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【泌尿器科医が解説】少量の尿漏れなら男性は前立腺肥大、女性は臓器脱を疑え(溢流性尿失禁)

解説 女性医療クリニックLUNAグループ理事長
関口由紀

尿が常にジワジワ漏れる症状で悩んでいる方、それは溢流性(いつりゅうせい)尿失禁かもしれません。溢流とは、簡単にいうと「あふれ流れる」こと。

一般的には、男性に多く、女性には少ないとされる症状で、原因は男女で異なります。
溢流性尿失禁の原因と対策について、専門医の関口由紀先生に解説していただきました。
自力対策も紹介していますので試してみてはいかがでしょうか。

尿漏れを自覚したら泌尿器科の専門医に診てもらうことが重要です。そのうえで記事で紹介する自力対策もやり方を十分に守ったうえで試してみてください。



男性に多い溢流性尿失禁は排尿しにくくなっているのが大きな特徴

尿の勢いが弱く、知らない間に尿が漏れている
●尿がジワジワ漏れて、下着が常に汚れてしまう

このような尿漏れ(尿失禁)を「溢流性尿失禁」といいます。
溢流性尿失禁の特徴は、尿が出しにくくなり、膀胱(ぼうこう)内に出しきれない残尿が残ってしまうこと。
おなかに力を入れなければ尿が出なかったり、出ても勢いがなかったりします。

トイレに行く回数が増えるばかりか、悪化すると夜間に尿漏れすることがあります。日中、尿意もないのに気がつくと尿が漏れていたといったことも起こりえます。

溢流性尿失禁になりやすいのは比較的、高齢の男女で、中でも圧倒的に多いのは男性です。男性の場合は、前立腺肥大が主な原因になります。

前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲んでいる男性特有の臓器で、生殖器の一つとして精液を作り、精巣で作られた精子は精液と混ざって射精されます。
通常はクルミほどの大きさですが、前立腺が肥大すると、なんと卵やミカンほどの大きさになる人もいます。
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前立腺肥大症の原因はまだよくわかっていませんが、男性ホルモンの働きが関係していると考えられています。
前立腺肥大症が始まると、まずは膀胱の出口の部分が過敏になり、頻尿になります。

そして、尿がさらに出にくくなって、いつも膀胱に残尿が残るようになり、少しおなかに力が入っただけで、たまっていた尿が漏れ出てしまうのです。

最悪の場合は、残尿が多量になり、腎臓がはれてしまい、腎不全になってしまうこともあります。

前立腺肥大症の発症と同じころから始まるのが、男性の多くが悩む排尿後のチョイ漏れ(排尿後尿滴下)です。
男性の尿道は、15~20センチと長いのですが、膀胱にたまった尿は、前立腺部尿道を通過したのち、さらに後部尿道・前部尿道と呼ばれるところを通って、尿道口から出てきます。

少し難しい話になりますが、球海綿体筋という筋肉があって、その筋肉が収縮することによって尿は押し出されます。
ところが、年を重ねることでこの球海綿体筋の収縮力が弱くなり、尿道内に尿が残ってしまうのです。

そこでおすすめなのが、会陰押し。
排尿後に会陰部の後ろから前のほうへ指で押して尿の残りを出せば、チョイ漏れを防ぐことができるのです。
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女性の溢流性尿失禁は珍しい。重症の骨盤臓器脱で起こる可能性大

一方、女性の溢流性尿失禁は珍しいのですが、重症の骨盤臓器脱では起こりえます。
骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった臓器の一部が、膣から飛び出てしまった状態のこと。
これらの臓器は骨盤内にあって、骨盤の底にある靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な繊維組織)や快尿筋(正式には骨盤底筋群という)という筋肉群で下がらないように支えられています。

ところが、出産や閉経による女性ホルモンの分泌量の減少や、便秘、肥満などによって靭帯と骨盤底筋群が衰えたりすると、骨盤内の臓器が下がって骨盤臓器脱を招いてしまうというわけです。
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骨盤臓器脱を起こすと、女性は尿道が狭くなって尿が出にくくなります。さらに骨盤底筋群の衰えで尿道がグラグラしてしまい、尿漏れが起こりやすくなります。
骨盤臓器脱の対策としては、軽症なら下がった臓器を支えるためにクッションを当てたりペッサリーという膣内挿入器具を使ったりして対処します。症状が重い場合には、手術が必要です。

前立腺肥大や骨盤臓器脱による溢流性の尿漏れに悩んでいる人は、自力対策として快尿筋の強化がおすすめ。一般的に、腹圧性尿失禁の自力対策としてすすめられる骨盤底筋体操と呼ばれるものです(くわしくは『尿漏れの原因と対策①「咳をする、笑う、走る」で漏れるなら骨盤底筋を強化(腹圧性尿失禁)』へ)。

また溢流性尿失禁の人は、腹圧がかかると膀胱や尿道が圧迫されて症状が悪化しやすくなります。排尿や排便のさいにはいきまない、おなかに力を入れる動作をさける、といったことも大切です。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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※記事の執筆ドクターが特定商品の購入等を推薦するものではありません。

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