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ひざの水が抜けた人も。変形性膝関節症の6割が改善!【ひざ振り子体操】を医師が直伝

解説清水整形外科クリニック院長
清水伸一

ひざ痛に悩んでいる人の多くが誤解していることがあります。それは、ひざ痛の改善のためには「ひざを動かさずに、安静にする方がいい」という考えです。

ひざ痛を自力改善するには、積極的に動かすことが重要です。しかし、自己流で無理な運動をするのは禁物。では、どのような運動が適切なのでしょうか。関節痛の自力療法の指導で有名な清水整形外科クリニック院長の清水伸一先生に話をお聞きしました。

ひざ痛に悩んでいる方は、医師の治療を受けたうえで、セルフケアを試してみてください。

ひざ頭で∞を描く「ひざ振り子体操」のやり方

ひざ振り子体操は、イスに座り、ひざ頭で前後左右上下の3方向に∞(無限大)のマークを描くように足を動かす運動です。

無限大 ひざ振り子体操のやり方

s_無限大振り子 左右.jpg●基本姿勢
イスに座って、背すじを伸ばし視線をまっすぐ前に向けて、上の基本姿勢を取る。
左右に∞(無限大)マークを描く
右上のを参考に、ひざを曲げ伸ばしながら、ひざ頭で左右に∞マークを描く。1回1回の体操で描く∞マークの大きさは、そのつど初めは小さくし、徐々に大きくして最大屈曲・最大伸展をめざす。10回連続で行う。慣れてきたら∞マークを逆方向に描く。

s_無限大振り子 前後.jpg前後∞(無限大)マークを描く
基本姿勢を取り、上の❶❷を参考に、ひざを曲げ伸ばししながら、ひざ頭で前後に∞マークを描く。1回1回の体操で描く∞マークの大きさは、そのつど初めは小さくし、徐々に大きくして最大屈曲・最大伸展をめざす。10回連続で行う。慣れてきたら∞マークを逆方向に描く。

s_無限大振り子 上下.jpg上下に∞(無限大)マークを描く
基本姿勢を取り、❶❷を参考に、ひざを曲げ伸ばししながら、ひざ頭で上下に∞マークを描く。1回1回の体操で描く∞マークの大きさは、そのつど初めは小さくし、徐々に大きくして最大屈曲・最大伸展をめざす。10回連続で行う。慣れてきたら∞マークを逆方向に描く。

【注意点】

  • 股関節や太ももの筋肉が弱っていて、うまく∞マークを描けない人は、最初は両手で下から太ももを支えながら行ってもいい。
  • 左右のひざで前後左右上下に10回ずつ行うのを1セットとして、朝・昼・晩に1〜3セットずつを目安に行う。
  • ひざが腫れて熱を持っていたり、痛みが強く現れていたりするときは体操を行わない。体操中に痛みがひどくなったときはただちに体操を中止して、整形外科を受診する。

変形性膝関節症などでひざが痛む理由

変形性膝関節症では、ひざでクッションの役割を担っている関節軟骨が加齢・肥満・筋力低下などの原因ですり減り、太ももの大腿骨とすねの脛骨が直接こすれ合うことによって痛みが生じます。

問題は、ひざ痛になると、その痛みのせいでひざをなるべく動かさないように気を遣いがちになること。ひざの調子が悪いからといって、歩かず動かさず、ひざをかばって安静にばかりしていると、ひざを動かす筋肉や靱帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)が硬直したり、関節を健全に保つのに欠かせない関節液の新陳代謝(古いものと新しいものの入れ替わり)が滞ったりします。

その結果、ひざ関節の機能はどんどんと衰えていき、膝痛は悪化の一途をたどるわけです。

安静にすることがひざ痛の悪循環を招くのはなぜ?

