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【難聴セルフ診断】専門医が(難聴の原因・種類・治療法)を全解説。放置は危険

解説川越耳科学クリニック院長
坂田英明

耳が聞こえない、耳が聞こえにくい、耳が遠い……
そうした難聴の多くは放置されて知らぬまに進行しがちといいます。これは、同じく耳の不調の「耳鳴り」と違って、わずらわしさをいつも感じないためともいわれます。

しかし、難聴は実は危険な病気とわかってきました。早めに不調に気づいたら、一刻も早く対策をしましょう。川越耳科学クリニック院長の坂田先生に難聴の原因、種類や手術、自力対策について解説いただきました。

難聴とは?なぜ難聴が起こるのか?

難聴とは?

●人の話をよく聞き間違える。よく聞き返す
●耳が遠いといわれる。耳が遠いと自覚している
●声をかけられても気がつかない
●耳をふさがれたような違和感がある
——以上は、大半が「難聴」によるものと考えて間違いないでしょう。耳で音を認識する「聴覚」に何らかの障害が起こって、聞こえが悪くなった状態、それが難聴です。

外耳や内耳などに異常が起こるのが原因

難聴を理解するために、まずは音が「聞こえるしくみ」を簡単に説明しましょう。
私たちの耳は、耳介(じかい。耳の外の部分)、外耳(がいじ。耳介から鼓膜までの通路)、中耳(ちゅうじ。鼓膜から内耳までの空間)、内耳(ないじ。脳に音の電気信号を伝える器官)から構成されています(下の図を参照)。
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まず、空気中を伝わってきた音は耳介に集められ、外耳道を通じて鼓膜を振動させます。次に、その振動が中耳にある耳小骨から内耳へと伝わり、内耳の蝸牛(かぎゅう。カタツムリの形)の中を満たしているリンパ液を揺らします。

すると、蝸牛の中に約1万5000個もある有毛細胞がリンパ液とともに揺れて摩擦による電気信号を出します。その電気信号が約3万本もある聴神経から脳へと伝わって「音」として認識され、聴覚が生まれるのです。
以上のように、耳の器官は巧みに連携して聴覚を生んでいます。このしくみのどこかに異常が起こることが難聴の原因です。

難聴の種類を詳細解説。中途失聴や軽度難聴など

難聴の対策をするには、まずは「難聴をよく知る」ことが重要。難聴にはいくつかの種類(分け方)がありますので、順番にわかりやすく説明します。

難聴の種類①〜いつから難聴になったか?

いつから難聴になったのかで、まず大別できます。
生まれつき聴覚に障害がある場合を「先天性難聴」、病気など何らかの原因で途中から耳の聞こえが悪くなる「後天性難聴」があります。
このうち、中高年になるにつれて起こる難聴は後天性難聴に分類され、「加齢性難聴(老人性難聴)」と呼ばれます。

難聴の種類②〜症状が重いか軽いか

難聴は、どの大きさの音が聞こえないかによっても種類が分かれます。具体的には、音の大きさの単位、dB(デジベル)をもとに
軽度難聴(25〜50dB未満。ささやき声が聞き取りにくい)
中等度難聴(50〜70dB未満。大きな声なら聞き取れる)
高度難聴(70〜90dB未満。耳もとではっきりと話してもらえれば聞き取れる)
重度難聴(90dB以上。電話の呼び出し音が聞こえない)
の4つに分類されます。

このうち軽度難聴は、日常会話に少し不自由する程度ですが重度難聴になると生活音のほとんどが聞こえなくなり、さらに進むと完全に聞こえなくなる可能性もあります。

伝音難聴と感音難聴の違い。加齢性難聴は高音の聞こえの悪さから始まる

難聴の種類③〜耳のどの部分が障害されているか?

次に耳のどの部分が障害されて難聴が起こっているかによっても種類が分かれます。
伝音難聴……外耳から中耳にかけて障害が起こるのが原因です。
感音難聴……内耳から聴神経、脳にかけて障害が起こるのが原因です。
上記の両方が合併した「混合性難聴」や、ストレスなど心因性による「機能性難聴」もあります。

このうち、伝音難聴は、耳垢(あか)などで外耳がふさがったり、鼓膜に穴が空いたり、中耳に体液がたまったり、耳小骨が振動しにくくなったりして起こります。
一方、感音難聴は、蝸牛の中にある有毛細胞が倒れたり、絡んだりして、摩擦による電気信号をうまく発生できなくなって起こります。

加齢性(老人性)難聴は感音難聴の一つ

伝音難聴は、音の振動の伝わり方に原因があるので耳垢を取り除いたり、外耳炎・中耳炎などの治療を行ったりすれば改善が期待できます。ところが、感音性難聴は、デリケートな内耳の組織が損傷して神経伝達に不具合が起こるため、慢性化すると自力での改善はほとんど見込めません。
ちなみに、中高年の人に多発する加齢性(老人性)難聴は、感音難聴に分類されます。

