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【糖尿病の食事療法】糖質制限vsカロリー制限、どっちが優位?【食べていい食品の早見表つき】

解説 高雄病院理事長
江部康二

糖尿病の人の食事療法としては、「カロリー制限食」と「糖質制限食」があるのはご存じでしょう。

いったい、どっちがいいの?という疑問についてはいろいろな考え方がありますが、糖質制限については、最近では世界的な医学雑誌「ランセット」においてもその作用が報道されており、やはり注目を集めているのは間違いありません。

日本における糖質制限研究の第一人者でもいらっしゃる高雄病院理事長の江部康二先生に解説していただきました。江部先生は、ご自身も糖尿病を患い、糖質制限を食事療法として取り入れ改善させた経験をお持ちです。

なお、糖尿病の人は治療においての自己判断は絶対に禁物です。必ず病院で治療方針などを主治医と相談することが重要なことを忘れないでください。

糖尿病でカロリー制限しても合併症へ進む人もいる

現在、糖尿病の治療は、食事療法・運動療法・薬物療法が3本柱になっています。その中でも、糖尿病の患者さんが医師から最初に指導されるのが、低カロリー・低脂肪の食事療法である「カロリー制限」でしょう。
糖尿病の発症には、高カロリー・高脂肪の食生活が深く関係していて、1日の摂取カロリーを減らせば高めの血糖値が下がると考えられてきたからです。

カロリー制限食は、食事のボリュームは少なく、味けない質素なおかずが中心です。何より、めんどうなカロリー計算が必須なので、多くの人が長続きせずに挫折してしまうのです。
また、カロリー計算を念入りに行ってカロリー制限食を続けたにもかかわらず、血糖値のコントロールが難しくなって糖尿病が悪化し、怖い合併症を招いてしまう人も少なくありません。

糖質制限とは米など糖質の多い食品を控える食事法

実は、私自身も16年前に糖尿病を発症し、カロリー制限食にも取り組みました。しかし、血糖値は期待どおりには、下がらなかったのです。そして、カロリー制限食に疑問を感じた私は当時すでに兄が取り入れていた、糖尿病の新しい食事法「糖質制限」に切り替えました。
 
糖質制限食は、簡単にいえば米・パン・麺類などの糖質が多い主食を抜いて、肉・魚・大豆食品・卵・野菜などのおかずをたっぷりとる食事法です(くわしくは後述)。食後の血糖値の急上昇を招く糖質の摂取を控えるだけで、血糖値が着実に改善していきます。

私が診療を行う京都・高雄病院でも、糖質制限食の指導を始めてから、多くの人が糖尿病を克服してきました。しかし、日本の糖尿病治療は保守的で、いまだに多くの医療機関でカロリー制限食が指導されているのが現状です。
糖質制限食に対する否定的な意見や批判も少なくありません。専門家どうしが、「糖質制限食vs.カロリー制限食」で議論を交わしつづけてきたのです。

医学雑誌「ランセット」に掲載された内容とは?

そんな論争も、ついに決着がつくのではないかと私は考えています。
2017年8月、世界で最も権威のある医学雑誌の一つである『ランセット』のインターネット版に、糖質制限の優位性を認める内容の論文が掲載されたからです。この論文は、カナダ・マックマスター大学が発表したもので、5大陸18ヵ国、13万5000人以上を対象に約7年半にわたる追跡調査の結果がまとめられています。その結果、次の事実が導き出されました。

❶炭水化物(糖質+食物繊維)の摂取比率の多さは全死亡リスクを上昇させる
❷種類に関係なく脂質をとると全死亡リスクが低下する
❸脂質をどれだけとるか、どんな脂質をとるかは、心血管疾患や心筋梗塞と関連しない

論文の内容を簡単にまとめると、「炭水化物をとるほど死亡リスクが高くなる一方で、脂質の摂取比率が多いほど死亡リスクは低下する」ということです。残念なことに、多くの医療機関では、ランセットの論文とは真逆の食事指導が行われています。

カロリー制限食で糖質を摂取する割合は、50〜60%と高く、脂質の摂取を制限しているので、死亡リスクを高めることにつながってしまうのです。

糖質制限ならステーキも食べられる

それでは、食後高血糖を改善に導く糖質制限食のやり方を紹介しましょう。
3食で、ご飯やパンなどの主食を抜いて糖質の摂取量を減らします。その代わりに、たんぱく質や脂質で必要なカロリーを補います。
糖質を含まず、たんぱく質・脂質の多い肉や魚は好きなだけ食べられるのです。しかも、めんどうなカロリー計算は不要です。

お酒も蒸留酒や辛口ワインなら適量飲めます。ですから、ウイスキーで晩酌しながら、脂身のあるぶ厚いステーキを食べることもできます。
このように、糖質制限食は、ボリュームが多くて満足感が得られ、見た目も豪華なのが特徴です。

糖質制限食に取り組むに当たっては、まず下の表で食べていい食品(血糖値を上げにくい食品)と、さけたほうがいい食品(血糖値が上がりやすい食品)を知ってほしいと思います(下の表参照)。
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この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/©カラダネ © Fotolia

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