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長寿ホルモン「アディポネクチン」とは?長生きの人の体内に多く、大豆食品で増やせる可能性も

解説 白澤抗加齢医学研究所所長
白澤卓二

長生きする人、特に百寿者(100歳以上生きる人)の食生活の大きな特徴は、好きなものを中心によく食べること。
その中でも、植物性たんぱく質の代表ともいえる大豆食品も百寿者に人気の食材です。大豆食品は、豆腐や納豆、みそ、湯葉など種類が豊富なので、毎日とっても飽きることなく食べられているようです。

今回は大豆食品を食べることで、体内に増えるかも?と期待されている長寿ホルモン「アディポネクチン」について、白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生に話をお聞きしました。

百寿者はアディポネクチンの分泌量が多い?

百寿者の多くに人気の食材である大豆食品には、最近、長寿ホルモンとも呼ばれる「アディポネクチン」を増やす働きがあるとわかっており、この成分が元気に年を重ねるのに一役買っているのではないかと考えられます。

アディポネクチンは、大阪大学医学部の研究チームによって、世界に先駆けて発見されたホルモンです。血糖を下げるインスリンの働きを助け、糖尿病の予防や改善に役立ちます。

血管を広げる作用があり、血圧を下げる働きが期待できるうえ、傷んだ血管を修復することで動脈硬化も予防してくれます。また、脂肪の代謝を活性化して、中性脂肪を減らすなど、とても働きもののホルモンとされます。

実は最近の研究で、このアディポネクチンが百寿者に多いことがわかってきました。慶應義塾大学医学部の研究によれば、百寿者の女性66人と若い女性66人のアディポネクチンの分泌量を比較したところ、百寿者のアディポネクチンの平均値は、若い女性の平均値の2倍も高いことがわかったのです。s_長寿ホルモン分泌量.jpg

百寿者には肥満者が少ない

そもそも、アディポネクチンは、私たちの体の脂肪(脂肪細胞)から分泌されます。脂肪といえば、過剰なエネルギーを貯蔵するだけの倉庫と考えられていましたが、最近の研究で、脂肪細胞にはさまざまな生理活性物質(体の働きを調整する物質)を分泌する働きがあるとわかってきました。その一つが、アディポネクチンなのです。

脂肪から分泌されるといっても、太ればアディポネクチンが増えるわけではありません。太って脂肪細胞が肥大した人の場合、分泌は逆に少なくなるのです。

百寿者にアディポネクチンの分泌が多いという研究結果を述べましたが、実際のところ、百寿者には肥満者は少ないのです。s_小柄・痩せ型.jpg

百寿者の身長は、男性の場合、平均で約155センチ、体重は約49キロ。女性では、身長は約142センチ、体重は約39キロと、小柄でやせ型の人が多く、BMI(体重・体格指数)で肥満に該当する人は男女ともにわずか5%程度。
百寿者のアディポネクチンが多いのは、このように肥満者が少ないことが理由の一つと考えられます。

アディポネクチンの働きと大豆食品

肥満を防ぐことで、アディポネクチンの分泌量を増やすことができると考えられますが、もっと手軽にアディポネクチンの分泌量を増やせる可能性がある方法を紹介します。その方法とは、百寿者に人気の大豆食品を利用することです。

大豆食品をとれば長寿ホルモンが増える

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大豆食品の主成分である大豆たんぱくには、βコングリシニンという成分がたくさん含まれています。このβコングリシニンがアディポネクチンを増やす、という研究結果が日本肥満学会から発表され、大きな注目を集めました。

報告によると、メタボリックシンドロームの人にβコングリシニンを2~3カ月とってもらったところ、アディポネクチンの分泌量が増えたということです。

毎日、大豆食品をとるようにすれば、アディポネクチンの分泌量が増やせる可能性があります。すると、脂肪の代謝が進んで肥満が解消し、さらにアディポネクチンの分泌量が増えるという、好循環が生まれると考えられます。

もちろん、大豆食品さえ食べれば誰の体内にもアディポネクチンが増えるわけではありませんし、長寿になれるわけではありません。適度な運動、栄養バランスの優れた食生活を実践していただき、あくまでも健康維持の一環として毎日の食事の中で大豆食品を利用することをおすすめします。

記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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