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心房細動の原因|高血圧や糖尿病の人は危険大、症状のサインは動悸や胸の痛み

解説杏林大学名誉教授
石川恭三

高齢化が急速に進む日本において、突然死を起こす危険の高いタイプの不整脈があります。それが、「心房細動」です。現在の心房細動の患者数は80万人を超えるといわれます。2030年には患者数が300万人に達するとの予測も報告されている恐ろしい病気です。

心房細動の原因について、杏林大学名誉教授の石川恭三先生に話をお聞きしました。

心房細動とは。心房が1分間に400回以上震える⁉

心房細動は、心臓の心房に伝わる、心房を収縮させる電気信号が乱れて、拍動(心臓の収縮と拡張)が速くなる病気です。心臓の内部は、右心房・右心室・左心房・左心室という4つの部屋に分かれています。心房は血液を貯めておく場所、心室は血液を送り出すポンプの働きをしています。

心房は、規則的な電気信号に従って収縮し、たくわえた血液をポンプの働きがある心室に送り出します。心室も電気信号によって規則的に収縮し、血液を送り出します。健康な状態では、心房も心室も規則的に収縮するため、血液は滞りなく全身に運ばれます。

心房細動が起こるしくみ

s_心房細動の仕組み.jpg心房細動になると、電気信号が乱れるため心房が1分間に400〜600回の速さで細かく震えるように動きます。

症状は動悸や息切れ、胸の痛み・圧迫感

心房細動の症状は、「強い胸のドキドキや息切れ」「胸痛(安静にしても治らない)」「胸のモヤモヤした不快感や呼吸困難」「運動中や食後に起こる胸の圧迫感」があげられます。こうした症状が頻繁に起こる人は、病院を受診しましょう。

心房細動が怖いのは、心房の震えが心室に伝わると、心室は1分間に100回以上の速さで不規則に収縮して、頻脈(脈が速くなる不整脈)になること。頻脈が長引くと、心室の収縮力が低下していくため、心臓の機能が徐々に衰えていき、全身に必要な血液を送り出せなくなる心不全に陥ります。心房細動の人が心不全を発症する頻度は、心房細動のない人に比べ、約4倍も多いことがわかっています。

さらに怖いのは、血栓(血液の塊)ができやすくなることです。心房細動が起こると、心房が正常に収縮できなくなるため、心房内の血液がスムーズに送り出されずに、よどみやすくなります。血液はよどむと固まりやすくなるという性質があるため、心房内に血栓ができやすくなります。
特に血栓のできやすい場所が、心房の端にある心耳(しんじ)という袋状の部位です。心耳の深さは4センチ程度あるため、そこでできる血栓も2センチほどの大きなものになることが多いのです。

こうしてできた大きな血栓が心房の内壁からはがれて血流に乗ると、太い血管につまりやすくなります。さまざまな臓器の血管がつまる可能性が考えられます。

脳梗塞の発症率が5倍になる

心房細動によって血栓ができやすくなりますが、中でも脳の動脈につまって脳梗塞の発症につながるのは最悪のケースです。脳梗塞は、次の3つに大きく分けられます。
①ラクナ梗塞
脳の細い血管で小さな脳梗塞が起きた状態
②アテローム血栓性脳梗塞
脳の太い血管の動脈硬化(血管の老化)で血栓(血液の塊)ができ、血管がつまる脳梗塞
③心原性脳梗塞
心臓から血栓が流れて、脳の血管の根元の最も太いところにつまって起こる脳梗塞

心房細動で起こる脳梗塞は、③の心原性脳梗塞を指しています。

心原性脳梗塞が起こるしくみ

s_心房細動が原因の脳梗塞.jpg心房の端にある心耳という組織に大きな血栓ができて、その血栓がはがれ、頸動脈を通って脳血管につまることで心原性脳梗塞を招きます。

心房細動でできた血栓は長さが2センチほどの大きいものになると、太い血管の根元につまりやすくなります。脳の血管は太い血管から細い動脈へと枝分かれしているため、影響を受ける範囲が広くなり、重症化しやすいのです。ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞に比べ死亡率が高く、命が助かった場合でも言葉が出なくなったり手足がマヒしたりする重い後遺症が残る可能性が高いといわれます。

