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耳鳴りセルフ診断|耳の専門医が[耳鳴りの原因、高音と低音の違い、治し方]を全解説

解説 埼玉医科大学客員教授
坂田英明

耳鳴りで悩む人が増えているそうです。

耳鳴りとは、本当は音がしていないにもかかわらず、その人だけに耳の奥で何かの音が聞こえている症状のこと。とはいえ、
●寝る前や早朝に「キーン」と高音の耳鳴りがして眠れない
●四六時中「ピー」と音が聞こえて集中できない
●「ジージー」「ボーン」と低音や雑音の耳鳴りに数年間にわたって悩まされている
……など、耳鳴りの症状は実にさまざまです。

耳鳴りはどうしても軽く見られがちで、よほどの重症でないと病院へ行かない人も多いそうですがそれは間違いです。重大な病気が隠れている場合もあるので、必ず耳鼻咽喉科の専門医に診てもらってください。

この記事では、一口に耳鳴りといってもさまざまな症状の現れ方から、原因や対策について解説していただきました。

耳鳴りの現状|患者数は1000万人超?

耳鳴りで悩む人が増えています。下のグラフをご覧ください。
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厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」では、耳鳴りを患う人の割合は増加の一途をたどっており、この1992年以降、約20年間で1.5倍以上に増えたことが示されています。
2013年時点での割合から換算すると、およそ380万人が耳鳴りに悩まされているということになります。とはいえ、この数は一面的な耳鳴りの患者数を示しているにすぎません。

ふだんから、耳鳴りの患者さんを診ている私の実感からすると、短期間にせよなんらかの形で耳鳴りに悩まされた経験がある人はとても多いと感じています。
それも含めれば、その数は1000万人超になるのではないでしょうか。

本人にしか聞こえない耳鳴りが圧倒的に多い

さて、耳鳴りの原因について述べていきましょう。その前に耳鳴りを大別すると2種に分かれます。
①他覚的自鳴(外部から聞くことができる耳鳴り)
②自覚的自鳴(本人にしか聞こえない耳鳴り)

このうち、①の他覚的自鳴は、医師が聴診器を当てれば聞こえる場合が多く、比較的はっきりした原因が突き止められやすいといえます。例えば心臓の鼓動の「ドクドク」、呼吸での「スーハー」など、生命活動に付随する音が大半です。

耳鳴りで圧倒的に多いのは②の自覚的自鳴、つまり本人にしか聞こえない耳鳴りです。
こちらは、生活習慣やストレス、耳以外の体の異常などが複雑に関係して発症する場合も多く、原因をはっきりと突き止められない場合も多いのです。

とはいえ、全く手がかりがないわけではありません。

耳鳴りは、音の聞こえ方や音量、不快感などはその人の性格にもよりますし、同じような病状でも、そこまで気にならないという人もいれば、常に気になってしかたがないと訴える人もいます。 そうした事情を踏まえて、あえて耳鳴りの聞こえ方を分類すれば、次の小見出し以降の4タイプに分けられます。

耳鳴り4タイプの見分け方〜❶低音型 ❷高音型 ❸雑音型 ❹単音型〜

❶低音型 「ゴー」「ボー」など低い音が聞こえたり、耳がつまったように感じたりする耳鳴り
音の振動を電気信号に変える内耳(イラスト参照)の障害でも起こりますが、音の振動を伝える外耳や中耳に障害がある場合にも多く見られます。低音型は、比較的治りやすい耳鳴りといわれています。

❷高音型 「キーン」「ピー」など、甲高い金属音や電子音が聞こえる耳鳴り  
主に、内耳や、内耳と脳をつなぐ聴神経などに障害が発生すると起こります。高音型は、低音型に比べて治療が難しい傾向にあります。

❸雑音型 「ジージー」「ザーザー」などの音に加え、「シュー」などの異音が入り混じって聞こえるタイプの耳鳴り
耳の広い範囲で障害が生じているか、原因が複合して耳鳴りが起こっていると考えられます。

❹単音(純音)型 「プー」「リーン」など一種類の音(純音)だけが聞こえる耳鳴り

これは、雑音型とは逆で、耳の狭い範囲で障害が起こっていると考えられます。

ちなみに、耳鳴りには、ほかにも急に音が聞こえだす「突発性」、長期間にわたって異音が続く「慢性」などの分類もあります。

耳鳴りの原因は?なぜ起こる?