s_膝関節 安静.jpgひざをかばって生活していると、ひざ周辺の血流が滞ったり廃用性(使わないでいるうちに機能低下や組織萎縮が起こること)が生じたりして、筋肉や靱帯が硬くこわばって(拘縮[こうしゅく]という)きます。その結果、ひざに備わっている可動域(動く範囲)が狭まり、十分な曲げ伸ばしができなくなってしまいます。

また、ひざ関節が拘縮すると、関節内を満たしている「関節液」の循環を妨げる原因にもなります。関節液は、ゼラチンのようなな粘りけのあるヒアルロン酸が主成分の体液で、以下のような働きを担っています。

  • 関節の潤滑性を保つ
  • 軟骨に栄養を送り届ける
  • 関節内圧を保ってひざを支える

ひざは関節液があるおかげで、スムーズに曲げ伸ばしできたり軟骨などの健康を保ったりできている、といってもいいすぎではありません。

ひざ痛を患う人では、すり減った関節軟骨の微小なかけらが関節液にまざっています。本来なら、関節液は常に新陳代謝をくり返しているので、軟骨の微小なかけらがまざってもしだいに除去され、きれいで澄んだ状態が保たれます。しかし、ひざ関節の拘縮が起こると、関節液の循環が妨げられて新陳代謝が滞ります。その結果、関節液には軟骨のかけらがたまっていき、いわばよどんだ状態に変わってしまうのです。

関節液がよどむと、当然、先に述べた関節液の3つの働きも十分に果たせなくなり、ひざ痛の悪化を招くことになります。

ひざに水がたまる「関節水腫」に進む可能性も⁉︎

ひざ関節の軟骨のかけらが関節の内部にある滑膜を刺激すると、炎症が起こって痛みや腫れが生じます。こうした状態に陥ると、関節液が過剰に分泌され、いわゆる水がたまった状態「関節水腫」になります。

軟骨のかけらがたまって関節液がよどむと、こうした悪影響も現れるのです。ひざに水がたまった場合は、注射器で水を抜いたり、人工の関節液であるヒアルロン酸を膝に注入したりします。しかし、特にヒアルロン酸注射については、注射を行う私でも受けたくないと思うほど強い痛みを伴うことがあるので、できるだけさけたいものです。

s_膝 注射.jpg

ひざの無限大振り子体操の作用

ひざの無限大振り子体操の作用や特徴について、説明していきます。

作用|膝の硬直をほぐす・関節液の循環を促す

変形性膝関節症によるひざ痛の原因は、上で説明してきたとおり、ひざ周辺の筋肉や靭帯の硬直、そして膝関節内の関節液がよどむことにあります。

ひざの無限大振り子体操は、整形外科医である私が研究と治療経験の末に、一番効率的に硬直を和らげ、関節液の循環を改善できるように考案した体操です。具体的には、❶ひざ関節の骨同士を近づけたり離したりする、❷ひざ関節を屈曲させたり伸展させたりする、❸ひざ関節を左右に回旋させる、❹ひざ関節を内反・外反させる、といった動作によって、改善に導いていきます。

特徴|高齢の方でも、安全にできる

ひざの無限大振り子体操は、行ってもらえばわかりますが、高齢の人でも体力的につらくなく、安全かつ手軽にできるのが魅力です。

ただし、ひざの無限大振り子体操では股関節や太ももの筋肉を使います。これらの筋肉が弱っている高齢の人では、うまく∞マークが描けない場合も多いでしょう。そうした人は、両手で下から太ももを支えながらひざ頭を誘導して∞マークを描いてもかまいません。体操に慣れてきて筋肉が強まってきたら、足の力だけで行えばいいのです。

【実績データ】膝痛患者の6割が改善

変形性膝関節症によるひざ痛に悩む患者さんのほとんどが、変形したひざはもとに戻せなくてもいいので、とにかく痛みを抑えながら生活したいと考えています。しかし、症状がある程度進行すると、多くの整形外科医は保存療法(手術以外の治療法)を中止して、患者さんにとって心身ともに大きな負担をかける手術をすすめるようになります。

