自彊術(じきょうじゅつ)がわかる完全ガイド〜医師による健康効果の解説つき〜|カラダネ

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自彊術(じきょうじゅつ)がわかる完全ガイド〜医師による健康効果の解説つき〜

解説 カラダネ編集部

100年以上続く、日本生まれの健康法はいくつあるのでしょうか。正直、ほぼゼロといっても過言ではないのかもしれません。
健康法が新しく生まれては、廃れていく…10年以上続くものもほんの一握りです。

そうした中で、100年以上続く健康法はほぼ奇跡といえます。今回は100年以上続く奇跡の健康体操「自彊術(じきょうじゅつ)」を紹介します。

体に不調を感じている方は、専門医に診てもらうことが重要です。その上で自彊術にも取り組んでみてください。



自彊術は100年以上続く、ラジオ体操より古い元祖健康体操

自彊術は、大正時代から100年間以上行われている自力療法を目的とした健康体操の先駆けであり、ラジオ体操よりもはるか昔から行われています。全31種類の動作(体操)を順番に行うことで、健康を増進して病気も改善に導くことを目的としています。

ちなみに、自彊術の「自彊」は、中国の経典「易経」に書かれた一節「天行健君子以自彊不息(てんこうけんなり、くんしはもってみずからつとめてやまず)」に由来します。これは簡単にいうと、「健康維持の努力を怠ってはならず、それはみずから実行しなければならない」ということです。

自彊術は、天才治療家として名を馳せた中井房五郎(なかい・ふさごろう)氏によって 1916(大正5)年に考案され、実業家の十文字大元(じゅうもんじ・だいげん)氏が普及に努めていました。
そして、自彊術が全国的に広まったのには、当時の大物政治家だった後藤新平(ごとう・しんぺい)氏が大きく関係しています。

自彊術ブームの火付け役は、明治維新の功労者

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自彊術は天才治療家の中井氏と実業家の十文字氏の熱いエピソードによって考案されるにいたりました。それをわかりやすく漫画でまとめていますので、ぜひご覧ください。

自彊術の健康作用は現代の医師から見ても優れている

自彊術の健康作用は、1985年に開催された北京国際運動医学学術会議で研究論文が発表されています。この論文に掲載された調査では、自彊術を行っている1000人にアンケー トを依頼し、800人(男性119人、女性681人)から回答を得ました。

病状への作用についてたずねたアンケートでは、「大変よくなった」と回答した人が529 人(66%)、「ややよくなった」が242人(30%)、「全く作用がなかった」が6人 (0.8%)、「悪化した」が1人(0.1%)となり、96%の人が病状の改善を認めていたのです。
このうち30%は、医師の診断によって病状の改善を報告されているので、アンケートの信頼性は高いといえるのではないでしょうか。

また、「大変よくなった」と回答した人に聞いたところ、数多くの慢性疾患の改善が見られたそうです。狭心症に悩んでいた人の79%、腰痛に悩んでいた人の76%、頭痛に悩んでいた人の76%に改善が見られたのです。
それ以外にも、胃腸炎や便秘、高血圧、自律神経失調症、 ひざ関節症、肝臓炎、胆石、糖尿病などにも改善作用が見られたという報告があります。

jikyoujutu-data.jpg上山田病院の整形外科医である吉松俊一先生は、自彊術の作用について次のように話します。

「自彊術は、さまざまな内臓疾患や関節痛、神経症、アレルギー症状などに作用を示していますが、これには皮膚をもんだり叩いたりする動作が関係していると私は考えています。

少し専門的な話になりますが、皮膚には、ランゲルハンス細胞やケラチノサイトという細胞が存在します。ランゲルハンス細胞は、細菌などの異物が侵入すると白血球にその情報を伝える働きがあり、白血球は異物を攻撃して体を病気から守ります。

また、ケラチノサイトには、サイトカイン(生理活性物質)というたんぱく質を作り出し、白血球の働きを活発にする性質が備わっているのです。
つまり、自彊術の動作によって皮膚が刺激を受けると、ランゲルハンス細胞やケラチノサイトなどが活性化し、免疫力 (病気から体を守る力)を高めると推測されます。

