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酒粕で作る?米麹で作る?米麹から作る「甘酒」は血圧上昇を抑える特効食

解説東京女子医科大学医学部主任教授
市原淳弘

お正月に、参拝者に甘酒を振る舞ったり、甘酒を販売したりしている寺社があります。そもそも「お正月になぜ甘酒を飲むのか」、その理由をご存じですか?
諸説ありますが、「無病息災を願う御屠蘇(おとそ)の代わりに振る舞われている」「米農家の収穫への感謝を込めて」などが挙げられるようです。

このように昔から馴染みのある甘酒ですが、最近になり、その健康作用に大きな注目が集まっています。東京女子医科大学医学部主任教授の市原淳弘先生に話をお聞きしました。

高血圧は、病院での治療が不可欠です。また、医師から食事の指導もあるかと思います。自己判断をせず、主治医の治療方針に従ったうえで甘酒を試していただきたいと思います。

飲む点滴と脚光を浴びている甘酒

高血圧の治療では、食事療法が欠かせません。減塩や摂取カロリー制限、塩分(ナトリウム)の排出を促すカリウムの多い野菜・果物の常食などがすすめられます。

さらに近年、血圧上昇の抑制におすすめの日本の伝統食が見つかり、にわかに脚光を浴びています。それは、米麹を発酵して作られる「甘酒(以下、麹甘酒と呼ぶ)」です。甘酒は、8世紀ごろから日本で飲まれてきた甘味飲料で、『日本書紀』にも、その記録が残っています。そして、甘酒が広く人々の間に普及したのは江戸時代でした。町では行商人が甘酒を売り歩き、子供からお年寄りまで多くの人が健康のために愛飲していたといいます。

甘酒には、原料に米麹を使うタイプと、酒粕を使うタイプの2種類があります。どちらの甘酒も栄養バランスに優れ、ブドウ糖やオリゴ糖のほか、ビタミンB群、アミノ酸(たんぱく質の構成成分)を豊富に含んでいます。栄養成分が点滴の成分に似ていることから、最近では、甘酒は「飲む点滴」ともいわれているのです。 

s_飲む点滴.jpgただし、酒粕で作った甘酒には、アルコールが少し含まれているので、子供や妊婦、車を運転する人は飲めません。ですから、ノンアルコールである麹甘酒のほうが、誰でもいつでも安心して飲めるというわけです。

さらに、麹甘酒には、血圧の上昇を抑える米麹由来のペプチド(アミノ酸の結合物質)が豊富に含まれていて、高血圧の悪化防止に役立つのです。

ペプチドの働きで血圧の上昇を防ぐ

ペプチドは、たんぱく質が消化酵素(酵素とは体内の化学反応を助ける物質)などの働きで分解され、アミノ酸に変わる途中に作られる成分です。2~100個のアミノ酸がつながり、その結合のしかたで多くの種類に分かれ、それぞれ作用が違っています。

中でも、麹甘酒に含まれるペプチドには、血圧の上昇を抑える「ACE阻害活性」という作用があるのです。血液中には、血圧を上げる「アンジオテンシンⅡ」というホルモンがあります。これは、血管に影響を与えない前駆体の「アンジオテンシンI」が「ACE」(アンジオテンシンI変換酵素)という酵素の働きで分解されることにより作られます。

アンジオテンシンIがアンジオテンシンⅡに変わると、血管が収縮するほか、腎臓からの塩分の排出が抑制されて、尿になるはずの水分が血液中にとどまります。その結果として、血圧が上昇するのです。ですから、麹甘酒に含まれているペプチドでACEの働きを抑えれば、アンジオテンシンⅡの産生が減って、血管の収縮を防ぐことができ、塩分の排出も促されて、血圧の上昇を抑制できる機体が持てるのです。

このように、アンジオテンシンⅡの産生を抑える作用を、ACE阻害活性といいます。ちなみに、降圧薬の一つであるACE阻害薬は、ACE阻害活性によって血圧を下げる薬です。麹甘酒にはACE阻害薬のような強い降圧作用はありませんが、長期にわたって常飲すれば高血圧の悪化防止に適している、と私は考えます。

高血圧の患者さんは、加齢とともに血圧が上がり、服薬量を増やすことが少なくありません。それを防ぐのに、麹甘酒のペプチドが役に立つのです。

しかも、減塩をしながら麹甘酒を飲むと、ACE阻害活性を高められることがわかっています。ですから、麹甘酒は、高血圧の治療の一助になるわけです。実際に私は、高血圧の患者さんに、麹甘酒をとることをすすめています。

世界が注目する「麹甘酒」の可能性

麹甘酒のほかの利点として、カロリーの低さがあげられるでしょう。麹甘酒は非常に甘いのですが、カロリー量は100グラム当たり81キロカロリー。このカロリー量は、ご飯の半分以下にすぎません。麹甘酒の甘みは、米に含まれるでんぷんが米麹の働きで発酵し、糖化されることによって生まれます。ですから、十分な甘みがあるのにカロリーは低めなのです。

しかも、麹甘酒に豊富なビタミンB群には糖質をエネルギーに変える働きがあり、体の代謝(体内で行われる化学反応)を促します。また、麹甘酒に含まれる酵素には脂肪燃焼作用があるといわれています。

実は、海外でも、麹甘酒が注目を集めています。発酵食品に含まれるペプチドの血圧上昇の抑制作用など、さまざまな健康作用を検証するため、大学や研究機関で実験が進められているのです。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/©カラダネ © Fotolia 

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