加齢性難聴は会話で子音が聞き取れなくなる

加齢性難聴を含めた感音難聴は、音の周波数(Hz ヘルツ)でいうと最初は高音(2000Hz以上)から聞こえにくくなります。これを高音障害型といいます。
通常、私たちは20〜2万Hzの音を聞き取れるとされますが、感音難聴が進行すると2000Hz以下の音まで聞き取りにくくなり、会話がスムーズではなくなります。

特に、1000〜2000Hzの聴力が衰えると、会話の子音(特にさ行・か行・た行)が聞き取りづらくなります。年齢を重ねると、話し相手に「え?なに?」と聞き返すことが増えるのは、実は子音がはっきりと聞こえなくなるためです。
ですから、特に中高年の人が会話をしていて、たびたび聞き漏らしがあったり、聞き間違いが増えたりしたら加齢性難聴の疑いが濃厚でしょう。

ちなみに、難聴を周波数の聞こえ方で分類すると、低音が聞き取りにくい「低音障害型」(中耳炎・耳管狭窄症・初期メニエール病の人に多い)、中音が聞き取りにくい「谷型」(聴神経腫瘍の人に多い)、全音域が聞き取りにくくなる「聾型(ろうがた)」(内耳炎・突発性難聴・先天性奇形の人に多い)などがあります。
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難聴は音の強弱(dB)だけでなく伝音や感音(あるいは混合性・機能性)、音の高低(Hz)ともかかわっており、さまざまなタイプに分かれることがおわかりいただけたでしょうか。

難聴を招く生活、なりやすい人

難聴は65歳以上の3人に1人にある

現在、日本で加齢性難聴は1000〜1500万人と推計されています(愛知医科大学耳鼻咽喉科 内田育恵特任准教授らの研究ほか)
罹患率は、65歳以上が25〜40%、75歳以上が40〜60%、85歳以上が80%以上とされ、年齢が上がるほど高率になるのは世界的な傾向です。

WHO(世界保健機関)によると、世界には中等度難聴者が約3億6000万人おり、65歳以上の3人に1人が加齢性難聴であると報告されています。聴力の衰えは50代から目立ち始め、加齢性難聴へと進行するので、異常を察知したら速やかに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

難聴の重大原因はカフェインや喫煙、騒音など

私は、数多くの難聴の方を診てきました。難聴の原因として、カフェインのとりすぎ、毛染め液の使用、喫煙、化学薬品・農薬・有機溶剤(ペンキ)を使う仕事、騒音にさらされる環境、睡眠不足やストレスの多い生活、高カロリーの食事、運動不足があげられると考えています。
そうしたことが脳に電気信号をおくる内耳の働きや、音を認識する脳の働きを妨げると推察されるのです。

加齢性難聴になりやすいのは男性、肥満や糖尿病の人

加齢性難聴については、さまざまな疫学調査が行われ、かかりやすい人の傾向がわかっています。その主なキーワードは、「男性」「騒音」「喫煙」「肥満」「糖尿病」「動脈硬化(血管の衰え)」。
例えば、騒音の多い環境で働いている男性の喫煙者で、太っていて糖尿病を患っており、動脈硬化の進んでいる人は加齢性難聴の予備群といえます。

女性が男性よりも老人性難聴にかかりにくいのは、女性ホルモンに内耳を保護する作用があるためと推察されます。また、騒音は内耳を直接傷める原因になり、喫煙・肥満・糖尿病・動脈硬化も内耳に悪影響を及ぼすと考えられます。
これらは、あくまで大規模調査のデータを解析して導き出された一つの傾向ですが、予防策を考えるうえで重要なヒントになるでしょう。

難聴コラム①耳鳴りは難聴の初期症状?
耳鳴りは難聴と深い関係があります。ドイツで行われた調査では、耳鳴りがある人の約9割が難聴を併発していたそうです。
病的な耳鳴りは、「キーン」という高音や「ジージー」というセミの鳴き声のような音、「ザーザー」という雨が降っているような音が、昼夜に関係なく鳴り響きます。こうした病的な耳鳴りの裏には、耳の病気、神経や脳の病気、薬物中毒、ストレスといった原因が潜んでいます。
特に、耳の病気による耳鳴りが多く、内耳性が9割近くを占めます。そのため、感音難聴を併発するケースが少なくありません。さらに、内耳性の耳鳴りが起こると、体の平衡機能をつかさどる三半規管、耳石器に障害が起こり、めまいを招くこともあります。