さらに、自彊術は呼吸を整えながら体を動かすため、姿勢の保持に関係する深部筋肉も鍛えるのにも役立つはずです。60%以上が腰痛やひざ痛、肩こりの改善を実感した主な理由として、深部筋肉をはじめとする筋力アップ作用があげられるでしょう。

さらに、筋肉増強はダイエットにも作用するといえます。 高血圧や自律神経失調症の改善が70%以上を占めている点も注目に値します。自彊術は鼻呼吸と発声をセットにしながら行うので、これが心身をリラックスさせて自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)を整えるのにつながったものと考えられます」(吉松先生)

自彊術の健康作用を自身の体で証明したのが、自彊術の伝道者(指導者)の久家恒衛(くげ・つねえ)氏です。久家氏は、1975年に95歳で大往生するまで、非常に良好な健康状態を維持していました。
東京大学医学部で病理解剖が行われたのですが、心臓、脳、胃腸、内分泌腺に至るまで、その状態は若々しいものだったそうです。

自彊術の指導者は95歳でも30代の血管年齢だった

31動作からなる自彊術。特別に症状別の厳選動作を紹介

自彊術の一番の特徴は、全31動作がそれぞれ独立しているように見えて、実は次の動作に移るための準備運動になっていることです。第1動が第2動の準備運動というように、第1動から第31動まで連続して行うことに大きな意味があります。

自彊術は、①腹部、②胸部、③頭部(頸部)、④腰部、⑤上肢、⑥下肢の順に動かします。このような流れで各動作を一つひとつ順番に行うことにより、全身が健康な状態に整えられていくのです。

そして今回、自彊術を症状別に厳選しているやり方においても、次の動作へと続く動きが準備運動となり、体のウォーミングアップにつながっていることを忘れてはいけません。
自彊術を順番どおりに行わない場合は、いきなり力まかせに行ったり、弾みをつけて行ったりしないように注意しましょう。

31動作ある自彊術の中で、初心者でも簡単に行えて、体調の改善をすぐに実感しやすい基本の4動作を紹介しましょう。下記をクリックしてください。

自彊術の基本の4動作|体調の改善をすぐに実感

続いて、ダイエットに役立つ自彊術を知りたい方は、下記をクリックしてください。

ダイエット自彊術|脂肪燃やしの2動作

自彊術のやり方を学びたい。全国に教室は約4600カ所あります

「自彊術のやり方をくわしく知りたい…」「自彊術がきちんとできているのかを指導者に確認してもらいたい…」、自彊術を一人で実践している人の多くがそうした考えをお持ちのはず。

実は、自彊術の指導をしてくれる教室は全国に約4600カ所あり、いつでも誰でも通いはじめることができます。
中には、「一人だと行きづらくて…」「馴染めるのか心配…」といった人もいるかもしれません。

s_名称未設定 2.jpgそんな心配は一切ありません。
今回、現地取材と称して自彊術教室に参加した筆者2人(30代・40代)も、それぞれ一人ずつ別日に参加しましたが、周囲の人に温かく迎えられました。

現地取材による自彊術教室のようすや、自彊術教室の問い合わせ先について知りたい方は下記の記事をクリックしてください。

自彊術の作用を高めて、無理なく続けるためのアドバイス

自彊術はいつ行うといい?

自彊術は、朝と夜の1日2回行うのがおすすめです。

自彊術の作用は12時間ほど持続すると考えられています。そのため、朝と夜に行えば、1日をとおして切れ目なく、運動作用が続くと考えられるからです。
また、自彊術を行うことで、朝は睡眠中に硬くこわばった体をほぐすことができ、夜は蓄積した1日の疲れが取れて体のゆがみも整います。

ちなみに、これから自彊術を始める人への注意点を紹介します。

●食事の前後は30分以上あける
食べ物の消化・吸収の働きを妨げないために、自彊術は食事が終わってから最低でも30分、できれば1時間ほど休んでから行うようにしましょう。

●入浴の前後30分は避ける
自彊術を行って入浴すると血流がよくなりすぎて心臓に負担をかける可能性があります。逆に、入浴後すぐに自彊術を行うのも体に負担をかけるため、自彊術の前後30分は入浴を控えるようにしましょう。

