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心房細動予防の運動は「医療ヨガ」がおすすめ|研究では発作が半減し脈も安定

解説はしもと内科外科クリニック院長
橋本和哉

心臓の拍動(心臓が周期的に収縮運動をすること)に異常が起こる不整脈の中には、脳の血管をつまらせて脳梗塞を引き起こす危険なタイプのものもあります。それが、心臓の上部にある心房を収縮させる電気信号が乱れ、拍動が速くなる「心房細動」です。
心房細動についてくわしくは、(心房細動の原因|高血圧や糖尿病の人は危険大、症状のサインは動悸や胸の痛み)の記事をクリックしてご覧ください。

心房細動が慢性化すると、脳梗塞や心不全を引き起こす危険が大きくなります。そのため、心房細動の症状を見逃さず、定期的な検査と適切な治療を受けることが大事です。

この記事では、心房細動の予防に効くとっておきの運動法をご紹介します。はしもと内科外科クリニック院長の橋本和哉先生に話をお聞きしました。

心臓へのリスクなく、安心してできる運動はヨガ

ふだんから心臓の拍動のリズムを正常にして、心房細動の発症を未然に予防することが重要です。過剰なストレスや過労、睡眠不足といった生活習慣は心臓の負担を増やす原因となるため、心房細動の人は特に注意する必要があります。

対策にはさまざまな方法がありますが、私が運動療法の一つとして心房細動の患者さんにすすめているのが、私自身も続けてきた「ヨガ」です。

ヨガは、古代インドで約5000年前に誕生した修行法の一つで、心・体・呼吸の三つを調和し、心身ともに健康に過ごすことを目的としています。ヨガの健康作用として、「姿勢が正される」「体の柔軟性が高まり筋肉が強まる」「内臓が刺激され体内の毒素が抜けていく」「心身ともにリラックスでき、ストレスや疲れが取れる」があるとされています。

一般的には、適度な運動は心房細動のリスクを下げると考えられています。その中でも、ヨガは、日ごろ体を動かすことが少ない人でもできる運動で、ストレスや過労、睡眠不足の改善にも役立ちます。まさに、心房細動を予防・改善するための絶好の運動といえます。

ヨガが心房細動に効く3つの理由

理由①自律神経の乱れを正して、脈を落ち着かせる

心房細動に効く理由の第一は、ヨガは自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)の乱れを正す働きがあることです。

自律神経には、心身を緊張させる交感神経と、心身をリラックスさせる副交感神経の2種類があり、両者がバランスよく働くことによって私たちの健康は保たれています。しかし、ストレスや過労が原因で交感神経が優位に働くと、拍動が速くなり、心房細動を引き起こす原因になります。反対に、副交感神経が優位に働くと体がリラックスして、心房細動の発症を予防することが期待できます。

ヨガは腹式呼吸をしながら行うのが基本です。腹式呼吸が習慣になると副交感神経が優位に働くようになり、心身がリラックスします。そのため、速くなった拍動のリズムが正常になり、心房細動の予防にも役立つのです。

理由②背骨のゆがみを正して、心臓の圧迫を防ぐ

心房細動に効く理由の第二は、ヨガには背骨のゆがみを正して心臓の圧迫を防ぐ効果があることです。

stoop.jpg私のクリニックには、不整脈に悩んでいる人も多く来院しますが、そうした人たちには共通点があります。それは、見るからに背骨がゆがみ、心臓への負担が明らかに大きくなっていることです。心臓は、ご存じのように胸にあり、肋骨で守られていますが、背骨がゆがむと当然、胸椎(背骨の胸の部分)もゆがみ、その結果、胸椎と関節でつながっている肋骨もゆがんでしまいます。胸椎や肋骨がゆがめば、心臓が圧迫されて負担が増し、拍動が乱れる原因になるため、結果的に心房細動が起こりやすくなります。

したがって、心房細動を予防するためには、背骨のゆがみ正しも重要になるわけです。 ヨガは、ほかの運動と違って、ふだんの生活で使うことの少ない背骨まわりの筋肉を動かして、筋肉の緊張をほぐす効果があります。 すると、ゆがんだ背骨が本来のS字状カーブに正され、拍動の乱れを正すのに役立つと考えられるのです。