心原性脳梗塞は、突然大きな血管がつまって死に至ることがあるため、「ノックアウト型脳梗塞」とも呼ばれています。心原性脳梗塞は、現在では脳梗塞全体の3分の1を占め、心原性脳梗塞の原因の4分の3は心房細動によるものとわかっています。

ちなみに、心房細動の人は、健康な人に比べて脳梗塞を引き起こす危険度が約5倍も高いといわれています。心原性脳梗塞が起こってからでは手遅れなので、心房細動の人は、脳梗塞になる前に予防することが極めて重要です。

心房細動と加齢・睡眠不足・ストレスの関係

心房細動を予防するためには、どういったタイプの人に起こりやすいのかを知っておくことも大切です。
心房細動が起こる原因ははっきりとしていませんが、基本的には心臓の加齢(年を取ること)現象と考えられます。心房細動は50代を境に起こりやすくなり、その後10歳年齢を重ねるごとに発症率が2倍ずつ増えるとされています。また、心房細動を招きやすい日常生活の習慣もあります。

心房細動を招く習慣❶|睡眠不足・過労

s_心房細動 習慣❶.jpgまず、睡眠不足や過労は自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)のバランスを乱すため、心房細動などの不整脈を招く危険が大きくなります。
一般的に、睡眠時間は1日当たり7〜8時間取るのが理想とされていますが、そうはいかない現実もあるでしょう。質のいい睡眠を効率よくとり、心身の疲れの解消を心がけてください。

心房細動を招く習慣❷|ストレス・過度な飲酒・喫煙

s_心房細動 習慣❷.jpgストレスも心房細動の大きな原因ですが、ストレスを受けない生活はありえません。ストレスを解消するには、「ここまで頑張った。あとはどうにでもしてくれ」といった、開き直りの精神を持つことが肝心です。気持ちがグッとらくになり、ストレスの多い生活を乗り切る効果が期待できます。

適量のお酒は、心臓の収縮力を高めて心臓から送り出される血液量を増やすばかりか、ストレス解消にも役立ちます。ただし、飲みすぎは心臓に負担をかけ、心房細動の原因になります。人によって適量は違いますが、「ほろ酔い」程度に楽しむのがいいでしょう。

喫煙は心臓にとって百害あって一益もありません。1日に喫煙する本数が多い人や喫煙年数が長い人ほど虚血性心疾患の発症率や死亡率も高くなります。本当に心臓を大事にしたいなら、思い切ってタバコとは縁を切るようにしましょう。

心房細動と高血圧・糖尿病の関係

持病の有無によっても心房細動になりやすいかが変わります。実際、次のような研究結果が示されています。

●心不全のある人—心房細動のなりやすさは約5倍
●心臓弁膜症のある人—なりやすさは約3倍
●心筋梗塞になったことのある人—なりやすさは約2倍
●高血圧のある人—なりやすさは約1.5倍
●糖尿病のある人—なりやすさは約1.4倍

blood-glucose-level.jpgこの調査結果から、いずれも高齢者がかかりやすい、ありふれた病気の人に心房細動が多いことがわかります。肥満の人やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人も、心房細動になりやすいことがわかっています。つまり、心房細動は特別な原因による特殊な病気ではなく、生活習慣病などのありふれた病気や生活習慣が原因で起こる病気といえるのです。

