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【大動脈瘤・解離の予防法】減塩や禁煙、運動に加え重要なこと

解説 榊原記念病院・欅坂上医科歯科クリニック
伊東春樹

大動脈瘤や大動脈解離の多くが50代以上の中高年の人に発症します。これは、血管の病気の根本にあるのが、動脈硬化(動脈の炎症)だからです。高血圧や糖尿病、脂質異常症や肥満といった生活習慣病がある人は、大動脈瘤や解離などの重篤な循環器疾患を発症するリスクが高く、発症を防ぐためには生活習慣の改善に取り組む必要があります。

循環器の分野では、病気にならないようにすることを一次予防といい、焦点になるのは血圧や糖代謝、血中脂質のコントロール、喫煙や運動不足といった生活習慣の改善です。

この記事では、一次予防の側面から生活の中のさまざまな注意点を医師の伊東春樹先生に聞きました。
大動脈瘤や大動脈解離は前ぶれとなる自覚症状が現れにくい病気だといわれています。生活習慣に気をつけるだけでなく、病院で定期的な検査を行うように心がけてください。

食事や運動…大動脈瘤・大動脈解離を予防する生活習慣とは?

喫煙

喫煙は大動脈瘤の拡大速度を20〜30%も増やすといわれています。タバコに含まれる有害物質の中でも、ニコチンには血管を収縮させて血圧を上げたり、血管壁を傷つけて動脈硬化を促進させたりする作用があります。また、一酸化炭素も、赤血球のヘモグロビンと結びついて全身への酸素の供給を低下させてしまいます。さらに、この二つの物質によって血栓が生じやすくなることも見逃せません。

食事

血圧を上げない食事が重要で、まず取り組むべきは減塩です。さらに、野菜と海藻を中心にとることが必要ですが、そのときにドレッシングやしょうゆをたっぷりかけてしまうと塩分のとりすぎになります。食塩の過剰摂取によって体内のナトリウムが増加すると、血管の緊張が高まり、同時に血流量が増えて心拍出量が増加することから高血圧につながります。血圧が高めの人は、塩分を1日6グラム未満に抑えるようにし、酸味やスパイスを利用して減塩の工夫をするといいでしょう。

実は、食事の盲点になりがちなのが果物です。適量であればビタミンやミネラル(無機栄養素)などの補給源となりますが、山ほど食べてしまうと果糖のとりすぎで高血糖の原因になります。

便秘

排便時にいきむと血圧が上がるので、便秘をしないように心がけてください。食事から食物繊維をとり、運動をして腸管の動きを活発にすることが便秘予防の鉄則です。

肥満

肥満は血圧を上昇させる重要リスクの一つ。肥満度の基準となるBMIが25以上の人は、食事は腹八分めで抑えるとともに運動習慣をつけましょう。

温度差

室内と室外の温度差がある冬はもちろんですが、浴室と脱衣所の温度差にも注意が必要です。入浴前に浴室の扉をあけておいたり、熱いシャワーで浴室や脱衣所の温度を上げたりするなど、温度差がなるべくないよう工夫してください。

入浴

熱い湯温は血圧上昇の原因なので、40度C前後のぬるめの湯がおすすめです。ゆったりとリラックスして入浴するのがおすすめな反面、一方で長風呂をすると血管が開いて血圧が急に下がるので要注意です。

運動

一般には、ウォーキングなどの適度な有酸素運動が推奨されます。息を止めたり過度に力んだりする運動は血圧を上昇させるのでさけてください。心臓や血管病の予防を目的とするなら、注意すべきは、運動の種類だけでなく適切な強度です。

みなさんが取り組む場合には、速足歩きで30分歩いて息が切れるようなら、速すぎると判断できます。1時間歩きつづけても息が切れず、まだ強度で続けられる最も速いスピードがおすすめです。または、パートナーと話しながら歩けるなるべく早い速度でもいいでしょう。

適正な速度が確認できたら、その運動を30分〜1時間程度を週5日のペースで続けるといいでしょう。その際、運動をする時間も重要です。最適な時間は夕方で、逆に心血管事故が起こりやすいのは、早朝や食後なので、運動する時間には注意してください。

血圧測定

朝と夜の食事前に落ち着いた状態で測定する1回めが重要です。同じ腕で続けて測れば、2回めの血圧は必ずといってよいほど低くなりますし、起床直後、食後、入浴後なども血圧は不安定です。

血圧管理については、同じ条件で測定、記録する習慣が重要です。何か異変あったときには、家庭血圧の測定記録から、多くの手がかりを得ることができます。

大動脈瘤・大動脈解離を予防するためには、以上のことに気をつけて生活してみてください。
くり返しになりますが、大動脈瘤や大動脈解離は前ぶれなくおこる病気です。生活習慣に気をつけるだけでなく、定期的に病院で検査を受けることを忘れないでください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/©カラダネ

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