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【ばね指・腱鞘炎は自分で治せる】医師推奨「腕さすりマッサージ」で激痛が消えた人も

解説 カラダネ編集部

ばね指や腱鞘炎(けんしょうえん)はやっかいです。手指や指のつけ根、手首に痛みとしびれが起こって物を「つまむ」「つかむ」「握る」などの動作がしにくくなり、家事はもちろん歯磨きなどの日常生活すらも大変になるのですから。

腱鞘炎もばね指は、「手をよく使う職業の人」「スマホやパソコン、ゲームをよく使う人」に多く、男女比でいうと女性に多いとされます。
いずれも自分で改善できる可能性もありますので紹介します。
とはいえ、まずは病院で専門医の治療を受けることが基本であることは忘れないでください。

腱鞘炎になりやすい人とは?ばね指ってなに?

腱鞘炎とは、指を動かす腱(骨と筋肉をつなぐひも状の組織)を包んでいる腱鞘が炎症を起こす病気のこと。腱鞘は、腱が骨からはずれないように固定したり、腱がスムーズに動くための滑液を分泌したりしています。
ところが、なんらかの原因で滑液の分泌が滞ると腱と腱鞘の間で摩擦が強まって、痛みを伴う炎症が起こり、指が動かしにくくなってしまいます。

ばね指は、腱鞘炎が重症化してひどくなった状態と考えていいそうです。進行すると腱鞘が狭窄を起こし、指を伸ばすときに「パキッ」という引っかかりを感じるのが「ばね指」です。

いずれも、手を酷使することで発症し、最近ではスマホなどを多用する若い女性にも多いようです。

ばね指や腱鞘炎は筋膜の癒着が原因?

ばね指や腱鞘炎は真の原因がわかりにくく、治りにくい症状ですが、最近になって筋膜(きんまく)が原因に関係しているのではないかといわれます。サクラ咲くクリニック院長の長根忠人先生は次のように話します。

「筋膜という言葉が最近よく使われるようになりましたが、十分に理解している人は少ないのかもしれません。例えば、鶏肉の皮をはぐと皮と肉の間に薄い半透明の膜があることをご存じでしょうか。これが筋膜で、もちろん人間にもあります。

本来、筋膜は表面がなめらかで柔軟性に富み、ピンと張って体の組織をピタリと包み込んでいます。ところが、酷使すると筋膜が重なったり、隣り合う筋膜と癒着したりして、痛みを招くことがあるのです。
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今や筋膜の癒着があらゆる慢性痛の原因ではないかと考える人も増えており、腱鞘炎やばね指などもその可能性があります。実際、筋膜の癒着を改善させる筋膜リリース(リリースとは「ゆるめる」という意味)で、改善する人がいるのです」

腱鞘炎が数日で改善した人もいる「腕さすり」のやり方

前出の長根先生は続けます。
「筋膜リリースは、今や医師や理学療法士なども治療に活用しており、通常はステンレス製の器具で筋肉をさすります。それを一般の人向けに改良したのが、札幌スポーツ&ケア治療室の清水真先生が考案した、バターナイフでマッサージするように行う「腕さすり」です。

私自身も腕さすりを患者さんにすすめて、そのやり方を指導しています。おかげで、多くの患者さんが痛みの軽減作用を実感し、例えば腱鞘炎の人の中には痛みが数日で改善した人もいました」

では、腕さすりマッサージとはいったいどんなやり方なのでしょうか。

ばね指や腱鞘炎のセルフケア【腕さすり】のやり方

これは、札幌スポーツ&ケア治療室代表の清水真先生が患者さんへすすめているものです。清水先生に聞きました。
「やり方は簡単です。まず用意するものは2つありますが、これはご自宅にある方が多いのではないでしょうか。

●用意するもの

バターナイフ…縁の部分が角ばっておらず、皮膚を傷つける心配のない丸みをおびたもの。
クリーム…ワセリンやボディオイル、ココナツオイルなど、普段使っているものでかまいません。クリームは、まずは腕に塗って、すべりをよくしてください。

●やり方
腱鞘炎やばね指の基本のやり方は写真のとおりです。
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腕さすりを実践するときのコツは、まずバターナイフは腕にほぼ直角に当たるようにして軽く密着させること。最初はゆっくりとやさしく肌をさすります(20〜30回)。
慣れてきたら、手首や手指を動かしたり指を握ったり開いたりして、筋膜が延びるのを促しながら行います(20〜30回)。これで終了です。1回の所要時間は2〜3分です。これを、1日2〜3回ほど行ってください。

基本は、痛みを感じたら行うこと。行った人は、その場で痛みがらくになる人もいます。そして、毎日行えば根本原因である筋膜の癒着が徐々にゆるんで再発しにくくなる人もいます。とはいえ、試した全員が必ずよくなるわけではありません。長く続けることが大切です」(清水先生)

【コラム】腕が赤くなる場合は?
腕さすりをすると一時的に腕が赤くなることがあります。筋膜が癒着している部位ほど赤くなるので心配はいりませんが、熱を持っている場合には冷水で絞ったタオルを当てて20分ほど冷やしてください。
ただし、痛みを感じるほど腫れた場合や痛みが悪化する場合は、すぐに中止して医師に相談してください。
また、腕さすりは、肌が赤くなっている間は行わないでください。

腕さすりでバターナイフを使う理由とは?

ところで、腕さすりマッサージは前述のとおり「筋膜リリース」の一つですが、なぜバターナイフを使うのでしょうか。

「実をいうと、これまではゆがんだ筋膜をストレッチなどでゆるめるリリース法が広まっていました。
ところが最近は、アメリカのオリンピック選手などスポーツ選手の間では、ステンレス製の器具(下の写真参照)を使って筋膜をゆるめるリリース法が注目されています。日本でも、プロチームや大学の運動部で導入が進んでいます。

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この器具を使って筋膜リリースを行えば、傷めた手や足など、痛む部位の癒着した筋膜をピンポイントで押し延ばすことができます。また、全身のストレッチなどの運動を必要としないため、体力のない高齢者でも行えることから、一般の人向けに痛みを取る方法として活用されはじめているのです。

そこで、腱鞘炎やばね指の人でもできるやり方がないかと考えたとき、バターナイフで代用すれば一定圧の面で癒着した筋膜を押し延ばすことができると気づいたのです。また、自宅にある人が多いのもいい点です。
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腕さすりは、縮んでシワが寄った衣服にアイロンを押し当てて延ばしているところをイメージすると、癒着した筋膜を押し延ばす感覚をつかみやすいでしょう」(清水先生)

ぜひ、腱鞘炎やばね指の人は試してみてください。最後に、症状が現れたときは、まずは病院で専門医に診てもらうことが重要です。その上で、腕さすりを試してみてください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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