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【アロマで認知症が改善】昼はローズマリー、夜はラベンダーの香りで脳を刺激したら…

解説 星薬科大学特任教授
塩田清二

レモンやローズマリーなどのアロマの刺激は脳の大切な部分を効率よく活性化して、物忘れや認知症を防ぐ可能性があると期待されています。

香りによる刺激には、認知機能を向上させる可能性がありますが、それは記憶を担う脳の海馬の働きがスムーズになることが一番の理由だと専門家は指摘します。
記憶を担う海馬の働きと香りの関係について、星薬科大学特任教授の塩田清二先生に話をお聞きしました。

最初に申し上げますが、もちろんアロマで認知症や物忘れの問題すべてが解決するわけではありません。誰の脳にもいいわけではないことはご理解ください。

香りの記憶は脳のあちこちに格納される

過去2年くらいの近い記憶(短期記憶)の格納庫である海馬が正常に機能すると、記憶力はもちろんのこと認知機能は向上します。

また、香りの情報は海馬を通じて大脳皮質に格納されています。つまり、香りの情報(記憶)は脳のところどころに格納されており、香りの刺激によって、過去にあった香りと結びついている出来事をすぐに引き出す作用があると考えられています。

みなさんの中にも、香りをかいだ瞬間、昔懐かしい人や場所、過去の思い出がよみがえった経験をお持ちの人もいらっしゃるでしょう。これは香りと記憶が密接に結びついている何よりの証拠といえます。

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海馬とは
海馬とは、過去2年間くらいの近い記憶を格納する大脳辺縁系にある器官。物忘れなど、記憶力の低下を防ぐ要所ともいわれます。また、最近の研究で脳を効率よく使うと、年齢に関係なく海馬の容量が増えることが判明しています。

芳香浴(アロマセラピー)による脳への刺激試験

香りの刺激で、認知機能が向上する可能性があると試験で明らかになっています。
鳥取大学医学部の研究チームは、特別養護老人ホームに入居する高度アルツハイマー型認知症(以下、高度アルツハイマー病)の患者さん65人を含む、高齢者77人を対象に、芳香浴(アロマセラピー)による脳への作用を調べています。

芳香浴については、昼は集中力を高めて記憶力を強化する「ローズマリー(カンファー)」と「レモン」などを配合した精油、夜は鎮静作用のある「ラベンダー」と「オレンジスイート」などを配合した精油を使います。

試験では、最初の4週間は芳香浴を実施せずに過ごしてもらい、次の4週間で毎日2時間ずつディフューザー(芳香拡散器)芳香浴を実施してもらいました。
評価法は、GBSという「日常生活動作能力」の評価として広く用いられる方法で行いました。点数が高いほど認知機能の低下が進んでおり、点数が低いほど認知機能が正常なことを表します。
つまり、点数が低くなると、認知機能が改善したことを現します。

試験では85%の人の認知機能が向上!

結果は、驚くべきものでした。芳香浴を実施した4週間で、85%の人がGBS評価による数値が低下し、特に高度アルツハイマー病の患者さんはより変化が大きかったのです。試験の結果は、以下のようなグラフになります。

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中には、昼夜の生活リズムが整い、夜に興奮して大声を出すといった認知症特有の症状まで、和らぐ人も見られたと報告されています。
この試験結果は、香りによる脳への刺激が認知症の悪化を防ぐとともに、認知機能の向上が期待できることを示しているといえます。

そのほかの試験でも、香りの刺激によって認知機能が向上することが確かめられています。現在では、認知症予防の一つの方法として、医学界でもにわかに注目を集めています。

香りによる刺激が興味深いのは、高度アルツハイマー病の人にも、香りの刺激で一定の改善が見られたことです。現在、アルツハイマー病は治療法が少ないので、患者さんにとっては福音といえるでしょう。

近い将来、医療向けの芳香浴は、認知症の治療法のほか、認知症の前兆である物忘れを改善して認知症の急増を防ぐ画期的な手段になる可能性があると、私は考えています。

記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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