1. ニュース&コラム
  2. 睡眠時無呼吸症候群の対策❷|気道を狭める【舌の沈み込み】を防ぐ「舌回し」

睡眠時無呼吸症候群の対策❷|気道を狭める【舌の沈み込み】を防ぐ「舌回し」

解説日本歯科大学教授
小出馨

潜在患者数は2000万人といわれている「睡眠時無呼吸症候群」は、高血圧や心筋梗塞・脳卒中、突然死さえも招く恐れがあります。

この記事では、舌の筋力低下が原因で起こる「睡眠時無呼吸症候群」を防ぐと話題の体操「舌回し」について、考案者である日本歯科大学教授の小出馨先生に話をお聞きしました。

もちろん、睡眠時無呼吸症候群の可能性がある方は、睡眠外来や耳鼻咽喉科、呼吸器科を受診したうえで、記事で紹介する「舌回し」を試してみてください。

舌や舌周辺の筋肉が弱まりやすい現代人

私たちの舌は、単に味を感じるだけでなく、食べたり、話したり、呼吸をしたりするときなどに、重要な役割を果たす器官です。ところが現代人は、食べるときの噛む回数が減ったり、口呼吸が習慣化したりして、舌や舌周辺の筋肉が弱まります。

s_舌筋.jpg

舌や舌周辺の筋肉を鍛えると、咀嚼力(噛む力)の向上、誤嚥(異物を気管内に吸い込んでしまうこと)防止、噛み合わせのズレ予防、唾液の分泌促進、顔のシミ・シワ予防といった、多くの健康作用を得ることができます。さらに、イビキや睡眠時無呼吸症候群の改善も期待できます。

そのため、歯科医師の私がすすめているのが「舌回し」です。中国の蘇先生が学会で紹介した内容と、従来から口周囲の筋肉を鍛える体操と示されていたもの参考にして治療に取り入れ、大きな成果を上げています。

イビキや睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に舌根(舌の最も奥の部分)が後方に沈み込み、気道(呼吸をするときに空気が通る道)が狭まることが大きな原因です。舌回しを行うと、舌を前上方へ引き上げる舌骨上筋群や外舌筋を鍛えることができ、イビキや睡眠時無呼吸症候群の症状を軽くすることができます。

舌回しでは、基本の「歯ぐきなぞり」に加えて「舌出し」「上あご押し」という3つの動作を行います。

舌の筋肉を強化!「舌回し」のやり方

歯ぐきなぞり


s_1.jpgしっかり口を閉じて、舌の先で歯ぐきの表側をなぞるように、舌をぐるりと回す。右回りを10回、左回りを10回行い、慣れてきたら、それぞれ20回程度まで増やす。1日3度、食後に行うのがおすすめ。
s_歯ぐきなぞり切り抜き-1.jpg舌の先で歯ぐきの表側をなぞる。上の歯ぐきの端から端(舌先の届く範囲でいい)をなぞったら、下の歯ぐきも同様に行い、2秒程度かけて舌先をぐるりと1周させる。

舌出し

s_unnamed.jpg姿勢を正し、顔を少し上に向けた状態にして舌をつけ根から思い切り前に突き出す。この状態で、舌を上に向けて5秒、下に向けて5秒キープ。これを3回くり返す。
s_4.jpg上下方向への運動が終わったら、同じように舌を出した状態で、舌を右斜め下に5秒、左斜め下に5秒キープ。これを3回くり返す。終わったら脱力して、自然な状態に戻す。

上あご押し

少し上を向いて、軽く口をあける。そして、前歯の裏から5ミリ内側の上あごに、舌先を当てる。10秒間強く押し、5秒休む。これを3回くり返す。

慣れてきたら舌先だけでなく、舌のまん中や根もとの部分も、同時に上あごに強く押しつけるようにして行う。さらに余裕のある人は、口をできるだけ大きくあけて舌をより強く押しつける。

舌回しを続けていると、しだいに舌の力(舌圧)が強くなっていきます。私の研究では、毎日行えば、およそ2週間で作用が現れてきます。その後、3カ月を過ぎるまでどんどん舌圧が強くなっていくことがわかりました。そのため、短期間でやめてしまわず、3カ月間はぜひとも続けてください。そのあとも習慣にして、「舌回し」を継続してもらえれば、作用が持続します。

なお、舌回しを行って、あごや首に痛みの起こる人、舌や口内に傷のある人は、行わないようにしてください。

【症例報告】2〜3週間で睡眠時無呼吸症候群が改善

私は、歯科医師として「舌回し」を、歯の噛み合わせの改善治療の補助として活用しています。その中には、イビキや睡眠時無呼吸症候群の症状がよくなったと報告してくる人が少なくありません。
以下は、健康情報誌『わかさ』で2017年に紹介されたものをウェブ用に再編集したものです。

最近、イビキをかかなくなったとうれしそうに報告してくれたのは、新潟市に住む主婦の佐野香子さん(仮名・60歳)です。佐野さんは、更年期を迎えたころから歯の噛み合わせに異常を感じ、ときには頭痛にも悩まされるようになっていました。

噛み合わせの異常の原因はさまざまですが、舌やくちびるの筋肉の機能が低下したり、バランスがくずれたりして、舌骨の位置が下がることも大きく関係しています。こうした場合、あごまわりの筋肉のバランスを取ることが、噛み合わせの矯正に役立ちます。それとともに、舌回しは、気道が狭くなることを防ぐため、イビキや睡眠時無呼吸症候群も改善できるのです。

実際に、舌回しを始めて2~3週間後から、佐野さんのイビキは軽くなり、それにつれて呼吸が止まることもほとんどなくなったと、ご主人からいわれているとのことです。佐野さんは、気にしていた二重あごも目立たなくなったといっていました。これも、リンパの流れがよくなり、舌まわりの筋肉のバランスが取れたためでしょう。そして、二重あごの改善が、気道の確保にも役立っているのです。

s_Fotolia_89832111_Subscription_Monthly_XXL.jpg佐野さんは、舌回しを始めて2~3週間で作用を感じましたが、3カ月までは舌圧(舌の力)が上昇することが私たちの研究で明らかになっているので、今後もさらに改善していくはずです。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

この記事が気に入ったらいいね!しよう