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自分史ノートの作成が「今」求められている理由。脳の想起力アップで認知症を予防

解説 米山医院院長
米山公啓

これまで歩んできた人生や、大切な家族との思い出を記す「自分史」を作る人が増えており、最近密かなブームになっています。そもそも「自分史」という言葉は、東京経済大学名誉教授で歴史学者の色川大吉氏が、著書『ある昭和史 – 自分史の試み』で使ったことで、広く一般的に親しまれるようになったとされています。

自分史を作成する意義はたくさんあります。これまでの人生を見つめ直し、これから先の生き方を考えることに使えます。そして実は、脳にも素晴らしい作用が期待できるのではないかとわかっています。米山医院院長の米山公啓先生に話をお聞きしました。

認知症が心配な人は、必ず専門医の治療を受けてください。

過去の記憶を思い出すと前頭前野が活性化する

脳を活性化して物覚えをよくするには、過去の記憶を思い出す「想起力」を鍛えることが大切です。最近では、認知症の患者さんに対する医療や介護の現場で、米国の精神科医のロバート・バトラー博士によって提唱された「回想法」を行う施設が増えています。

回想法とは、昔の写真を見せたり、流行歌を聞かせたり、なじみのある古い道具を使ったりして、昔の記憶を思い出し、認知機能(記憶力・注意力・集中力・計画力・判断力などの知的機能の総称)の改善を図ろうとするものです。

昔の写真や映画、流行歌、古い道具などは、記憶を引き出すスイッチのようなものです。スイッチが入って昔の記憶が引き出されると、脳では盛んに神経細胞の情報伝達が行われ、脳の司令塔である前頭前野も活発に働きだすと考えられているのです。

s_アルバム.jpgなお、回想法では、悲しかったりつらかったりする記憶ではなく、楽しい記憶を思い出すことがすすめられています。楽しい記憶を思い出すと、脳から快感物質であるドーパミンがされ、脳によりいい作用をもたらすことがわかっているためです。

履歴書→自分史ノートの順番で作るのがおすすめ

手軽に想起力を鍛える方法としておすすめしたいのが、これまでの人生を振り返って記録する「自分史ノート」を書くことです。自分史ノートを書くと、単に想起力が鍛えられ楽しい記憶を思い出しやすくなるだけでなく、これまでの人生を見直してこれからの生き方を考えることにも役立ちます。

自分史ノートを書くときは、まず、
❶生まれたときのこと

❷幼年時代のこと

❸学生時代のこと

❹社会に出てからのこと
を書き出して、簡単な履歴書を作ってみてください。そうすれば、それが土台となって過去の記憶が思い出しやすくなります。

過去の記憶を思い出すのが難しい人は、写真や手紙、ハガキ、旅行先で買った土産、父や母の愛用品など、過去の記憶にまつわるものを手に取ってみましょう。そうした思い出の品が楽しかった記憶を取り戻すスイッチとなり、忘れていた記憶がよみがえってきます。
そのほか、自分の人生と社会の歴史を重ね合わせるために、年表を見てみるのもいい方法です。事件や出来事に思いをはせると、それとともに自分の過去の記憶について思い出せることがあります。

自分史ノートは、大学ノートを使って作ってもかまいませんが、思い出を引き出しやすいようにあらかじめ項目や年表が印刷されている専用の自分史ノートが市販されているので、そうしたものを使うと便利でしょう。最近は、何をどう書いていいのか見当もつかない人や、高品質な自分史を作成したい人のために、自分史の作成をサポートするウェブサイトなども登場し、人気を集めているようです。

もちろん、自分史ノートだけをつけていれば認知症を予防できるわけではありません。セルフケアの一環として試してみてください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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