加齢性難聴の人が耳鳴り、めまいに悩まされてることが多いのはこうした理由からなのです。

難聴の放置が危険な理由|「認知症を招く」「短命になる」可能性も

加齢性難聴を軽視し、放置していてはいけません。耳の聞こえが悪くなると日常会話がスムーズにできなくなるだけではないのです。
というのも、難聴の人はそうでない人に比べて認知症やうつ病にかかりやすくなる可能性があるとの研究報告が、米国やフランスでも出ているのです。

本来、脳は、耳から入ってくる音の情報を絶え間なく受けています。ところが、難聴になると外界から脳へ伝わる音の刺激が乏しくなり、認知力が衰えたり、ウツ的な気分に陥ったりするようになるのです。
音を聞くこと……それは、脳を刺激していることになるのです。

難聴コラム②寿命にも関係する?
難聴の人は短命になる可能性があるそうです。まず、高崎市の倉淵地区で行われたコホート調査(住民の体質や環境、生活習慣を調べ、その後、病気の発症との関連性を調べる研究調査)によると、難聴のある男性は、難聴や視力障害のない人に比べて死亡率が3・10倍高いことが明らかになりました。

アイスランドの住民4926人を調べた研究では、視覚障害と難聴が両方ある場合、死亡率が1.43倍高くなるという結果が出ました。視力障害だけの人の死亡率は、健康な人と大差なかったので、難聴が死亡率を高める要因になったと推察されます。

難聴の治し方〜自力対策や手術法など

中高年・高齢の人で耳が遠くなった人は、それ以上の聴力低下を防ぐために自力対策(生活の見直し)が必要でしょう。具体的にいうと、
●コーヒー、紅茶、緑茶などカフェインが多いものを飲みすぎない
●有機溶剤の入った毛染めをしない(毛染めをするなら天然素材のものを使う)
●禁煙する
●ペンキを使うときはマスクをする
●騒音に耳をさらさない
●運動する
●高カロリー食は控える
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●睡眠時間を十分に取る
●過度なストレスはさける
といったことが重要と考えています。

そのうえで耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けてください。外耳炎・中耳炎・メニエール病といった病気があるなら、その治療も行うことになります。
難聴の治療方法はさまざまです。しかし、加齢性難聴の場合は聴力の回復を望むよりも現存する聴力を活用し、維持することが重要なポイントになります。

そこで、一般的には補聴器の装用がすすめられます。補聴器は聞き取りの調整(フィッティング)をうまく行えば、簡単に聴力を補える場合が多々あります。街の眼鏡屋さんなどでも補聴器を扱う場合がありますが、調整を確実に行うために専門医を頼ってください。

手術で難聴を改善。人工内耳は年間1000件以上の手術実績

補聴器を装用してもうまく聞こえない場合には、手術による「人工内耳の装用」という選択肢があります。人工内耳は、40年前から世界中で使われている埋め込み式の人工臓器で、ほかの人工臓器と比べても開発がかなり進んでおり、完成度の高い医療機器です。
日本耳鼻咽喉科学会によると、日本では年間約1000件以上の人工内耳手術が実施されていると報告されています。
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人工内耳の体内装置(イラスト)。急速に進化しており、小型化が進んでいる

たとえ全聾でも、内耳と聴神経の機能が残っていれば、人工内耳で聴覚の回復が望めるのです。人工内耳の装用には適応の条件がありますが、それは別の記事で解説します。

難聴コラム③人工内耳はオーストラリアが発祥
人工内耳は、体内装置(インプラント)を埋め込んで内耳に電極をつなぎ、体外装置(サウンドプロセッサ)で拾った周囲の音を電気信号に変換して内耳に送信する人工臓器で、オーストラリアが発祥です。
オーストラリアというと意外に思われる人もいるかもしれませんが、現在、健康医療の分野で急速に発展しており、世界的にも評判が高いといいます。


人工内耳の歴史は古く1960年代にさかのぼります。豪州(オーストラリア)の耳鼻咽喉科医、グレアム・クラーク博士は、米国のある論文を読んで人工内耳の着想を得ました。
論文の内容は、重度難聴の人の耳に電気刺激を与えると聴力が回復するというもの。それがきっかけとなって、クラーク博士は埋め込み可能な聴覚装置をひらめいたそうです。

クラーク博士の開発した聴覚装置は医療界に広まり、その潮流を汲んだ画期的装置が産み出されています。そして、これまで全世界で数十万人規模の人工内耳手術が実施されているのです。

日本では1985年に最初の人工内耳手術が行われ、これまでの実施件数は1万件以上。すでに30年以上の歴史がある非常に安全な手術です。保険適用にもなっており、今後ますます普及していくと考えられています。


私たちの耳は、使わなければ使わないほど衰えます。とにかく、加齢による難聴を老化現象といって放置するのはよくありません。専門医の治療を受け、聴力の回復に努めることが健康長寿を実現するために重要である点を忘れないでください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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