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[国内外で研究中! 亜麻仁油の働き]心臓病、脳出血、がんのリスクが減る!? 美肌やストレスにも

解説 白澤抗加齢医学研究所 所長
白澤卓二

亜麻仁油(アマニ油)が、大きな注目をされています。
現代人に不足している「オメガ3脂肪酸」の一種である「α-リノレン酸」が豊富に含まれ、血栓(血液の塊)ができるのを防いだり、LDL(悪玉)コレステロールを減らしたりする働きが期待できるとわかってきたそうです。

亜麻仁油についての実験や研究は、国内外で複数行われています。
白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生にお話を聞きました。

最初に申し上げますが、亜麻仁油をとると何かの病気がよくなったり防げたりできるわけではありません。体に不調がある人は必ず専門医の治療を受けてください。
亜麻仁油は、毎日の食事の中で健康維持の目的に活用するようにしてください。



亜麻仁油を多くとったグループは心臓病の発症率が70%減る?

海外では、亜麻仁油に多く含まれるα-リノレン酸の摂取をすすめる動きが広まりつつあり、その健康作りに役立つとする研究や調査も盛んに行われています。

よく知られているのが、アメリカ心臓協会による「リヨン・ダイエット心臓研究」です。

この研究では、心臓病を患っている約300人を1つのグループとし、1つめのグループにはアメリカ心臓協会が推奨する食事をとってもらい、もう1つのグループには亜麻仁油などα-リノレン酸が加えられた地中海食(野菜・豆類・魚介類・赤ワインを中心にした南欧の食事スタイル)をとってもらいました。
s_亜麻仁油 トップ.jpgその後、46ヵ月にわたって追跡調査を行ったところ、α-リノレン酸を加えた地中海食グループは、もう一方のグループに比べて心臓病の発症率が70%も低下していたのです。
興味深いことに、同じオメガ3脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を摂取しても、心臓病の発症率はそれほど低下しませんでした。

つまり、この調査結果から、α-リノレン酸の摂取が心臓病の予防に役立つ可能性があると推測されます。

亜麻仁油に多く含まれるα-リノレン酸をとると脳出血のリスクも減?

米国・ウェイクフォレスト大学の研究では、35〜57歳の男性、約12800人を6〜8年にわたって追跡調査しています。
その結果、α-リノレン酸の摂取量が多い人は心臓病だけでなく、さまざまな要因による死亡率が低下したとのことです。

米国・サンフランシスコにある医療センターの調査では、脳出血の発症率についても検証が行われています。
対象者の96人を調べたところ、血清リン脂質(血液成分の一種)に含まれるα-リノレン酸が0.06%上昇するたびに、脳出血の発症率は28%ずつ低下することがわかりました。

α-リノレン酸が腫瘍細胞の増殖を抑える!?

さらに亜麻仁油に多いα-リノレン酸は、リノール酸(料理で一般的によく使われる植物油に多い)のとりすぎによる腫瘍細胞の発生や増殖を抑える可能性があります。

リノール酸は、体内でプロスタグランジンという炎症を促す物質に変わりますが、これは同時に腫瘍細胞の成長も促すと考えられています。

しかし、国内外のラット(実験用のネズミ)を使った実験で、α-リノレン酸にはリノール酸がプロスタグランジンに変わるのを阻止し、腫瘍細胞の増殖を抑える働きがあると認められたのです。
先に述べたリヨン・ダイエット心臓研究でも、がんの抑制作用が確かめられており、α-リノレンが多い地中海食を食べたグループは、がんの発症率が61%も低下していました。
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亜麻仁油は特に乳がんへの作用を期待

数あるがんの中で、α-リノレン酸の腫瘍に対する作用が最も発揮されるのは、乳がんではないかと考えられています。
というのも、乳房は脂肪が特に多い部位であるため、α-リノレン酸が貯蔵されやすいからです。

それを実証する試験は、カナダのトロント大学で行われています。試験では乳がんと診断された女性を2つのグループに分けて、一方のグループには亜麻仁の種子が入ったパンをとってもらい、もう一方のグループにはふつうのパンを5週間半にわたって食べてもらいました。

その結果、亜麻仁の種子が入ったパンを食べたグループは、ふつうのパンを食べたグループに比べて、乳がんの腫瘍細胞の増殖が抑えられていたのです。

ほかにもラットの試験では、亜麻仁油や亜麻仁の種子の摂取が、大腸がん・前立腺がんなどの進行を防ぐのではないかとの報告もされています。
こうした報告からも、亜麻仁油などからα-リノレン酸を積極的に摂取することは、健康の維持に役立つものと考えられます。

血圧や美肌、ストレスにも! その他、研究された亜麻仁油の働き

ほかにも、世界では亜麻仁油にかかわる研究がなされており、興味深い研究結果が多数発表されています。

●高血圧の人に
ギリシャのハロコピオ大学では、総コレステロール値が200mg/dL以上の男性59人を2つのグループに分けて、一方のグループにだけ亜麻仁油を12週間にわたって摂取してもらう試験を行っています。

その結果、亜麻仁油を摂取していたグループは、摂取していないグループに比べて、最大血圧・最小血圧ともに降圧作用が見られたそうです。

●全身性炎症の人に
ハロコピオ大学では、50人の男性に1日当たり大さじ1杯の亜麻仁油を12週間、摂取してもらっています。その結果、全身性炎症の指標であるCRP値が48%低下していたとのことです。

●肌の保湿機能に対して。肌荒れを気にする人に
ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学で行われた試験では、女性のグループに1日当たり2.2グラムの亜麻仁油を12週間とってもらったところ、皮膚からの水分喪失が10%減少し、肌荒れの改善も認められました。

●免疫機能に対して。アレルギーにも
亜麻仁に含まれているα-リノレン酸や抗酸化物質(酸化を防ぐ物質)には、病気から体を守る免疫力を高める可能性があると、カナダのウェスタンオンタリオ大学の研究グループが報告しています。

報告によれば、α-リノレン酸などは免疫細胞に対する働きとともに、ある種の抗原に対する異常な反応を抑える作用もあるため、アレルギーやリウマチなどの自己免疫疾患の対策にも役立つ可能性があるとのことです。

●ストレスがたまった人に
インドのラージャスターン大学の調べでは、ラットの試験によって亜麻仁油が脳内の酸化ストレスを軽減したことから、脳の神経細胞の損傷も抑える可能性があるのではないかと推測しています。

毎日の健康管理に亜麻仁油を

このように、研究によってさまざまな可能性が指摘される亜麻仁油を習慣的にとることは、家庭でできる手軽な食養生といって過言ではありません。
最近は日本でも亜麻仁油が一部のデパートやスーパーマーケットなどの食品売り場で入手できるようになりました。

油の新しい摂取法としてテレビ番組や新聞記事でも亜麻仁油が盛んに取り上げられるようになった今こそ、まさに食用油の新時代が到来したといえるでしょう。


【編集部注】亜麻仁油はあくまでも食品です。毎日の食事の中で適量をとり、健康維持に役立ててみてください。

亜麻仁油についてさらに知りたい方はこちらをご覧ください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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