【専門医解説】痔の症状セルフ診断(原因・種類・治し方)〜痔の大半は手術不要〜|カラダネ

カラダネ(わかさ出版)
医師や専門家とあなたをつなぐ、
健康・食・くらしのセルフケアが見つかる情報サイト

【専門医解説】痔の症状セルフ診断(原因・種類・治し方)〜痔の大半は手術不要〜

解説 平田肛門科医院院長
平田雅彦

痔はとても身近な病気です。その証拠に、なんと日本人の成人の3人に1人は痔で悩んでいるという調査結果もあるほど。とはいえ、手術が必要になるケースは少なく、ほとんどが薬や生活習慣の見直しで改善することができるといいます。もちろん、肛門科を受診して専門医に診断と治療をしてもらうことが大前提です。

この記事では、3つの痔のタイプと症状を解説します。
痔の改善のために、みなさんご自身ができることもありますので、参考にしてみてください。

痔の重大原因は、肛門の免疫が乱れるため

みなさんは「排便時に痛む、出血する」「肛門からいぼがはみ出す」「お尻から膿がにじむ」などの症状に心当たりはないでしょうか。それらはいずれも痔のサインです。

痔とは、肛門の病気の総称で、肛門周囲の組織が炎症を起こすことで発症・悪化します。痔は、珍しい病気ではありません。ある製薬メーカーの調査によると、日本人の成人の3人に1人は痔に悩む「痔主(じぬし)」であると報告されています。
また、米国のある病院で外来患者全員に肛門科の診察を受けてもらったら、86%に痔が認められたといいます。世界的に見ても痔は一般的な病気なのです。
 
では、なぜ多くの人が痔に悩まされるのでしょうか。それは、肛門の健康を守る免疫(病気から体を守るしくみ)が生活習慣や体質によって乱れ、炎症が起こるからです。

肛門の免疫を乱す原因は7つあります。
それは、❶排便の異常(便秘・下痢)、❷肉体疲労、❸ストレス、❹冷え、❺飲酒、❻生理(女性)、❼長時間の座り仕事です。
そもそも、毎日のように便が通過する肛門は、清潔とはいえません。にもかかわらず、肛門が健康でいられるのは、細菌の攻撃力に負けない防御力があるからです。これを「局所免疫」といいます。

ところが、❶~❼の影響で局所免疫が低下すると、細菌の攻撃力が勝って肛門に炎症が起こり、痔を発症することになるのです。また、物理的な影響で痔が起こることもあります。特に、便秘・下痢は肛門に直接炎症を引き起こす原因になるので注意しなければなりません。

痔は3種類に大別できる。原因と症状からセルフ診断

ひとくちに痔といっても、その原因や症状によって「痔核(じかく)」「裂肛(れっこう)」「痔ろう」の3種類に分けられます。それぞれについて説明しましょう。

痔核(いぼ痔)

痔核は、肛門の内外にできる動静脈瘤の一種です。肛門周辺には、便やガスがもれないように血管が密集しています。しかし、便秘でいきんだりして肛門に負担のかかることをくり返していると、血管が切れて出血したり、血流が悪くなったりして血管周囲の結合組織が増殖します。これが痔核となって肛門の内外に現れるのです。

歯状線(肛門の約2センチ奥にある境界)よりも内側にできるものは内痔核(ないじかく)、外側は外痔核(がいじかく)と呼ばれています。
通常、内痔核は痛みがありません。出血や肛門からの脱出で気づくことが多く、進行の度合いによってⅠ~Ⅳ度の4段階に分類されます。手術が必要になるのは、脱出した痔核を指で戻さなければならないⅢ度以上の場合です。

一方、外痔核の場合は強い痛みが現れますが、外痔核で手術が必要になるケースは、ほとんどありません。3つの痔の中で、痔核は半数以上を占めています。

裂肛(切れ痔)

裂肛は、いわば肛門の外傷です。硬い便が出たときなどに歯状線より外側の肛門上皮が裂けて、激しく痛んだり、出血したりします。このように肛門が裂けるのは、主に背中側です。初期は単純性裂肛といい、肛門上皮の再生力が残っているので、患部を清潔にして消炎薬を塗れば治ります。

しかし、単純性裂肛をくり返すとポリープや潰瘍ができて、肛門上皮が再生できなくなります。これを慢性潰瘍性裂肛といいます。その段階に進行すると肛門が狭くなり(肛門狭窄という)、手術が必要になるので要注意です。裂肛は、便秘症の女性に多く見られます。

痔ろう(あな痔)

痔ろうは、歯状線のところから通じている肛門腺に膿がたまって激しく痛み、お尻から膿が出る病気です。肛門腺の奥には、肛門腺窩というポケットがあります。そこに便が入ると化膿する場合があるのです。
中にたまった膿は、1本の道を作って肛門やお尻に漏れ出します。膿が出たら、化膿したところを取り除く手術を必ず受けなければなりません。
なお、痔ろうは強くいきんで排便する男性に起こる傾向があります。

肛門科の受診が不可欠。痔の大半の人は手術不要

ところで、痔に悩んでいる人の多くは「肛門科を受診したら手術をすすめられるに違いない」と恐れているようですが、心配することはありません。手術が100%必要な痔ろうを除くと、早期に治療をはじめれば保存療法でよくなることがほとんどです。ちなみに、先進国の痔核の手術率はアメリカが4%、イギリスが5.5%ほどです。

当院の場合、痔核の手術率は12%ですが、早期に受診する患者さんが増えれば1ケタ台まで下がると思われます。たとえ手術が必要になっても、昔に比べて技術が進歩しているので、痛みは少なく、入院期間も短くてすむので、怖がることはありません。
痔核、裂肛なら、基本的に保存療法でおおむね治ると考えていいでしょう。痔の保存療法は、薬物治療と生活指導の2つが柱になります。薬物治療で用いるのは、坐薬や塗り薬、内服薬です。こうした薬には、痛みを軽減したり、炎症を抑えたり、便を軟らかくしたり、細菌を殺したりする効果があります。

生活指導では、座りっぱなしをさける、飲酒量を減らす、疲労やストレスをためない、排便後に肛門を洗う、といったことを助言します。こうした治療や自力ケアで、多くの痔は改善するのです。

ただし、注意してほしいことがあります。肛門からの出血などの症状は、必ずしも痔が原因とはかぎりません。検査の結果、大腸ガンと診断されることもあります。ガンを早期発見するためにも、ためらわず肛門科を受診することをおすすめします。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/©カラダネ © Fotolia

関連記事

この記事が気に入ったらいいね!しよう