理由③全身の血流を促して、拍動の乱れを正す

心房細動に効く理由の第三は、ヨガをやると全身の血流がよくなることです。

blood-flow.jpg血管を流れる血液には、心臓から全身へ送り出される動脈血と、全身の細胞から心臓へ戻ってくる静脈血があります。動脈血は、毛細血管を通して細胞や組織に新鮮な酸素と栄養を送り届けたあと、二酸化炭素や老廃物などを受け取って静脈血となり、心臓へ戻ってきます。このように、心臓は日々、全身のすみずみに新鮮な血液を送り届けています。

しかし、年齢を重ねると高血圧や高血糖、動脈硬化(血管の老化)など、さまざまな原因で全身の血流が悪くなってきます。すると、全身へ動脈血を送り出す心臓の拍動が乱れ、結果的に心房細動などの不整脈を引き起こす原因になると考えられるのです。

そのため、心房細動を予防するには、全身の血流をよくすることが重要。ヨガは、その効果が絶大なのです。ヨガは、とてもゆったりとした動きでありながら、体のすみずみの筋肉を使う全身運動です。ヨガで全身を効率よく動かせば、自然に血流が促されて心臓の負担も減り、心房細動の予防に役立ちます。

ヨガの心房細動への効果を示す研究データ

スウェーデンの心房細動に関する研究

スウェーデンにある医科大学のカロリンスカ研究所が、発作性心房細動の患者さんを対象にヨガの効果を調査して、その結果を2016年3月に報告しています。この調査では、対象者の80人を40人ずつ2つのグループに分け、一方のグループはプロの指導者のもと週1回のヨガを3カ月間行い、もう一方のヨガを行わなかったグループと比較しました。

すると、ヨガを行ったグループは、心拍数と血圧が低下して、QOL(生活の質)も向上していたといいます。発作性心房細動の患者さんの多くは、発作を恐れているため、家族や友人と食事したり旅行に行ったりすることも難しくなります。ヨガを行うことで心身がリラックスして症状が落ち着くため、そうした不安感が解消して生活の質の改善につながったと考えられます。

アメリカの心房細動に関する研究

s_アメリカ 心房細動 研究.jpgアメリカのカンザス大学病院では、心房細動の患者さん49人を対象に、最初の3カ月間は自分の好きな運動を行ってもらい、残りの3カ月間はプロの指導者のもと、病院で45分間のヨガを週3回行い、さらに自宅でもヨガを続けてもらいました。

その結果、好きな運動を続けた最初の3カ月間に比べて、ヨガを続けた後半の3カ月間は、心房細動が発症する平均回数が、3.8回から2.1回と、45%も減少していたのです。また、心房細動の症状がくり返し起こると不安感が増し、気分が落ち込んでウツになる人が少なくないことが指摘されています。この試験を行った結果、ヨガをすることで心房細動の症状に対する不安感やウツも回復したと報告されています。

このように、ヨガで心房細動が予防できるばかりか、患者さんのQOLも向上する効果のあることが確認されたのです。

日常生活で安全かつ簡単にできる「医療ヨガ」のやり方

私は、首の脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)を生まれつき患っていて、それが原因で、首や肩がこったり、頭痛が起こったりすることが、若いころからたびたびありました。症状がひどいときには夜中に目が覚めてしまって熟睡できず、不眠にも悩まされていました。

私がヨガと出合ったのは、まさにそうした悩みを抱えているときでした。ヨガをやってみたところ、体が軽くなって心身ともにリラックスし、首・肩のこりや頭痛がらくになるのを感じました。さらに、朝まで目が覚めることなくグッスリ眠れるようになったのです。 そんなヨガのすばらしい効果を身をもって体験した私は、西洋医学に加えて、ヨガを運動療法として患者さんの治療に役立てたいと考え、すすめるようになったのです。

実際、患者さんにヨガを指導すると、みなさんが積極的にやってくれました。ヨガ独特のゆったりした動きや呼吸法が、患者さんにとってきつくなく、心地よく感じられるようです。
そこで私は、クリニックを訪れる心房細動をはじめとする不整脈の患者さんのために、ヨガの心臓若返り効果を最大限に引き出した「医療ヨガ」を考案しました。