そこで私は、こうしたひざ痛の患者さんの要望をかなえるために、ひざの無限大振り子体操を考案しました。すでに当院では、ひざ痛の治療に通っている多くの患者さんにひざの無限大振り子体操を指導しており、症状改善の確かな手ごたえを感じています。その実績は以下のとおりです。

s_無限大振り子体操 効果-1.jpgひざの無限大振り子体操の作用を統計的に確認するために、2013年2月から10月までの8ヵ月間、なかなか改善しないひざ痛に悩む患者さん241人を対象に、ひざ痛の標準的な治療を続けながら無限大振り子体操を毎日実践してもらい、症状の変化について調べました。

その結果、ひざ痛の改善が実感できた人は56%(136人)と、約6割に達したことがわかりました(上のグラフ①参照)。

また、VAS(視覚的評価スケール。どれくらい痛いかを0〜100の数値で主観的に表す)の値が低下した人は67%(162人)、歩ける距離が延びた人は54%(131人)という結果になりました(グラフ②③参照)。歩行距離が延びた人については、調査前にはほとんど歩けなかったのに、8ヵ月後には数百メートル歩ける人もいました。

こうして見ると、ひざの無限大振り子体操は、ひざ痛を改善に導くのに役立つことがおわかりいただけると思います。

【症例報告】水がたまるほどの膝痛が改善

(以下は、2014年に健康情報誌『わかさ』で紹介されたものをウェブ用に再編集したものです)

埼玉県に住む中村さん(仮名・75歳)は5年前に両ひざに痛みが現れ、整形外科で変形性膝関節症と診断されました。整形外科では鎮痛薬や電気療法で治療が試みられましたが、症状はよくならなかったそうです。

発症して1年が経過したころには、両ひざに水(関節液)がたまるようになったという中村さん。ひざがパンパンに腫れるので整形外科で注射器を使って水を抜いてもらうのですが、数日後には再び水がたまるので、何度も整形外科に通ったそうです。一般に、ひざに水がたまって腫れると、関節液で満たされている関節包という膜が伸びきってしまうため、注射器で抜いても水がたまりやすくなるのです。

しだいに歩くのもつらくなってきた中村さんは、最善の治療法を求めてほかの整形外科を受診しました。しかし、ある整形外科では「ひざに水がたまらないように安静にしてください」といわれ、別の整形外科では「積極的に歩かないと、筋肉が衰えて痛みが悪化します」といわれ、何が正しいのかわからなくなったのだとか。

その場しのぎの治療や玉虫色の生活指導がくり返されるうちに中村さんは不信感を募らせ、病院に行かなくなりました。ひざ痛で外出することすらままならず、自宅に引きこもってテレビを見る日々が続いたそうです。

そんなようすを見かねた家族に連れられて中村さんが私のクリニックを訪れたのは、2014年の初めのこと。診察室に入るなり、「どうすれば膝痛がらくになるのですか」と訴える中村さんに、私は痛みを伴わない運動を行うことの重要性を説明し、標準治療を続けながら、ひざの無限大振り子体操を実践するよう指導したのです。

中村さんの腫れた両膝は、本来なら150〜155度ある可動域(動く範囲)が、60〜90度しかありませんでした。それでも、無限大振り子体操を行って膝の拘縮を改善し、関節液の循環をよくすれば、必ず曲がりやすくなるはずと私は考えました。

中村さんは、朝・昼・晩にそれぞれ3セット、無限大振り子体操を行った結果、徐々に膝の拘縮がほぐれて可動域も広がり、それと同時にはれや痛みも少しずつ和らいでいきました。

半年後には、見違えるほどひざがスッと曲がり、痛みを感じることなく自然な姿勢で歩けています。ひざの無限大振り子体操を始めてからひざの水抜きを一度もしていない中村さんは、好きな散歩を楽しめるようになり、毎日の生活が充実しているそうです。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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