心房細動の種類と基本治療

心房細動には、いくつかの種類があります。心房細動を治療するためには、どんな心房細動なのかを調べ、それぞれに合った治療法を選ぶ必要があります。

心房細動の種類❶|発作性心房細動

発作性心房細動とは、7日以内に自然に止まる心房細動です。抗不整脈薬(不整脈を防ぐ薬)を飲む、飲まないにかかわらず、数時間から7日でよくなります。

発作性心房細動が起きたときには、脈が急に速くなったり乱れたりします。具体的な自覚症状は「ドキドキする」「脈が飛ぶ、乱れる」「息切れが起こる」「胸部に不快感を感じる」などがあります。

心房細動の種類❷|持続性心房細動

持続性心房細動は、7日以上、自然に停止しない心房細動です。持続性心房細動の発作を止めるためには、抗不整脈薬の服用や電気ショック療法(胸に電極を当てて電気ショックを与える治療法)を用います。

持続性心房細動が起きたときには、頻脈(脈が速くなる不整脈)が弱まるため、自覚症状を感じることが少なくなります。ただし、こうした自覚症状の感じ方にも個人差があり、日常生活に支障があるほどの強い症状を感じる人もいれば、症状が全くない、あっても軽い症状しかない人もいます。

心房細動の種類❸|慢性(永続性)心房細動

抗不整脈薬や電気ショック療法でも治らない心房細動は、慢性心房細動と呼ばれます。心房細動の多くは、発作性をくり返し発症するうちに持続性から慢性へと進みますが、中には、発作性からいきなり慢性へ移行するケースもあるため、注意が必要です。

慢性心房細動が起きたときは、持続性心房細動と同様、頻脈(脈が速くなる不整脈)が弱まるため、自覚症状を感じることが少なくなります。

健康日本21推進フォーラムでは、心房細動の患者さんに対し、心房細動と診断されたきっかけを調査しました。その結果、脈の乱れなどの自覚症状を感じて病院を受診して診断された人が4割を占めた反面、「健康診断の心電図の検査で指摘された」「別の病気の検査で指摘された」という、症状を自覚していなかった人が5割以上にも達したのです。
現代ではさまざまな健診があるため、自覚症状がなくても病気が発見される機会が増えています。心房細動にも、同じことがいえるわけです。

心房細動の危険度は症状のあり・なしに関係しない

自覚症状が全くなくて心電図の検査などで心房細動が見つかった場合、「症状がないから危険度も軽い」「早期に発見できたので心配ない」と考えていいのでしょうか。実は、自覚症状の強さと脳などによって起こる突然死の危険度には、必ずしも関係がないことがわかっています。

ある病院の調査によれば、心房細動の患者さんの初診時以降の経過を観察した結果、症状の強さとその後の変化には関係がなかったといいます。つまり、症状のない、軽い人も、症状が重い人も、その後の死亡率や脳梗塞・心不全の発症率は変わらなかったのです。

また、別の調査では、心房細動のタイプと血栓(血液の塊)の発生率についても明らかになっています。発作が7日以内に自然に治まる発作性心房細動と、発作が7日以上続く持続性心房細動を比べた場合、発作が長引く持続性のほうが血栓ができる危険性が高くなるように思われがちです。ところが、調査では、心房細動が発作性の人も持続性の人も、脳梗塞や全身性塞栓症(心臓内にできた血栓が臓や手足など全身の血管につまる病気)を発症する確率は差がありませんでした。

心房細動は自覚症状のない人が多い

s_心房細動 自覚症状ない.jpgある病院の調査によると、心房細動が見つかった人のうち、動悸・息切れなど日常生活に支障のある強い症状ある人は全体の約4分の1。残りの約4分の3は症状がないか、あっても軽い症状しかなかったそうです。

ですから、心房細動は症状が出ていないからといって、安心することはできないといえるでしょう。症状がなくても、心房細動と診断されたら、必ず循環器内科を受診してください。症状がある人でも、症状が治まったからといって病気が軽くなったわけではないということも、しっかりと心に留めておく必要があります。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。


写真/©Fotolia ©カラダネ

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