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【糖尿病とはどんな病気?】血糖スパイクやジェットコースター血糖、隠れ高血糖まで医師が全解説

解説 AGE牧田クリニック 院長
牧田善二

糖尿病という病名は多くの人が知っているかと思いますが、いったいどんな病気なのかをくわしく知らない人も多いと思います。
また最近は、糖尿病に関して血糖スパイクといった新しいワードも出てきて話題になっています。

この記事では、血糖値の上昇とは?というところから、最近話題のキーワードまで専門医の牧田善二先生にくわしく解説していただきました。
糖尿病や高血糖は、自覚症状が少ないためとにかく軽視されがち。軽視せずに、血糖値をコントロールするために専門医と一緒に治療に取り組んでください。

食後2時間血糖値が140mg/dL未満が正常

糖尿病の患者数の増加に伴い、新聞やテレビ、雑誌などでは、糖尿病に関するさまざまなキーワードが取り上げられています。そこで、この記事では糖尿病とはどんな病気か、またそれぞれの用語について解説していきます。

どんな人でも、食事をした直後は血糖値が一時的に上昇し、食後2~3時間で戻ります。このとき、インスリン(血糖を調整するホルモン)の分泌が正常なら、血糖値が140mg/dLを超えて急上昇するようなことはほとんどありません。ちなみに、正常な血糖値とは、空腹時血糖値が70~109mg/dL、食後2時間血糖値が140mg/dL未満とされています。

糖尿病ではない正常な人の血糖値は、食後の上昇がゆるやかで、時間の経過とともにまた正常値に戻ります。糖尿病の人の血糖値はずっと高いままです。

血糖スパイク、ジェットコースター血糖とは?隠れ高血糖とは?

ところが、中には、食後に血糖値が急上昇し、その後すぐに急降下して正常値に戻ることを食事のたびにくり返している人がいます。

食後高血糖値.jpg血糖値の急激な上昇・降下は「血糖スパイク」、もしくは「ジェットコースター血糖」と呼ばれます。いずれも、急激に上昇した血糖値を下げるためにすい臓からは大量のインスリンが放出され、その後に血糖値が急降下することを表すキーワードです。

このように激しく血糖値が変動すると、やがてすい臓が疲弊し、インスリンの分泌も悪くなって血糖値が下がらなくなり、やがて糖尿病へと進みます。さらに、高血糖の状態は、血管を傷つけてもろくすることにもつながるので、動脈硬化などのリスクも上昇します。

この血糖値の急上昇・急降下のやっかいなところは、健康診断や人間ドックで血糖値を測っても、ほぼ異常が見つからないということです。通常、健康診断や人間ドックでは、空腹時の血糖値やヘモグロビンA1cを測定します。しかし、血糖値の急上昇・急降下を起こしている人の場合、空腹時の血糖値は正常であることが多いのです。

また、ヘモグロビンA1cは、過去1~2ヵ月間の血糖値の平均を表す数値です。食後の血糖値がどのように変化しているかまではわかりません。このように健康診断では異常が見つからなくても、血糖値の急上昇・急降下を起こしている状態は「隠れ高血糖」と呼ばれています。

糖尿病認知症とは?

また、最近の研究により、糖尿病の患者さんは認知症になりやすいということがわかってきました。

高血糖_糖尿病以外のリスク.jpg九州大学の研究によると、糖尿病のある人は、そうでない人に比べ、「アルツハイマー病」や「血管性認知症」の発症リスクが2~4倍に上昇するというのです。
アルツハイマー型認知症は、脳内に「アミロイドβ」という不要なたんぱく質がたまったことにより脳細胞が死滅してしまうことが原因で発症します。アミロイドβとインスリンを分解するのには同じ酵素(体内の化学反応を助ける物質)が使われます。

そのため、高血糖を下げようとしてインスリンが大量に分泌されると、酵素はインスリンを分解するのに忙しく、アミロイドβの分解まで手が回らなくなり、その結果、認知症が進行してしまうのです。

高血糖が原因の認知症は、アルツハイマー病とはタイプが違う「糖尿病性認知症」と呼ばれ、今、大きな社会問題となっています。糖尿病性認知症は、注意力が低下し、終始ボーッとしていたり物事の処理能力が低下したりするのが特徴です。糖尿病性の場合は、血糖値を適切にコントロールできれば、認知症の進行を抑えたり、症状を改善させたりすることも不可能ではありません。

いずれにせよ、中高年で、現在、高血糖状態だったり、すでに糖尿病と診断されていたりする人は、将来の認知症を防ぐためにも、適正な血糖値のコントロールが必要です。必ず病院で専門医に診てもらうようにしてください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/©カラダネ © Fotolia

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