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【レモンの香りで認知症予防?】脳の記憶中枢が刺激され、物忘れや認知症の予防に役立つ可能性がある

解説 星薬科大学特任教授
塩田清二

レモンやローズマリーなどの香りをかぐだけで、脳が活性化する可能性がある…

そうした話は、とても信じられないという人も少なくないかもしれません。しかし実際に認知症の治療に加えて、
「アレソレばかりいっていたひどい物忘れが、香りをかいでいたら物の名前がスッと出るようになった」
「香りをかいでもらったら両親の認知機能が回復して、笑顔あふれる生活になった」
といった事例が報告されているといいます。

真相はどうなのでしょうか。香りと脳の関係について、星薬科大学特任教授の塩田清二先生に話をお聞きしました。

最初に申し上げておきますが、認知症の人は必ず専門医の治療を受け、セルフケアの一環としてアロマを利用してください。また、アロマを使いすぎないようにしましょう

10年後の認知症患者数は700万超⁉︎

最近、脳と香りには密接な関係があるとわかり、脳の活性化の手段として、にわかに注目を集めています。
香りをかぐと脳が活性化し、物忘れなどが減る可能性があるのなら、こんなに素晴らしい話はありません。今後、急増が心配される認知症の患者数が減れば、医療費の削減にもつながるはずです。

今や、認知症対策は待ったなしの状況に追い込まれています。2013(平成25)年の厚生労働省の報告では、今から10年後には認知症の患者数が700万人を超えるとされ、国を挙げての対策が求められているのです。

ひと口に認知症といっても、脳が萎縮するアルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー病)、主に脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が引き金となる脳血管性認知症など、いくつかのタイプに分かれます。その中で、日本人の認知症の約6割を占めているのがアルツハイマー病です。

アルツハイマー病がやっかいなのは、いったん病状が進行したら、現代医学では、回復するのが困難とされていることです。とはいえ、アルツハイマー病は急に発症するわけではありません。長い年月をかけて脳が萎縮することにより、本格的な症状が現れます。大切なことは、物忘れなどの前兆に気づいたら、早めに手を打つことです。

優れた作用で長続きさせやすい脳活性法=香り?

脳を活性化する方法はたくさんありますが、めんどうだったり、続けるのが難しかったりと、何かしらの理由で断念する人が多いのも事実。求められるのは、誰でも簡単に脳を活性化できる可能性があり、物忘れの改善や認知症の予防・改善作用に役立つ方法です。その方法の一つが「香り」で嗅覚を刺激することだと、私は考えています。

香りは脳の中枢を直接刺激する

香りをかいだだけで、瞬時に脳が活性化されるメカニズムを簡単に説明しましょう。

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そもそも香りは、ニオイ分子と呼ばれる物質が鼻腔内の粘膜に付着して嗅神経を刺激し、その刺激による電気信号が発生することで脳に伝わります。

ここで重要なのは、視覚(目)や聴覚(耳)と異なり、嗅覚(鼻)の情報は視床を通らないということ。つまり、香りの刺激が脳の中枢部分にダイレクトに届くのです。そのため、視覚や聴覚より情報の伝達が早く、刺激も強力と考えられます。

しかも、香りの刺激は大脳辺縁系や視床下部といった脳の中枢部分に直接伝達されます。これらの部位は、記憶を管理する海馬があるほか、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)やホルモン分泌の働きを担う拠点であるため、血圧や食欲、性欲、睡眠などにも大きな影響を与えます。

つまり、香りによってこうした部位が刺激されると、認知機能の向上や、心身の健康増進が期待できるのです。香りを使って脳を活性化すれば、認知症の予防・改善はもちろん、その前兆の物忘れの改善も実感できる人がいるのは、ある意味、当然のことではないでしょうか。

もちろん、香りだけで物忘れや認知症の問題すべてが解決するわけではありません。バランスのいい食事、適度な運動、普段から脳を積極的に使うことに加え、ぜひ毎日の生活の中で香りを意識していただきたいと思います。
物忘れや認知症の予防の一助になるのではないかと私は考えています。

記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/©カラダネ

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