医療ヨガのやり方①胸開閉のポーズ

s_脈正しヨガ❶❷.jpg❶あぐらをかくように座り、一方の足のかかとを手前に引き寄せ、他方の足をその外側に置き、両足のかかとを前後に並べる。背すじを伸ばし、両手をしっかりと組んで胸の上に置く。
❷初めに静かに息を吸い、ゆっくり息を吐きながら首と肩の力をに抜いて背中を丸めながら、組んだ両手をグーッと前に押し出す。両手で前にある見えない空気の壁を押しているイメージで、できるだけ両手をまっすぐ伸ばす。呼吸をらくにしながら、この姿勢を20秒保つ。

s_脈正しヨガ❸❹.jpg❸②の姿勢から息を吸いながら、ゆっくり背中を起こし、伸ばしていた両手を引き寄せて胸の上に置く。ひと呼吸休んで、両手を頭の後ろに置く。息を吸いながら両ひじを横に開いて胸を張り、顔をゆっくりと上に向ける。この姿勢のまま、呼吸を4回行う。
❹息を吐きながら静かに頭を元に戻す。頭の後ろの両手を外し、腕を伸ばしてひざの上に置き、呼吸を整える。

【ポイント】
・イスに座って行ってもかまいません。その場合は、背中を反らせるように浅く腰掛けるようにしましょう。
・手を頭の後ろに置くときは、頭を手で押して手で後頭部を支えるようにするのが最善です。

医療ヨガのやり方②おなかねじりのポーズ

s_おなかねじりポーズ❶.jpg❶あおむけに寝た状態で両ひざをそろえて立てる。背中をピッタリ床に着け、真上を見る状態で両腕を左右に水平に伸ばす。

s_おなかねじりポーズ❷.jpg❷息を吸い、次に息を吐きながら両ひざを胸まで引き寄せる。

s_おなかねじりのポーズ❸(修正).jpg❸胸に引き寄せた両ひざを、息をゆっくり吐きながら左側に倒していく。この姿勢でできるらくな呼吸で10秒保ち、息を吸いながら両ひざを正面に戻していく(②の姿勢)。

s_おなかねじりのポーズ❹(修正).jpg❹続いて、息を吐きながら両ひざを右側に倒していく。この姿勢を10秒保ったら、両ひざを正面に戻していく(②の姿勢)。
最後に①の姿勢にゆっくりと戻り、呼吸を整える。

【ポイント】
・両ひざを左右に倒すさいは、倒しすぎて背中や肩が床から浮かないように注意しましょう。
・ひざを倒すときは、急に倒さずゆっくりと動かしましょう。

医療ヨガのやり方③お尻上げのポーズ

s_お尻上げのポーズ❶.jpg❶あおむけに寝た状態で、両足を肩幅に広げて両ひざを立てて、かかとを引き寄せる。両腕は体に沿ってまっすぐ伸ばし、手のひらは床につける。

s_お尻上げのポーズ❷.jpg❷呼吸を整え軽く息を吸って、息を吐きながらゆっくりお尻を持ち上げる。肩ー腰の中心ーひざ頭が一直線になるような姿勢を30秒(8呼吸)程度保つ。その姿勢から、背中ー腰ーお尻の順番に上げた体を下げ、姿勢を元に戻していく。最後に両手をおなかに当てて、呼吸を整える。

【ポイント 】
・肩ー腰の中心ーひざ頭が必ず一直線になるようにすること。腰が上がりすぎても下がりすぎてもよくありません。
・手には力を入れず、体幹の筋肉でお尻を持ち上げるようにしましょう。

【体験談】胸のドキドキや呼吸困難が解消し、脳梗塞の再発もなし

大阪府に住む大島武夫さん(仮名・66歳)が私のクリニックを訪ねてきたのは、今から3年前のことでした。大島さんは以前から心房細動があり、8年前には脳梗塞(心原性脳梗塞)で倒れたとのこと。小脳の左側が障害を受けたそうですが、幸い、手足のマヒや言語障害などの重い後遺症は残りませんでした。日常生活に特に支障がなかったため、食品会社の営業職に復帰したそうです。