●自彊術を行う前にトイレをすませる
自彊術の動作には、内臓を活性化して、排尿・排便を促してしまうので、自彊術の前にトイレに行くようにしましょう。

●無理をせず、やりすぎないこと
自彊術は31動作のそれぞれに上限回数が決まっており、その回数には安全性などの意味が込められています。上限回数を超えても上限回数を超えてもメリットがないだけでなく、逆効果になる場合もあります。回数を守って楽しく行いましょう。
とにかく、無理は禁物です。

●正しいやり方で行うこと
自彊術は、個人個人の関節の可動域に応じて、最大限まで体を動かします。そのためには、背すじを伸ばし、各動作の要所を抑えた正しいやり方で行うことが大切です。
背すじを伸ばすなどが難しい人は、できる範囲で自彊術を行いましょう。

自彊術を行ったら軽い痛みが出たが大丈夫?

人によっては、自彊術を行ったあとに軽い痛みやこりが出る場合もあります。これは、今まで使わなかった関節や筋肉を動かしたことで起こる「いい痛み」なので心配ないと考えられます。

つまり、体の各部位に痛みやこりが現れるほど、それまで体を十分に動かしていなかった証拠ともいえるのです。自彊術によって今まで使っていなかった筋肉を動かせば、誰でも数日から1週間くらいは筋肉痛のような違和感が続きます。
しかし、痛みやこりが出ても途中でやめず、動かす範囲を狭めたり、回数を減らしたりして無理のない範囲で取り組んでください。

また、自彊術を行う以前から関節痛で悩んでいる場合も同様です。その部位を自彊術によって少しずつ動かすように習慣づければ、患部の可動域(動かせる範囲)が徐々に広がり、痛みも和らいできます。
最初は少しつらいかもしれませんが、できる範囲で患部を動かすようにしてください。

また、ひざ痛で端坐(正座)ができない場合は、イスに腰かけるか、足を投げ出して座ったまま自彊術を行ってもかまいませんが、背すじはできるだけ伸ばしましょう。
上半身の姿勢が正されると、下半身にかかる負担が減ってひざ痛も和らぐので、端坐ができるようになります。これは、腰痛や股関節痛などでも同じことがいえます。

ただし、これまで経験したことのないような激痛やしびれが急に出たときは、重篤な病気が潜んでいる恐れもあるので、いったん自彊術を中止して、早急に病医院を受診する必要があります。

安静中も起こるひざ痛が、自彊術で改善!正座もできた!

ここでは、自彊術を実践して、関節痛や腎機能が改善したり、ダイエットに成功したりした方を紹介します(以下は、2017年に発刊されたわかさ夢MOOK42『医大教授激賞の100年体操 自彊術』で紹介されたものをウェブ用に再編集しました)。

まずは、ひどいひざ痛を改善した中林恭子さん(73歳・主婦)。中林さんが、ひざに痛みを感じるようになったのは2010(平成22)年のこと。

当時、中林さんの母親が入院していたため、神奈川県にある病院まで電車で何時間もかけて通っていました。
その疲労がひざにも蓄積していたのでしょう。病院の帰りに、右ひざに激痛が走ったとのこと。自宅に着くころには激痛で歩けなくなっていたそうです。

ひざのお皿のまわりがズキズキと鋭く痛み、安静にしていても痛みが全く治まらなかったといいます。

翌日、整形外科で診察を受けると、変形性膝関節症と診断。しかし、整形外科には通院しなかったという中林さん。治療を受ける前に、自分でできることをやってみようと思い、自彊術を試してみることにしたそうです。

中林さんは、自彊術の教室に通いながら、自宅でも朝と夕方に自彊術を続けました。ひざが痛むので、最初はイスに座りながら行っていると、2週間後にはひざの激痛が少しずつ改善してきたそうです。

さらに半年が過ぎたころにはひざのお皿のまわりから痛みが消えて、1年後には正座もできるようになったといいます。
現在では趣味のガーデニングを楽しめるようになったと喜ぶ中林さんです。
自彊術でダイエットに成功したり、腎機能が改善したりしたエピソードは下記の記事をクリックしてご覧ください。

あくまでも健康維持の一環として、専門医の治療も受けつつ、試してみてください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© 自彊術普及会 ©カラダネ

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