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【ピロリ菌】除菌しないとどうなる?胃がんの他、糖尿病や認知症、骨粗鬆症を招く可能性も

解説 江田クリニック院長
江田 証

ピロリ菌が胃がんの原因になることは、徐々に知られはじめています。
ところが、実際は胃がんだけではなく、さまざまな病気を招く可能性があるそうです。ピロリ菌についてくわしい、江田クリニックの江田証先生に話を聞きました。

ピロリ菌感染の疑いがある人は、必ず胃腸科のある病院で診てもらうようにしましょう。



ピロリ菌があると動脈硬化が進む?

最新の研究で、ピロリ菌は胃がんや胃・十二指腸、胃炎ばかりではなく、ほかの病気とも深く関わっていることがわかってきました。ピロリ菌と関連があるとされる病気は、動脈硬化、骨粗鬆症、糖尿病、アルツハイマー型認知症、貧血など、実にさまざまで、全身に及びます。

まず、動脈硬化について説明しましょう。動脈硬化を引き起こす危険因子として、近年、注目されているのが、血液中の「ホモシステイン」というアミノ酸の一種です。血液中にホモシステインが増えすぎると、血管が老化して動脈硬化が進むことが解明されたのです。

このホモシステインを分解するのが、ブロッコリーなどに多く含まれる葉酸と、シジミやレバーなどに多く含まれるビタミンB12です。ところが、ピロリ菌の感染により「ピロリ感染胃炎」や「萎縮性胃炎」などの胃炎があると、葉酸とビタミンB12を吸収できなくなり、ホモシステインが分解されず、動脈硬化が進んでしまうのです。
動脈硬化が、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こすことは、みなさんもよくご存じでしょう。

ホモシステインは、骨の老化も早めます。血液中にホモシステインが増えると、骨質が低下して、背骨の圧迫骨折をはじめとする骨折を起こす危険が高まるのです。
また、丈夫で質のいい骨を作るには、カルシウムと葉酸が必要ですが、ピロリ菌による胃炎があると、これらをうまく吸収できず、骨粗鬆症を招きやすくなります。
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ピロリ菌との関係が疑われる病気

ピロリ菌と糖尿病

ピロリ菌は、糖尿病とも深く関係しており、日本糖尿病学会では、ピロリ菌の感染者は、血糖値が改善しにくいことを報告しています。

ピロリ菌とアルツハイマー型認知症

さらに、ピロリ菌は脳にも悪影響を及ぼし、アルツハイマー型認知症の患者さんはピロリ菌感染率が有意に高いとする論文が報告されています。

ピロリ菌とパーキンソン病

脳の異常のために、手足が震えるなどの障害が現れる難病のパーキンソン病の治療では、Lドーパという薬を使用します。ところが、ピロリ菌に感染していると、薬の成分をピロリ菌が横取りして食べてしまうため、治療効果が十分に得られなくなることもわかっています。

ピロリ菌と貧血

貧血の治療も同様です。貧血の治療のために鉄剤を服用しても、ピロリ菌が鉄分を横取りしてしまい、症状が改善しないというケースが多く見られます。そこで、貧血の治療を行ってもよくならない患者さんに、ピロリ菌の除菌治療を受けてもらうと、貧血があっけなく治り、その後は鉄剤が不要になる例も少なくありません。

このほか、ピロリ菌による胃炎があると、悪性リンパ腫や血小板減少性紫斑病という血液の病気、じんましんなども起こりやすくなることが報告されています。

ピロリ菌が生み出す毒素が全身を巡る

なぜ、ピロリ菌は、このように全身に悪影響を及ぼすのでしょうか。

前の記事で、ピロリ菌が分泌する「CagA(キャグエー)」という毒素が胃の細胞をがん化させることを説明しましたが、最近の東大と京大の研究により、ピロリ菌が生み出したCagAは、胃の細胞から血流に乗って、全身を循環することがわかりました。そして、運ばれた先の細胞に毒素が入り込めば、その細胞に異常が発生して病気を発症すると考えられるのです。

このように、ピロリ菌は、全身に重大な病気を引き起こす危険がある猛毒を持つ細菌です。ピロリ菌の検査と除菌は、胃だけでなく全身の健康を守るためにも重要です。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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