しかし、その後も、胸がドキドキしたり、圧迫されたりするような不快感や呼吸困難が続き、ときにはめまいにも襲われることが続きました。外回りの営業で歩いている最中や、取引先との商談中にこうした症状が起こるため、仕事にも差し支えるようになったといいます。

特に、大島さんを悩ませていたのが、脳梗塞の再発の不安でした。大島さんは、脳梗塞を起こしたあと、心臓に血栓(血液の塊)ができることを防ぐ抗凝固薬(ワルファリン)を服用していました。それでも、めまいが起こったときには、また脳梗塞が起こるのではないかという不安感に襲われ、夜も眠れないことが多いと訴えていました。

そこで私は、大島さんに心電図検査を受けてもらいました。すると、心拍数は毎分108回(健康な人は毎分60〜80回)と多めで、心房細動を起こしていたのです。そこで、大島さんに、以前から服用していたワルファリンに加えて、ほかの薬も処方することにしました。

また、大島さんの不安感やストレスを解消するために、日常生活を改善する指導も行うことにしました。営業職の大島さんは、さまざまな人と会って話す機会が多く、強い緊張やストレスを感じて心臓に負荷がかかることが多かったからです。私は、大島さんに、何かリラックスできることを見つけて心臓を休ませるように話しましたが、それは難しいようでした。

そこで私は、大島さんに、心房細動の改善に役立つ「脈正しヨガ」をしてもらうことにしたのです。その1カ月後、診察室に入ってきた大島さんは、明るい笑顔を浮かべていました。事情を聞くと、脈正しヨガを始めてから胸の不快感や呼吸困難といった心房細動の症状がほとんど現れず、めまいは一度も起こしていないというのです。夜は、寝床に入ると、すぐに寝つけるようになったとのこと。

私は、再び大島さんに心電図検査を受けてもらいました。すると、心拍数は毎分約80回と大幅に改善していたのです。その後も、大島さんは脈正しヨガを続けていて、心房細動の発症も脳梗塞の再発も防げているとのことです。

【体験談】胸の苦しさや息切れの悩みが改善し、発作による不安も消えた

以下の体験談は、健康雑誌「夢21」で掲載された体験談です。


東京都に住む山本明世さん(仮名・74歳)は、2013年頃、友人といっしょに歩いているときに胸が苦しくなり、その場にうずくまってしまったそうです。そこで、病院で検査を受けたところ、心房細動が見つかったとのことでした。主治医から薬を処方され、動悸や息切れの症状は治まりましたが、また発作が起こるのではないかという不安がずっと消えなかったといいます。

ご主人は、山本さんの気持ちを理解し、代わりに買い物に行ってくれるなど、協力を惜しまないそうですが、家でじっとしていると、余計な心配が頭の中に浮かび「動悸や息切れが起こったらどうしよう」と気になって仕方がないというのです。心臓を丈夫にするためには「ちゃんと眠れること」「ちゃんと食べることができること」「ちゃんと動けること」が重要です。不安感やストレスが大きくなると熟睡できなくなります。その結果、健康な人でも動悸や息切れが起こることも少なくありません。

不安感やストレスを解消すれば、十分な睡眠がとれることはもちろんですが、心臓が休まって心房細動などの不整脈の改善にもつながります。そこで、山本さんは医療ヨガを実践することにしました。

ヨガ教室に通うとともに、自宅でも医療ヨガを続けた山本さんに感想を聞いたところ、「ヨガをして呼吸と体の動きに意識を集中していると、余計な雑念が消え、気持ちが落ち着いてリラックスできる」と話していました。そして、就寝前に医療ヨガをしたあとに深くゆっくりした腹式呼吸をすると、グッスリと眠れるようになったといいます。

それから約3カ月後、山本さんは、心身ともに落ち着いた様子でした。動悸や息切れなどの心房細動の症状が起こることはなくなり、ヨガが習慣になったことで、深くゆっくりした腹式呼吸が身につき、余計な不安感や心配ごとから解放されたといいます。ご主人や友人と出かけることも増え、外出中に何か起こっても、「ゆっくり息を吐けば大丈夫」と自信がついたそうです。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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