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【医師解説】認知症予防に「玄米食」と「かかと上げ下げ」を。軽い認知症なら改善の可能性も

解説あしかりクリニック院長
芦刈伊世子

認知症の原因には、脳の神経細胞が死滅してしまうことが挙げられます。
認知症の予防には神経細胞の死滅を防ぐために「脳の血流を増やすこと」が重要とされますが、いったい、どのようにすれば脳の血流がよくなるのでしょうか。

脳と心の病気についてくわしい、あしかりクリニック院長の芦刈伊世子先生に教えていただきました。

認知症の心配がある人は必ず専門医に診てもらったうえで、セルフケアを実践しましょう。

脳の血流悪化で老廃物が蓄積する

「高齢者と女性のための心のケア」を診療の柱にしている私のクリニックには、うつ病や認知症、もしくは認知症ではないかと不安のある患者さんが、数多く来院します。

認知症の中で約5割を占めるアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)は、脳内にアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質がたまることで神経細胞が徐々に死滅し、発症するといわれています

アミロイドβは、もともと脳の神経細胞が作り出す物質で、通常はたんぱく質分解酵素(酵素とは体内の化学反応を助ける物質)によって分解されます。アミロイドβは老廃物として脳に張り巡らされた毛細血管から排出されます。

ところが、年齢とともに脳内の血流が悪くなると排出されにくくなり、徐々にたまってしまうのです。20~30年の間に少しずつ蓄積され、それに伴って神経細胞が減って脳が萎縮(いしゅく)していくため、認知症が進行していきます。

アルツハイマー病の次に多いのは、脳血管性認知症です。
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病によって血管が傷んで動脈硬化が進み、脳梗塞や脳出血が引き起こされた結果、周辺の脳の神経細胞が死滅することで起こります。つまり、認知症の予防には、脳に張り巡らされた血管が傷むのを予防して血流をよくすることが、とても重要なのです。

1日に何度か、かかと上げを。ダンスや将棋もおすすめ

そこで、認知症の予防・改善のためには、脳の血流を増やす生活習慣を実践する必要があります。
まず大切なのは運動習慣です。ラットの試験では、運動で脳の血流がよくなると、記憶中枢の海馬に新しい神経細胞が生まれることがわかっています。

運動は、ウォーキングなどの有酸素運動や筋トレ、ストレッチを組み合わせるのが理想的です。特に有酸素運動は、酸素を十分に取り入れて心拍数を上げ、体全体の血流を増やします。その結果、脳への血流も増えます。

ウォーキングが大変だという人は、壁などで体を支えながら、かかとをゆっくり上げ下げする運動を2~3分行うことを1日に何度もするといいでしょう。
そのさい、運動による作用をよりアップさせるには、運動前に首の下(鎖骨の周囲)・ わきの下・股関節の周囲・ひざの裏・足首の5ヵ所を軽くもんでほぐしておくことです。すると、リンパ液(細胞から余分な水分や老廃物を運ぶ無色透明の液)の流れがよくなり、老廃物の排出がさらに促されると私は考えています。入浴中にのんびり行うのがおすすめです。
 
また、クイズやドリルを解く知的作業、脳ドリルも脳の活性化に役立ちます。東京都杉並区にある浴風会病院の認知症介護研究・研修センターでは、軽度認知障害(MCI)の人が正常範囲に改善した例があるそうです。
その人たちの共通点としては、ダンスなどの運動をしていたこと、知的なゲーム(将棋)をしていたことでした。これらが、脳を活性化させたのではないかと報告しています。
 
軽度認知障害の人は、日常生活に支障はないものの、記憶違いやカン違いが多くなり、何事もめんどうに感じてしまいます。
完全な認知症になる前の軽度認知障害の段階で、運動や脳トレを取り入れて生活を変えれば、脳の萎縮はそのままでも症状の改善する人もいるのです。

玄米を中心とした伝統的な和食で認知症を予防

そしてもう一つ、認知症の予防・改善に大切なのが、食生活の見直しです。
私は、古くから伝わる「食養」を勉強して、体を内側から整え、病気を自然治癒させるそのパワーのすごさに驚いています。
中でも認知症の予防・改善のために、私がおすすめしているのは、玄米を中心とした、伝統的な日本食です。
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玄米には、生命維持に必要な5大栄養素である炭水化物(糖質)や脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル(無機栄養素)が含まれており、食物繊維も豊富です。
玄米の外皮と胚芽には、ビタミンやミネラル、食物繊維、ファイトケミカル(植物化学物質)などの微量栄養素が多く含まれています。

特に胚芽には、炭水化物が効率よく細胞のエネルギー源になるために必要なビタミンB群が多く含まれています。
胚芽を取り去った白米を食べていると、ビタミンB群が不足しやすいため、エネルギー変換が正常に行われず、体内に乳酸が蓄積し、疲れやイライラが出てきやすくなるのです。
 
玄米に少ない栄養素は、ナトリウム、カルシウム、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンCなどです。そこで、副菜に、野菜や海藻、キノコ、豆、ゴマ、魚介類、果物を加えると栄養バランスの取れた食事になります。

たとえ認知症になっても、 玄米を主食にした食生活の改善と運動習慣、脳トレを心がければ、症状がほとんど進行しない例も見られます。反対に、若くても偏った食生活を長く続けていれば、脳の血流が悪化して、セロトニンなどの神経伝達物質が作られるのに必要な栄養素が足りず、認知症につながるうつやパニック障害を発症する人もいます。
食生活の改善に、ぜひ、玄米を取り入れてみてください。

ただし、玄米さえ食べれば誰の脳にもいい影響が現れる!ということではない点はご理解ください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/©カラダネ © Fotolia

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