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下肢静脈瘤の解消には足の甲の「抜け道血管」を塞ぐのが重要。「足湯」は逆効果

解説 サトウ血管外科クリニック院長
佐藤達朗

足のむくみや下肢静脈瘤の症状に悩む多くの人が「抜け道血管」に原因があると、8,000人以上の下肢静脈瘤の患者さんを診てきた佐藤達朗先生は話します。
佐藤先生が下肢静脈瘤の基本的な情報について解説している記事は、下記の関連記事をご覧ください。

抜け道血管とは、下肢静脈瘤の人の足の甲にあるというのですが、いったいどのようなものなのでしょう。佐藤先生に解説していただくとともに、多くの人がやりがちで実は間違っている、足のむくみ対処法についても教えていただきました。

もちろん下肢静脈瘤が疑われる人は、必ず専門医に診てもらってください。

足の甲に動脈と静脈をつなぐ「抜け道血管」がある

下肢静脈瘤や足のむくみの多くは、足の甲にある抜け道血管が原因と私は考えています。
この抜け道血管は、医学的には「動静脈瘻(どうじょうみゃくろう)」と呼ばれ、実は体のいたるところにあります。そんな抜け道血管が、どのようにして下肢静脈瘤やむくみの原因になるのか、くわしく解説しましょう。

足の静脈には、足の奥深くを通っている深部静脈と、深部静脈から分かれて皮膚の表面を走る表在静脈があります。下肢静脈瘤やむくみの原因となるのは表在静脈です。

表在静脈には、足のつけ根から太ももの内側を通って足首までつながる大伏在静脈と、ひざの裏からふくらはぎの後ろを通ってかかとまでつながっている小伏在静脈があります。この二つの表在静脈は、それぞれ独立した血管と考えられていましたが、実は足の甲でアーチ状につながっていることがわかりました(下の図を参照)。

このアーチ状静脈は、私のクリニックに来院した患者さんの約91%にあることが確認できています。そして、このアーチ状静脈は、抜け道血管を通じて動脈とつながっていることもわかったのです。

アーチ状静脈と抜け道血管2.jpg

抜け道血管が急に開いて下肢静脈瘤を招く

通常、動脈と静脈は直接つながっておらず、毛細血管を通じて結びついています。ところが、足の甲では動脈と静脈が抜け道血管を介してつながっていたため、動脈の血液が静脈へ勢いよく流れ込んでいたのです。
その結果、静脈に圧がかかり、むくみや下肢静脈瘤を起こしていると考えられるのです。

抜け道血管(動静脈瘻)は、通常は閉じていて、緊急時だけ開く性質があります。
例えば、手の指を切断して大量出血した場合、出血で命を落とさないように手の甲にある抜け道血管が開いて血液を直接静脈に流し、指先へ流れていく血液の量を減らすように働きます。
ところが、むくみや下肢静脈瘤のある人は、緊急時でないにもかかわらず、足の甲の抜け道血管が開いてしまっています。そのため、静脈に圧がかかり、むくみや下肢静脈瘤を引き起こすのです。

「足を上げて眠る」「足湯」がなぜ逆効果なのか

むくみや下肢静脈瘤を予防・改善するには、抜け道血管を塞いで静脈にかかる圧を取ることが不可欠になります。
一般的にいわれてきたむくみの対処法として、「足を上に上げて寝る」というものがあります。確かに、足を上げると足にたまった血液は流れて、行っている最中や直後はすっきりします。

ところが、同時に抜け道血管も重力から解放されて開きやすくなるため、足を下ろすと血液が大量に静脈に流れ、しばらくすると足を上げる前よりもむくんでしまうのです。

ちなみに、足先の冷えに悩んでいる人が「足湯」を行うことも、同様の理由からおすすめできません。足湯をすると血流がよくなり温まりますが、抜け道血管も拡張して血流がよくなり、足先に行く血液量が減ります。その結果、足先を湯から出して時間がたつと、急激に冷えてしまうのです。

こうした対処法では、むくみや下肢静脈瘤は改善できません。そこで、私は、自宅で手軽にできる「足の甲テーピング」を考案しました。
足の甲テーピングのやり方は別の記事でくわしく紹介しましょう。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/©カラダネ © Fotolia

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