部が死滅しても周囲の神経細胞が代役を果たせることがわかったのです。

とはいえ、脳が障害を受けてから時間がたつにつれ、情報伝達経路が再構築されにくくなります。リハビリで大幅な機能改善が期待できるのは発症から3カ月までの急性期・回復期で、麻痺などが改善せずに慢性期へ入ると、後遺症が定着してしまいます。

そこで開発されたのが、脳に磁気を流し、脳の神経細胞と脊髄・末梢神経の間で情報を伝えている活動電位を高め、運動機能を回復する磁気療法です。
磁気療法で神経の情報網へ人為的に磁気を流すと神経信号が増えて、脳と筋肉の間の連絡がスムーズになります。

実際に、磁気療法を行うと慢性期に入った難治の麻痺でも回復することが珍しくありません。中には、数年来のリハビリでほとんど回復しなかった麻痺が、磁気療法によって改善した例もあります。

磁気刺激を行う部位と頻度を調整することが大切

では、私たち東北大学が行っている磁気療法のやり方を紹介しましょう。
磁気療法は、コイル(導線を円形に巻いたもの)を頭部に近づけ、電気を流して行います。すると、コイルから磁気が出て、脳の特定部位に微弱の電流が発生するのです。

磁気刺激には、一定時間に当てる回数が多い(高頻度)と脳の働きが活発になり、当てる回数が少ない(低頻度)と脳の働きが抑制される性質があります。そして、磁気療法では、高頻度と低頻度の使い分けが重要になります。

脳梗塞や脳出血を発症した人の多くは、右脳・左脳のどちらか一方に障害を受けています。ところが、どちらかが障害を受けて働きが低下すると、もう一方の働きが過剰になり、障害を受けた側の働きを抑える場合があるのです。

そこで磁気療法では、脳波やMRI(磁気共鳴画像)などの検査を行い、脳のどの部位に障害があるのかを調べます。そのうえで、磁気を流す部位を特定し、高頻度と低頻度を使い分けるのです。

磁気療法では、運動訓練を同時に行い、患者さんが体を動かすタイミングに合わせて脳に磁気を当てる方法もあります。
磁気療法で効果が期待できるのは、障害の度合いが3〜5の中等度・軽度の人で、1〜2段階の回復が期待できます。完全麻痺である2の人は改善が難しいでしょう。

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麻痺した手足に直接磁気を当てることで、末梢神経を通じて脊髄や脳を刺激する治療法も

2015年に、新しい磁気療法が登場しました。それは、「末梢神経磁気刺激法」(以下、新磁気療法)です。
新磁気療法では、麻痺した手足に専用コイルで磁気を当てます。すると、筋肉の運動感覚を担う固有感覚の末梢神経を通じて脊髄や脳が刺激を受け、情報伝達経路が再構築されやすくなるのです。

装置は小型軽量であり、ベッドサイドで簡単に使用することができます。また、高頻度と低頻度を使い分ける必要はなく、麻痺した部位に磁気を当てればいいので簡単です。
新磁気療法は、まだ研究段階ですが、一部の大学病院などで患者さんのリハビリに取り入れられています。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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