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耳鳴りの聞こえ方から、耳鳴りを引き起こしている原因をはっきりと特定するのはなかなか難しいといえるでしょう。ただし、耳鳴りの聞こえ方と、併発する症状などとを組み合わせれば、疑うべき病気をおおよそ推測することができます。
というのも耳鳴りは、難聴やめまいなどの耳のトラブル、あるいはほかの随伴症状とともに起こる場合が多いからです。
自分の症状をつぶさに観察して、それを医師に正しく伝え、適切な治療を受けることが改善の第一歩になるはずです。

例えば、左右どちらかの耳に低音型の耳鳴りが現れ、周りがグルグル回って見える回転性めまいを伴う場合は、「メニエール病」の発症が強く疑われます。同じく、低音型の耳鳴りとともに耳がつまり、自分の声が大きく聞こえる(自声強聴という)場合は、「耳管開放症」が考えられます。  

一方、高音型の耳鳴りでは、「加齢性難聴」の可能性が高いといえます。人間の聴力は、年とともに高音域から聞こえにくくなることがわかっていますが、近年、聞こえにくくなった高音域の音を聞こうと脳が過度に興奮する結果、高音の耳鳴りが起こるというしくみが指摘されています。
そのため、年を重ねて難聴がある人では高音型の耳鳴りが起こりやすくなるというわけです。

聴神経腫瘍や中耳炎が原因でも起こる?

また、初めは軽い耳鳴りでも徐々に悪化し、難聴やフワフワした浮動性めまい、頭痛なども伴うようになれば、「聴神経腫瘍(しゅよう)」が疑われま
す。 耳鳴りは、「慢性中耳炎」や「滲出(しんしゅつ)性中耳炎」でも起こることがあります。
滲出性中耳炎とは、中耳腔(ちゅうじくう)に滲出液という液体がたまるタイプの中耳炎で、耳鳴りのほか難聴や耳のつまった感じが起こりやすくなります。これら中耳炎が原因の耳鳴りは、中耳炎の治療を行うことで改善できます。

耳鳴り対策①メタボや喫煙、便秘などをさけよう

耳鳴りの主な治療法は、生活習慣の改善と薬物療法が基本となります。

まずは生活習慣の改善について。
耳鳴りは、喫煙・カフェイン・騒音・睡眠不足・便秘・メタボ・有機溶剤などが危険因子になります。したがって、これらの危険因子を取り除くことが先決。
具体的には食事では、太りすぎないように低カロリーで高栄養の食品をとることが重要ですし、日々の運動も欠かせません。こうした生活習慣は、ほかの病気予防でもいわれることです。つまり、耳鳴りもそうした意味では生活習慣病の一種ともいえるわけです。

また、一般に耳鳴りを訴える患者さんはどうしても神経質になってしまうところがありますが、耳鳴りをあまり気にしないための心がけや工夫も重要となります。  

耳鳴り対策②病院では薬での治療が基本

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次に、血流改善薬や利尿薬、ビタミン剤などの服薬、筋肉注射、ステロイド薬の鼓室内注入療法(鼓膜に注射する治療法)などの薬物療法を行います。また、音響療法(CRT)や認知行動療法(カウンセリング)なども行われています。
こうした治療を受けることによって、6割程度の耳鳴りは軽快していきます。

なお、耳鳴りには強いストレスや不安などで起こる心因性のものもあります。
こうした耳鳴りでは、自律神経調整薬・抗ウツ薬・抗不安薬が処方されることもあります。心因性の場合は、適度な運動や気分転換を心がけ、ストレスを減らすのも不可欠です。

最後に、耳鳴りの改善には、決してあきらめずに「耳鳴りを必ず改善する!」と信じて、できるだけ前向きにさまざまな治療に取り組むことが重要です。

記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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